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2015/04/16(木) 00:00

普通のマンションの管理組合に第三者管理を導入する余力はあるのか

投稿者:  牧田司

 皆さんはマンション管理組合がマンション管理会社に恒常的に支払う管理委託料はいったいいくらかご存知か。マンション居住者(組合員)の方でも知らない方のほうが圧倒的に多いのではないか。かくいうマンションにずっと住んでいる記者もそうだ。理事の経験があるので、「管理費から管理委託料を差し引くとゆとりがなくなる」のは分かっているが、管理委託料が高いのかやすいのかさっぱり分からない。

 記者やマンション居住者が知らないのは問題だが、国交省や東京都のマンションに関する総合的な調査でも、管理費の額や管理委託の有無などについてのデータはあるのに、管理委託料に関しては全くない。

 もちろん、管理会社は自社が管理を受託しているマンションの受託料がいくらなのかはわかっているが、外に出すことは固く禁じられているはずだ。

 つまり当事者でないと分からないということだ。なぜこういうことを書くのか。記者は、国交省の「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」(以下、検討会)が打ちだした「第三者管理方式」が浸透するかどうかの記事を書くために、その前提となるマンション管理士などに支払う報酬をねん出する余力があるのかどうかを探るために、管理委託料の額を調べることにした。

 ところがこれを誰も把握していない。検討会でも報酬額がいくらになるか、機能不全に陥った組合が専門家にフィーを支払う余力があるのかどうかなど踏み込んだ論議はされなかった。

 誰も知らない――ここに根本的な問題が潜んでいる。毎月支払っている管理費はマンション管理会社に支払われることはおおよそわかってはいるがその額は分からない。その額が適正かどうか判断する知識もない。あっても妥当かどうか判断はできない-これが実態だ。

 そんなわけで、以下に書く記事は記者の推測によるものであることを断っておく。

 組合の収入を予測するのは簡単だ。1棟50~60戸を想定した場合、約1.5万円だ。つまり50戸で月額75万円だ。これに対して管理会社に支払われる委託料は40~60万円くらいではないかと考えた。幅があるのはそれぞれマンションの特性や管理内容にかなり差があると考えたからだ。

 差引15~35万円が残る。これから共用部分の電気・ガス・水道代、保険料、インターネット利用料、修繕費(日常発生する小さな修繕)などを支払うとまずほとんど残らない。足りないから駐車場収入を修繕積立金に充当しないで一般管理費として計上している組合も少なくないはずだ。

 機能不全に陥っているマンションは、管理費の滞納もあるかもしれないので、それだけ余力は少なくなる。

 さて、ではマンション管理士など専門家はいくらで組合業務を引き受けるか。これも難しい。リスクを伴うからだ。どこからクレームの矢が飛んでくるか分からない。〝歩く音がうるさい〟〝窓を開けると隣の音がする〟〝タバコの匂いがする〟がクレームになる時代だ。月額10万円なら請け負う人が現れるか。

 このように考えると、まず自力で専門家に報酬を支払う能力のあるマンションは皆無に近くなる。では、自治体が補助する可能性はあるのかどうか。これも難しい。特定のマンション管理組合に手を差し伸べる合理的な理由をどう見つけるか。放置すれば倒壊するとかの理由で代執行する場合を除き、他の住民やマンション管理組合の理解を得るのは難しいのではないか。

 可能性として否定できないのは、専門家と管理会社が話し合って、専門家に支払う報酬額に該当する分だけ管理委託料を値引くという方法だ。これは理にかなっているように見えるが、しかし、それまでは組合(居住者)-管理会社だけの問題だったのが組合(居住者)-専門家-管理会社の三つ巴の争いという新たな問題が発生しないとも限らない。

 「検討会」は、想定される様々な問題に対応するため、外部管理者の選定・解任、欠格要因、外部チェック、利益相反の排除、財産毀損の防止など事細かに定めている。

 記者は、このような対策を講じて事故を防ぐのは結構だとは思うが、ひとつひとつだれがチェックするのか、第三者管理をまた管理する機関も必要になってくるのではないかと思う。このコストもばかにならないと思う。

 そんなこんなで、第三者管理は富裕層向けや投資向け、高齢者向けなどには有効かもしれないが、なんとも難しい問題を抱えてしまったものだ。

 この問題について、マンションコミュニティ研究会代表・廣田信子氏(元マンション管理センター総合研究所主席研究員)がブログで次のように述べている。

 「役員報酬の問題は、マンションの風土づくりにも影響する大きな問題だと思います。やはり、役員は、基本は無報酬、自分のできる範囲で自分のコミュニティに貢献するという気持ちで務める。でも、役員になったが故の出費は考慮し、それ相応の報酬は支払い、余分な心配なく役員を務めてもらえるようにする。ではないかな~と思いますが、皆さんはどう考えられますか。」

 廣田氏はやさしい語り口でマンション管理に関するブログを発信されているのでお勧めだ。

廣田氏のブログは  ↓
http://ameblo.jp/nobuko-hirota/entry-12012467557.html

 

 

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