RBA OFFICIAL
 
2015/04/16(木) 00:00

国交省の「検討会」とは雲泥の差 都のマンション部会での審議内容

投稿者:  牧田司

 東京都は昨年、住宅政策審議会にマンション部会を立ち上げ、8月から今年1月にかけ7回の会合を開いている。部会長は齊藤広子・明海大教授で、部会長代理は篠原みち子・弁護士。このほか委員が8名、それと不動産協会、マンション管理業協会、首都圏マンション管理士会などの専門委員8名から構成されている。

 部会は非公開だが、その都度、議事録が要約の形で公表されている。国交省には失礼だが、「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」とは中身が雲泥の差。変なことをしゃべれば、齊藤氏か篠原氏に一喝されるだろうから、男性委員も慎重にならざるを得なかったのではないか。議事録の一部を紹介する。

<管理状況の把握について>

◎マンションの実態がわからないと、講じるべき支援策など対応しづらい。任意のアンケートで把握しきれないとなると、例えば条例で、都の調査権限を位置づけた上で、豊島区のように届出義務を設け、情報を把握する必要があるのではないか。

<管理不全マンションへの対応について>

◎管理状況が悪いマンションは周辺の市街地環境に大きな影響を与えかねないが、その中には、建替えや解消により問題が解決するものもあれば、その道すら開かれず、管理を相当一生懸命行うしかないマンションもあるので、議論の対象となるマンションをもう少し絞った方がいいのではないか。

◎管理状況が悪いマンションがどの程度あるのか把握することは難しい。管理不全に陥る前、例えば管理規約も見直さず、修繕もきちんとしていない、修繕の仕方もわからないなどといった状況のマンションに、高齢化の波が押し寄せ、役員のなり手がいないなど、様々な問題が一度に発生しており、現場は大変である。

◎管理不全に既に陥っているマンション、管理不全に陥りそうな予備軍のマンション、もう少し後押しすればうまく再生・耐震補強・建替えが可能なマンションなど様々な段階があることを意識して議論すべき。

◎修繕もきちんとされており、修繕積立金もしっかり積み立てられているマンションは、日常的な管理組合の体制がきちんとできており、管理に対する意識も相当高い。一方で管理が全くされておらず管理不全に陥っているマンションがあることも事実である。そこに陥らないための東京独自の施策に取り組むべき必要があると感じている。

 ◎外部不経済を起こさないためには適切な修繕等が重要となるが、そのためには日常の管理組合の体制が機能していることが重要である。

 ◎管理不全に陥っているマンションに対し、どのような支援メニューを用意しても、支援を受ける側にそれを活用しようという意識がないと支援は難しい。管理組合の中には、行政が支援すると言えば、自分たちは何もしなくても支援が完結するようなイメージを持つ傾向があるが、決してそうではないことを啓発する必要がある。

◎どんな支援が必要かという議論よりも、管理不全状態に陥らせないようにするにはどうしたらいいかという議論の方が先である。これには、きちんと管理すれば市場で評価され、自分たちの資産価値を上げていくという仕組みが成り立っていることが前提となる。これをしたら必ず評価されるということがわかっていれば、区分所有者はそれを行うはずである。立地や間取りだけでなく、管理そのものがマンションの価値を決めていくという仕組みが確立しないと、管理を放置し続けるマンションが出てくるだろう。

<管理不全マンションへの対応について>

◎管理不全マンションの明確な基準がない。まずは判定基準について議論すべきではないか。

◎判定基準が重要事項説明書に追加されれば、売買時の障害となるのを避けるため、管理組合は改善に向けて動くのではないか。

◎約9割のマンションが管理会社に管理委託していることから、よほど劣悪な管理会社でなければ、管理不全マンションに陥ることは考えにくいのではないか。むしろ、自主管理や一部委託を行っているマンションの実態を把握すべきではないか。

◎マンションは戸建住宅に比べて固定資産税を3割程度多く負担していると言われている。道路や下水道等の整備費は戸当たりで見れば、戸建住宅の方が多くかかるほか、小規模宅地の固定資産税については、1/6まで軽減される効果もあり、受益負担率はマンションが戸建に対し2倍多いという試算がある。税制の改正は国の政策であり難しいが、戸建てではなくマンションに対して行政が支援することには税制面からも合理的な理由がある。

◎万一マンションが管理不全に陥った場合、周辺に与える影響が高いため、対象そのものは幅広く取っておいて様々な支援メニューを用意しておく必要がある。管 理不全を防ぐためには、再生に向けた普及啓発だけではなく、条例等で自治体への情報提供や計画修繕の実施などを義務付けし、管理組合の意識を高めるといっ た方法もあるのではないか。

◇      ◆     ◇

 都は、平成25年度に行ったマンション実態調査で回答のなかったマンションの中から、管理組合活動が不活発なマンションを5件選定し、マンション管理士を派遣して組合活動の活性化に向けた取組を支援するモデル事業を平成25年度に実施した。

 管理組合の組織体制の見直しや管理規約の策定など、各マンションにおいて一定の成果を得ることができたが、一方で、5件の支援マンション選定にあたり、管理不活性の兆候があるマンションを訪問したが、「必要ない」「居住者間の繋がりが無く不可能」などの理由により拒否されるケースが多かったとしている。

 これに対して都のマンション部会は、「管理組合が機能していないなど、調査への協力が得られにくいマンションについては、実態把握が極めて困難となっており、こうしたマンションがどこに存在し、どのような問題を抱えているのか、網羅的かつ継続的に把握することができない。仮に、何らかの方法で管理不全に陥っているマンションを把握できたとしても、現在は、行政が管理組合の活動に関与できる法的根拠はなく、管理組合に拒否されれば支援・指導することができないのが実情である」としている。

 この問題については、豊島区が2013年7月に施行した「マンション管理推進条例」の届け出の状況などがゴールデンウィーク明けには取材できそうなので、機会を改めて報告したい。

 

rbay_ayumi.gif

 

ログイン

アカウントでログイン

ユーザ名 *
パスワード *
自動ログイン