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2015/04/01(水) 00:00

宅建士スタート 率直に喜べない 顧客満足度の低さ 業界紙特集から

投稿者:  牧田司

 今週の業界紙「住宅新報」と「週刊住宅」は、4月1日付で「宅地建物取引主任者」が「宅地建物取引士」(宅建士)に呼称が変わったことを受けて特集記事を組んでいる。レイアウトは異なるが、紙面内容はほとんど同じだ。同じ業界紙の「日刊不動産経済通信」と専門紙3紙が共同で企画したそうで、広告ではなく記事として3紙が共同戦線を張るのは初めてではないか。

 また、不動産協会、不動産流通経営協会、全国住宅産業協会、全日本不動産協会、全国宅地建物取引業協会連合会の業界5団体の長が一堂に会して座談会を行うのも初めてではないかと思う。国交省土地・建設産業局の毛利信二局長も参加しており、司会役は同省OBの中川雅之・日大教授だ。

 晴れの日にケチなどつける気は毛頭ない。毛利氏が述べたように、宅建士が「名称変更にとどまらず、宅地建物取引士にふさわしい公正・誠実な業務遂行や信用失墜の禁止、宅地建物取引業者の従業員教育など…業界全体の一層の信頼性向上に向けた取り組みがさらに強化され、取引のプロである宅地建物取引士が不動産流通市場の活性化に向け、大きな役割を果たしてくれることを期待している」。

 しかし、主任者から宅建士への〝昇格〟の経緯、これまでの宅建試験制度を考えると、記者は手放しで喜ぶわけにはいかない。昇格はずいぶん前から一部の業界団体が主張してきたことで、中身についてはそれほど論議されてこなかった。

 大学入試ではない。不動産のプロを育成するためなら、試験制度は一定レベル以上の受験者は全て合格にすべきだし、少し足りない人は再チャレンジの機会を与えていいではないか。これまでそのようなことは全く考慮されてこなかった。一定の合格者を確保・抑制することが優先されてきたのではないか。合否の権限は全て実施機関に握られ、受験者はその都度、安全弁のような扱いを受けてきた。

 そのいい例が、大量42万人が受験したバブルの絶頂期の平成2年だ。合格者は近年では最多の約4.4万人に上ったのだが、一方で合格率は過去最低の12.9%にとどまり、合格点も過去最低の26点に抑えられた。試験問題は50問で4肢択一だ。約半分の正答率で合格とは何事だと、当時批判も浴びた。

 その後、合格者はほぼ3万人前後で推移しており、ここ数年は受験者のレベルが上がったのか下がったのか合格点は35~36点の年が多い。宅建士になっても難易度は変わらないようだが、受験者が安全弁のように扱われることのないようにしていただきたい。

 もう一つお願いしたいのは、「宅地建物取引士の名に恥じないよう、魂を入れることが必要」と竹井英久・不動産流通経営協会理事長が強調したように、消費者から信頼される宅建士の育成に力を入れることだ。

 業法の改正を先取りする形で全宅連は「不動産キャリアパーソン」制度を一昨年に立ち上げたという。記者は中身を知らないが、専門知識はもちろん社会常識・品性の教育も必要だと感じている。

 これに関連することだが、同じ号で住宅新報は不動産業者と取引したことがある消費者500人に対してアンケート調査した結果を報じている。「信頼度」の平均値は65.3%だったという。つまり約3分の2だ。これはいかにも少ない。先日、プレハブ建築協会の会合で発表されたハウスメーカーの顧客満足度は70.6%だった。他の業種でもほとんどが70%を超えているはずだ。

 物件そのものの質ではなく、「基本的マナーの不足」「専門知識の不足」など基本的な項目でも問題を指摘されている。これをどう受け止めるのか。

 そうした現状にタイムリーというべきか、この4月から呼称が変わる不動産流通近代化センターは見開き広告を業界紙2紙に出しており、不動産流通の新指標として、宅建士の個人の実務レベルを判定できる「不動産流通実務検定」を開始するという。

 これも結構なことだが、ずっと前から呼称を変更すべきと主張してきた記者にとっては、前述した住宅新報のアンケート結果をみると、複雑な思いもする。やはり不動産業は前近代的なところが残っており、それが信頼につながってこない要因ではないかということだ。

 ここにいたって「近代化」を残せとは言わないが、新しい呼称は「リノベ」「再生」「活性化」「人材」「グローバル」などの手あかにまみれた陳腐化したものではなくて、そしてまたいかにもお役所的な「センター」も取っ払って、不動産流通の「未来」が描けるようなものにしていただきたい。

宅建主任者を宅建取引士に昇格させる意味が全く分からない(2014/4/30)

 

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