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2015/03/02(月) 00:00

〝女性だからこそ〟安心・安全の居住環境づくりを 女性建築士が全国大会

投稿者:  牧田司

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「第24回全国女性建築士連絡協議会(略称:全建女)」(建築会館ホールで)

 日本建築士会連合会女性委員会(女性委員長:永井香織・日大准教授)は2月27・28日、全国から20歳代~70歳代の女性会員が集まり「第24回全国女性建築士連絡協議会(略称:全建女)」を開催した。今年のテーマは「未来へつなぐ居住環境づくり~大切にしたい暮らし方~」で、震災を経験したからこそ、女性だからこそ未来を見据えて子どもや高齢者など社会的弱者の暮らしを守り、未来を見据えた安心・安全の居住環境づくりに取り組んでいくとアピールした。赤ちゃんを抱えた参加者もいた。

 初日の27日は、日本建築士会連合会副会長・岡本森廣氏と来賓の日本女性学習財団理事長・村松泰子氏の挨拶に続いて、永井氏が「震災を経験したからこそ、将来の子どもたちの安心な居住環境づくりは私たち女性建築士の責務。未来に向けて新たなステージでの活動を行なっていこう」と呼びかけた。

 基調講演では、HITOTOWA INC代表取締役・荒昌史氏が「ネイバーフットデザイン~東日本大震災から学ぶ〝よき避難者〟を育成する防災減災~」をテーマに集合住宅でのコミュニティをどうマネジメントするか、来るべき大災害にどう備えるかなどについて話した。

 その後、秋田県、東京都の活動報告と福島・宮城・岩手の被災3県、液状化に見舞われた千葉県浦安市からそれぞれ被災地からの現状報告や取り組みが紹介された。

 2日目の28日には、8つの分科会で震災後の取り組み、歴史的建造物の再生、景観まちづくり、福祉住宅などについて報告・討論が行なわれ、「未来につなぐ居住環境づくり」「防災に対するハード・ソフト両面での取り組み強化」「震災復興に対する継続的な活動」「社会への情報発信」の4つのアピールを提言した。

 国交省と建設業関連5団体は、女性技術者・技能者を5年以内に倍増させる行動計画を打ち出している。

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永井氏

◇      ◆   ◇

 建築士への取材はたくさん行なってきたが、全国組織のしかも女性で構成される団体の取材は初めての経験だった。「建築士」は男性も女性もない「士」の集団だから、ことさら「女性」を枕詞に付ける意味がよく分からなかった。

 なので、永井氏に「どうして女性を付けるのか」という直截的な質問をした。永井氏は待ってましたといわんばかりに、「男女雇用機会均等法(1985年制定)後入社の私も同じ意見を持っていた。女性の建築士は20年も前から、子どもを連れて会議に出たり勉強会に出席したりして、男以上に頑張って社会とつながり仕事との両立を実践してきた。『女性』を付けているのは、女性だからこそという思いが込められている」と答えた。

 「女性だからこそ」――この言葉の意味、重さを探るのが取材の主な目的になった。永井氏が記者会見で強調したのも「女性だからこそ」果たせる活動だった。

 転機になったのは東日本大震災だった。「これから先どうした活動をしたらいいか模索していたとき3.11が起きた。地域・暮らしに根付いた活動のほかに原発の課題も加わった。われわれも震災に対する支援活動をやってきたが、復興は進んではいない。20年以上も前から子どもと弱者に寄り添ってきた私たちこそもう一度足元を見つめ、震災復興の取り組みを全国に発信していく」と永井氏は強調した。

 「協議会」のテーマをこれまでの「地域」から「未来」に転換したのも、より強く社会にアピールしていこうという決意が読み取れる。永井氏は「震災の支援活動を通じて安心・安全の居住環境づくりはハードだけではサポートが難しい。コミュニティを大事にしなければならないことに気づいた」とし、「初めて建築以外の方(荒昌史氏)を講師に招いた」と、ハードもソフトも備えた知識・技能集団として職域の拡大に意欲を見せた。

◇      ◆   ◇

 参加者へも直接「女性だからこそ」の質問をぶつけた。生後6カ月の子どもを抱えて参加した新潟県三条市から参加したiaトキワ専務取締役・渡邊久美氏は「主にインテリア関係の仕事をしていますが、わたしのような小さい子どもがいる家のリフォームも多いですからハンディがあるとは思いません」と話した。

 愛知県から参加した人は「みんな性別は意識していないと思います。男性の建築士と異なる点を強いてあげれば、仕事に真面目に取り組むことだと思います」と語った。

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三条市から参加した渡邊氏とお子さん

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 記者が「女性」という色眼鏡で観ていたこともあるのだろうが、気がついたことが二つあった。

 一つは居眠りをする人の少ないことだ。初日の会合は300人近くが参加した。集会は午後1時から5時30分まで4時間30分に及んだ。休憩は2回のみ。この間、居眠りをしている人は皆無ではなかったが、男性の会合などと比べ極端に少なかった。記者などは1時間もじっとしていられない性質なので、これにはびっくりした。

 もう一つは、永井氏もそうだったが、報告者が「あー」とか「えー」とかの機能語をあまり話さなかったことだ。千葉県浦安市の「災害に強いまち〝浦安〟をめざして」について報告した度会紀子氏は約20分間、過不足なく論理的に語りかけたのに惚れ惚れして聞き入った。

 普段から無駄を省き、あいまいさを排除し、それこそミリ単位の仕事をこなしているからだろうか。「坪」「万円」単位でしかものごとを考えられない記者は恥じ入るしかなかった。全国女性建築士連絡協議会の略称は「ゼンケンジョ(全建女)」と呼ぶそうだが、「全賢女」に置き換えられそうだ。

 

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