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2015/03/30(月) 00:00

ポラス 越谷市初の特例子会社へ 障がい者中心の新会社設立

投稿者:  牧田司

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「ポラスシェアード」オフィス内

 ポラスグループのポラスが障がいのある人により多くの働く機会を提供するために「ポラスシェアード」を2月6日に設立し、3月16日から事業を開始した。どのような職場で、何を目指すのか興味があったので取材した。責任者のビジネスサポート課課長・加知方真美子氏は「助走段階を経て第一歩を踏み出せた。親(ポラス)から自立し、利益が出る会社にしたい」と語った。

 ポラスグループは、これまでも障がい者の雇用促進に努めてきたが、より多くの障がい者の能力が発揮できる環境や安心して働ける場を恒常的に提供するためには、「障害者の雇用の促進等に関する法律」(障害者雇用促進法)に基づく特例子会社を設立することが最善と判断し、新会社を設立した。

 新会社は20名(うち17名が障がい者)でスタート。県内からの通勤者が約7割で、残りは東京都と千葉県など。

 当面はオフィスサポート業務を中心に、住宅メーカーならではの図面作成補助(色づけや製本など)や設計での通風計算などを考えているが、それぞれが補完し合い多種多様な仕事を確保していきたいとしている。

 障害者雇用促進法では、従業員50名以上の会社は、障がいがある従業員を従業員全体の2%以上雇用することが義務付けられているが、障害者のための特別な配慮をした子会社を設立し、一定の要件を満たす場合には、その子会社に雇用されている障害者を親会社や企業グループ全体で雇用されているものとして算定できる特例が設けられている。

 平成26年5月末現在、特例子会社は全国で391社あり、住宅・不動産関連では三井不動産、長谷工コーポ、レオパレス、大和ハウスグループなどが設立している。埼玉県は21社で、同社が認可されれば越谷市で初となる。

◇       ◆     ◇

 記者もそうだが、ほとんどみんな障がいのある人が身近にいる。厚労省のデータによると、身体障害者は366.3万人(人口千人当たり29人)、知的障害者は54.7万人(同4人)、精神障害者は320.1万人(同25人)で、およそ国民の6%が何らかの障がいを有している。

 この数字は、法律や制度によるもので、「障害」の定義にも問題がないとは言えず、データに表れない人を含めるとその数倍はあるのではないか。例えばOECDのデータ。「過去6カ月間に健康問題や障害がある」と答えた稼働年齢(20~64歳)の障害者割合は20カ国平均で14%あり、もっとも高いスウェーデンは20.5%に達している。もっとも低いのは韓国で3.0%。わが国にはそんなテータはないが、「あなたは何らかの障害を抱えていますか」と聞かれたら、どれだけの人が「ノー」と答えられるか。そんな疑問を抱きつつ、これからのマンションやその他の取材にも生かそうとも考え、同社の取材に出かけた。大正解であった。

 加知方氏は、「代表(中内晃次郎氏)とは30回は話し合った。思いは一緒。障がいを持っている人がそれぞれの技術を生かし、カバーしあい、働き甲斐が持てる職場にしたい。現在、30業務を行っている。下請けではなくパートナーとして評価してもらえる会社に伸ばしたい」と語った。

 その加知方氏が「私のパソコンの師匠」という、同社が請負った注文住宅の顧客にプレゼントする図面作成の補助を担当している瀬谷裕太氏(22)は、「工業・情報系の高校を卒業しているので、CADの操作は学んでいたが、建築CADは初めてだった。最近は慣れてきたが、表紙も全て手作りなので1冊作るのに約8時間。将来はデザインの仕事にチャレンジしたい」と話した。昨年、住んでいた吉川市から草加市に移り一人暮らしを始めたそうだ。

 もう一人、車椅子利用の社員からも話を聞いた。その社員は、電車を利用する場合、エレベータのない駅もまだ多いこと、あっても遠回りをしないと利用できないなどの現状の改善を訴えた。

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瀬谷氏(左)と加知方氏

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 「障害」の漢字表記は差別的であることから「がい」とひらがな表記をするところが増えている。記事も双方を使い分けた。

 そこで、いろいろ調べてみた。昭和20年に施行された「障害者の雇用の促進等に関する法律」でも「障害者」が用いられているが、「害」が使用されたのは戦後からで、戦前は「障碍」が用いられていたようだ。

 「碍」は「さまたげる」という意味があり、1919年に設立された絶縁体メーカー「日本碍子」も「碍」が用いられた。「害子」では具合が悪いのだろう。商号は現在も「碍子」が用いられているが、1989年に社名表記は「日本ガイシ」に変更されている。ホームページでは「碍子」ではなく、ひらがなの「がいし」表記も多い。

 「障碍」と「障害」のどちらがいいか分からないが、「障害」と「者」をくっつけて「障害者」とするから問題が生じるようにも思う。「障害」は「持つ」のか「ある」のか「受ける」のか「抱える」のかで微妙に意味も異なってくる。言葉を乱暴に扱ったからこそその反動が表れてきているのではないか。「障害」を英訳すればすぐ浮かぶのは「barrier」だし、「障害者」よりまだ「handicapped person」のほうがすんなり受け入れやすい。中国語では「残疾人」と呼ぶそうだ。

 この呼称の問題も含め、健常者と障がい害が共存するインクルージョンの考え方が世の中に浸透するよう企業もわれわれサラリーマンも考えないといけない。同社には、障がい者の立場から戸建てやマンションの商品企画にユニバーサルデザイン(UD)提案がされることを期待したい。

 

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