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2015/03/18(水) 00:00

厚くて高い法の壁 合意形成の難問も立ちはだかる 国交省「団地再生あり方検討会」

投稿者:  牧田司

 

 国土交通省は3月18日、第6回「住宅団地の再生のあり方に関する検討会」(座長:浅見泰司・東大大学院教授)を開き、これまでの論議やヒアリングの結果を踏まえ、施策検討の基本的方向性をまとめることで合意した。

 団地全体の再生を図るため建て替えや改修、あるいは段階的・部分的な建て替えなどを円滑に進めるための事業制度、建築基準法第86条の一団地認定のあい路をどう打開するかが今後の検討課題になるようだ。

◇       ◆     ◇

 今回、国交省から新たに示された資料は、第5回までの検討会で指摘された課題を踏まえ、同省がコンサル・学識経験者など8名、デベロッパー7社に対するヒアリングを行った結果をまとめたものだ。主な意見を紹介する。

・事業性が高くないケースでは、負担面から一部の区分所有者が一括建替えに同意せず、結果として3分の2の決議要件を満たせず進捗がとまる

・建物部分の底地が共有でないテラスハウスを含む団地では、一括建替え決議の要件を満たさない

・市街地再開発の手法を用いても、保留敷地を設定し、戸建て用地を確保するのが困難

・建て替えの賛成者が各棟に分散している場合には、住戸交換が円滑にできる仕組みが必要

・団地再生に合わせて道路整備を行う場合、現状では全員同意で敷地分割したうえで処分する必要がある

・部分的な建て替えを行う場合、建て替え棟と非建て替え棟との間の管理費や長期修繕計画の扱いが課題

・郊外では1000戸規模の団地が多数あり、すべてマンションにすることはマーケット的に不可能。余った土地は戸建て用地として売却するのが適当

・一部の土地を戸建て用地として売却する計画は、一団地認定の取り扱いが難しい

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 会合でもこれらの問題が横たわっていることが論議された。各委員の主な意見を紹介する。

小林秀樹委員(千葉大大学院教授) 団地再生事業法をつくったらどうか。郊外団地はこれからコンビニなどに一部を売却するか賃貸にするか処分行為が多発するはず

西周健一郎委員(都市再生機構ウェルフェア推進事業部長) 団地内の共有給排水管、道路関係、日影規制、既存不適格、ネット・グロスの問題などあい路は多い

鎌野邦樹委員(早大法学学術院法科大学院教授) 敷地分割は民法からのアプローチではなく行政法的な手法で可能にすべき

大西誠委員(竹中工務店参与) 敷地分割はハードルが高い。大阪のURの山本団地では、URが排水管を整備して費用を負担し、民間に分譲用地として売却した事例があるが、分譲同士だと合意形成が難しい。古い団地では面積割合でなく、戸数割合で土地の共有持ち分を決めているところが多い

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 会合は予定されていた2時間を約45分も余して終了した。浅見座長を除く15委員のうち7人が欠席した。浅見座長は「ご意見ありませんか」と発言を促したが、一部の人に限られた。

 これは、検討会が盛りあがらないということではなくて、意見がすべて出尽くしたのだろうと理解した。

 出尽くしたうえでうまい解決策が見つかったらいいのだが、どうもそうではないようだ。話を聞いていて、団地型の住宅再生は容易ではないと改めて感じた。法の壁はもちろん排他的絶対的な土地所有権・財産権の難問をクリアするのは途方もない困難が伴うはずだ。

 法の壁を突き抜けようが乗り越えようが、その時点で違法行為になりかねない。この検討会の委員でもある櫻井敬子・学習院大教授が「建基法関係の法律は窮屈」と他の会合で話したように、解釈によって法を捻じ曲げるのは困難ではないか。「行政法」の手法を用いようが、結局、民法の規定にぶち当たるはずだ。

 仮に法の問題をクリアしても、こんがらがった繊細な絹の糸玉をほぐすような「合意形成」の難問も待ち受ける。気が遠くなるような作業になるのは間違いない。各委員は頭を抱えているのではないか。

国交省・住宅団地の再生検討会 「無反応者」を母数に含めない是非(2014/12/17)

 

 

 

 

 

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