RBA OFFICIAL
 
2015/04/01(水) 00:00

なぜ京都の高齢者は美しいか 3住研究会で野間光輪子氏が語る

投稿者:  牧田司

IMG_9901.jpg
「変わる家族と住まい」シンポジウム(すまい・ホールで)

 住宅金融支援機構・JAHBnet・アキュラホームが後援している「住みごこち・住みごたえ・住みこなし推進研究会」(略称:3住研究会、委員長:高田光雄・京大大学院教授)は3月30日、「変わる家族と住まい」をテーマに第1回シンポジウムを行った。200人以上が参加した。

 3住研究会とは、住まい手が一方的に受けるサービス価値である「住みごこち」と、住まい手と住まいが双方向に働きかけることで得られる非手段的価値「住みごたえ」を継続的に作り出す住まい方「住みこなし」と呼ぶことから名づけられた。

 シンポジウムでは、高田氏が「変わる家族と住まい」について解説し、大久保恭子委員(風代表取締役)、園田眞理子委員(名大教授)、野間光輪子委員(日本暮らし代表取締役)がそれぞれ講演。

 大久保氏は、増加する単身世帯の増加で「これからのひとり住まい」はどうなるかを話し、園田氏は多摩地区の郊外戸建て団地を例示しながら「カタツムリ型からヤドカリ型への転換」を訴えた。野間氏は、なぜ京都の高齢者は美しいかについて京都弁で話した。

 「パネルディスカッションでは高田氏がモデレーターとなり、この3氏に檜谷美恵子委員(京都府立大教授)、山本理奈委員(東大大学院学術研究員)が加わりパネルディスカッションを行った。

IMG_9906.jpg
高田氏

◇       ◆     ◇

 感動的な講演を行ったのは日本暮らし代表取締役・野間光輪子氏だった。「京都の高齢者はなぜ美しいか」というテーマに偽りはなかった。

 言うまでもないことだが、野間氏が「美しい」と語ったのは容姿のことではない。自立した精神的な豊かさ、品性・品格のことだ。京都は夏暑く冬寒い気候的には必ずしも恵まれているわけではなく、京町屋の家屋はバリアだらけだが、祇園祭が行われる鉾町の人たちはいつも背筋をぴんと伸ばし、四季の移ろいを楽しむゆとりを持っているという。異なる意見・考え方に対しては〝それもおもしろいなあ〟と反発するのではなく、受け容れる心の広さを持っているという。

 なぜなのか。野間氏が語ったのは「京都には『ハレとケ』が生きているんです。『ハレ』とは「晴れ」、つまり非日常の年中行事であり、『ケ』(褻)は日常なんです。京都は祇園祭りという極晴れと四季折々の行事の晴れを中心に大人も子どももそれぞれの世代が自らの役割を認識し、刺激し合いながら生きていくという文化なのです。高齢者も社会的な役割を担っているという誇りを持っているんです。だから美しいんです。鉾町の人たちは『非行少年とぼけ老人はいない』のが誇りなんです」と話した。

 野間氏はまた、「わたしたち日本建築士会連合会の女性委員会が12年前、このような町文化、コンパクト社会が残っている祇園の街を学会で報告したんです。そうしたら、他の会員の方々から『あなたたちは京都を美化しすぎている』と批判を浴びました。『近くに病院がない、高齢者にやさしくない』と。これ、違うんですよね。病院が遠くても梅を眺める、路地を歩くことに喜びを感じる、風景を大事にする街なんです。これが美しいんです」と語った。

 「ハレとケ」は、日本人の伝統的な人生観を表す柳田國男の言葉だが、「メリハリ」も同義語だろう。この日常と非日常を使い分けることが美しく生きるヒントになることを教えられた。

 しかし、「ハレとケ」の文化は京都だけでなく、かつては日本全国に存在したと思う。冠婚葬祭だ。間違いなくわが国は冠婚葬祭がコミュニティを育んできた。いま、このコミュニティを排除する動きがある。マンションの標準管理規約からコミュニティ条項を削除する動きだ。コミュニティは危機に瀕している。

IMG_9910.jpg
野間氏

◇       ◆     ◇

 高田氏はシンポジウムの冒頭、「私以外の委員は全て女性。ものすごく極端なジェンダーバランス」と会場を笑わせたが、春爛漫にふさわしく大久保委員は和服姿で登壇、園田委員は見事な白髪で熱弁をふるった。

 大久保氏は普段も和服をよく着るそうで、園田氏は「白くなったのは最近、浦島太郎になっちゃった」と茶目っ気たっぷりに話した。

 IMG_9906-2.jpg IMG_9907.jpg IMG_9913.jpg 
左から大久保、園田、檜谷の各氏

 

rbay_ayumi.gif

 

ログイン

アカウントでログイン

ユーザ名 *
パスワード *
自動ログイン