RBA OFFICIAL
 
2015/03/05(木) 00:00

マンション建替法改正の課題 旭化成ホームズ メディア懇談会

投稿者:  牧田司

 旭化成ホームズ「マンション建替え研究所」(向田慎二所長)は3月4日、マンション建替え円滑化法改正後の展望と高経年マンションのコミュニティをテーマとした「第4回目メディア懇談会」を行った。多数のメディア関係者が参加した。

 第一部では、阪神・淡路の被災マンションの再生や建て替えなどに詳しい弁護士の戎正晴氏(戎・太田法律事務所、明治学院大学法科大学院教授)と同研究所・大木祐悟主任研究員が「マンション建替え円滑化法改正後の展望と課題について」パネルディスカッションを行った。

 昨年12月24日に施行された円滑化法の「マンション敷地売却制度」は、マンション敷地の買受人をあらかじめ決め、特定行政庁から「要除却マンション」認定を受けたうえ、敷地売却決議-敷地売却組合の設立-不参加者に対する売渡請求-分配金取得計画の決定-組合がマンション敷地の権利を取得-買受人に敷地を売却-買受人がマンションなどを建設-するもので、手続きが簡素化され、一気通貫で敷地売却-建て替えができる制度として注目されている。一定の要件を満たせば、容積率が最大1.5倍まで緩和される。

 一方で、自治体によって建築物の絶対高さ制限、接道制限、公開空地、外壁の後退距離などを定めた総合設計制度などにより、容積率の割り増しを受けてもマンションは建てづらいなどの報告もされた。店舗などの借家人への補償、団地型は不可などの問題も残されていると戎氏は語った。

 第二部では、同社が参画した建て替えマンションの事例を基に「高経年マンションの区分所有者とコミュニティの高齢化」について向田氏と同研究所・杉山直美氏が報告した。

 区分所有者の平均年齢は60歳以上が70.7%(70歳以上は41.9%)で、従前の空き家率は24%、単身世帯は41%など、多くの問題点を抱えていることが語られた。

 建物の解体までに少なくとも8回くらいの説明会が行われ、女性スタッフなどによる高齢者などへの個別サポートは数えきれないほどという苦労話も杉山氏は話した。

◇       ◆     ◇

 マンション敷地売却制度は、業界からも「画期的」制度として歓迎されたが、記者は冷ややかに見てきた。すんなり決議ができればいいが、様々な思惑が交錯し5分の4の賛成を得るのも容易でない。しかも、容積率が割り増しされて、高さ規制も日影規制も用途規制もなく、なおかつ居住性の優れたマンションが建つ案件は都心の商業地くらいにしか残っていないのではないか。

 個人的には不参加者に対する売渡請求の金額算定にも問題があると考えている。請求額は素地価格から解体費用などを除いた額となるようだが、敷地を売却することによって二束三文の価値しかなかったマンションが建て替え後は数倍に跳ね上がるわけだから(そうならないケースもあるが)、その利益も考慮していいような気がする。

 例えが適当かどうか分からないが、囲繞地とよく似ている。公道につながっていない囲繞地はそれこそ何の価値もない。資材置き場か畑にしかならない。しかし、公道につながる土地の所有者(不参加者)から土地を買収できれば相場の数倍のお金を払ってもいいケースはたくさんある。その意味で、不参加者の意向は事業の成否のカギを握る。

 と、ここまで書いたが、この問題は解消されるようだ。つまり、補償額は建て替え後の価値が上昇することを想定して算定されるので、不参加者の不利益にはならないということだ。記者の不勉強だった。

 もう一つは、従前と比べ価値がそれほど上がらない修繕はともかく、新築の8掛けくらいに価値を上げられる改修もこれからは大きな選択肢になるということだ。

 好例を紹介する。青木茂建築工房がリファイニング建築手法を用いて設計・監修を担当した再生マンション「千駄ヶ谷緑苑ハウス」の解体現場見学会には行政、不動産、設計事務所、研究者ら約300人が押し寄せた。マンションは相場の8掛けくらいで早期完売した。

 同工房は近く「笹塚」の見学会を行うが見学申し込みが殺到したため、申し込みを途中で打ち切った。ここも設計図書などない古い建物だという。取材してレポートしたい。

 第二部では杉山氏の話が興味深かった。同社の建て替え事業が他社よりぬきんでているのは、そうした裏方の合意形成にいたる努力があってこそではないかとずっと思ってきた。裏方の取材はできないものだろうか。

 

 

rbay_ayumi.gif

 

ログイン

アカウントでログイン

ユーザ名 *
パスワード *
自動ログイン