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2015/03/17(火) 00:00

なぜ農学、環境、家政学者の会合はおおらかなのか 国交省「都市公園あり方検討会」

投稿者:  牧田司

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「新たな時代の都市マネジメントに対応した都市公園等のあり方検討会」

 国土交通省は3月12日、第4回「新たな時代の都市マネジメントに対応した都市公園等のあり方検討会」(座長:進士五十八・東京農大名誉教授・元学長)を開き、喫緊の課題になっている保育所など子育て施設を公園内に設置することなどを了承し、近く先行とりまとめとして公表することを決めた。

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 約2時間行われた会合の内容は、細大漏らさずメモをしたので引き起こせないこともないが、国交省が議事録として公表するはずだからそちらを読んでいただきたい。

 保育所などの施設を都市公園内に設置することに対して多くの委員は、「軒先貸して母屋取られるでは困る」「行政から攻め込まれているイメージが強い。子育て機能は公園が持っている本来的な機能。こちら側から積極的にメッセージを送ってはどうか」などとし、攻めの姿勢に転換することを申し合わせた。

 国交省の舟引敏明・大臣官房審議官は、「(様々な外野から)攻め込まれているとは思っていないが、(相手の)攻めてくるスピードが速い。公園を利用する人が増えれば予算的にも人的に公園事業はやりやすくなる。公園法がブレーキになっている部分もあるが、いかに応援団を増やすかだと考えている。夢のある世界を描いていきたい」と語った。

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 この「検討会」を傍聴するのは2度目だが、実におおらかでいい。「検討会」というタイトルは同じだが、マンション管理会社は姑息な手段を使って儲けることをたくらむ集団だとか、600万人の居住者の声を反映した「意見書」を「私の授業なら『不可』にする」などと罵倒し、委員とオブザーバー間でバトルを展開した「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」とは雲泥の差だ。

 どうしてこのような差が出るのか考えた。それは今回の「検討会」の座長を務める進士氏の人徳もそうだろうが、各委員が農学や園芸学、環境学、家政学など人と自然・みどり、人と環境などについて研究をされてきた方々の品格の反映だろうと結論づけた。

 今度、ピケティ氏の「21世紀の資本」を読もうと思っているが、富の集中と格差社会の蔓延を助長する21世紀の経済学者と農学者とではこの点で対極をなすのではないかと思う。

 「検討会」は来年度以降も継続して行われるようだが、都市公園の再編によって都市居住者の生活がどのように変わるのか注視したい。

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 おおらかさ、和やかさを象徴する場面があった。会合が終わった後、国交省のスタッフが各委員に進士氏が平成27年(第9回)「みどりの学術賞」を受賞したリリースを配布した(記者席には配布されなかった)。すぐ拍手が巻き起こった。進士氏は相好を崩した。

 「みどりの学術賞」は、「みどり」についての国民の造詣を深めるために、国内において植物、森林、緑地、造園、自然保護等に係る研究、技術の開発その他の「みどり」に関する学術上の顕著な功績のあった個人に内閣総理大臣が授与するもの。進士氏は寺島一郎・東京大学大学院理学系研究科教授とともに受賞した。

 進士氏の受賞理由は、進士氏が「日本庭園は日常生活から隔離された特殊な空間ではなく、自然との共生により育まれてきたわが国の生活・文化が凝縮されたものであることを解明し、みどりに対する国民の理解増進に寄与した」というもの。

 進士氏は、受賞に対して「日本庭園が究極の都市づくりであることを言い続けてきたことが認められてうれしい」とコメントした。

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この日の進士氏(リリースの写真よりはいいはずだ)

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 この種の会合はかくあるべしというようなエピソードも紹介しよう。進士氏はときどき、涌井委員に対して「涌井」と呼び捨てにした。進士氏と涌井氏の関係を知らない人だったら仰天するだろう。座長と委員の差は毫ほどもない。ましてや涌井氏はタレント並みの活躍をされている押しも押されもせぬ学者兼コメンテーターだ。

 なぜ進士氏が涌井氏を呼び捨てにしたのか。理由は簡単。東京農大の同窓同級生だからだ。歳は進士氏が一つ上だ。

 呼び捨てにされた涌井氏も口では進士氏に負けない。国交省から配布された資料に写っている進士氏の写真をみて、「これじゃご霊前に飾る写真だ」と言い放った。記者は「涌井先生、進士先生の次(の受賞は)は涌井先生でしょ」と声を掛けたら「いやいや、演芸(園芸の洒落のつもりか)賞はないの? 」と絶妙の切り替えしをした。確かに農学・造園を茶の間に演芸の手法でもって浸透させた功績は「みどり学術賞」にぴったりではないか。

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 脇道にそれてしまったが、本題に戻る。ここ数年、記者が気がかりに思っていることを委員の池邊このみ・千葉大大学院教授が代弁してくれたので紹介する。

 池邊氏は、「公園の統廃合という文言が使われているが、再編・再構築が適当ではないか。維持管理について触れられていないのもどうか。管理費がどんどん削られ、街路樹も削られ汚くなっている。だから〝あんな公園いらない〟になっていく。管理コストの削減は自己否定ではないか。景観の言葉も少ない。もっと美しい公園にしていくことが大事ではないか」と話した。

 進士氏は「都市公園条例は管理条例になっている。運用条例にしないといけない。人口率ではなく、面積率で公園の広さを考えるべき」などと本質的な問題点を指摘した。

公園に保育所、マンション岩盤規制を打ち破れるか国交省公園のあり方検討会(2015/2/2)

 

 

 

 

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