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2015/07/07(火) 00:00

哲学、人材育成で議論集中 国交省 都市公園のあり方検討会

投稿者:  牧田司

 国土交通省は7月6日、第6回「新たな時代の都市マネジメントに対応した都市公園等のあり方検討会」を行った。

 今回のテーマは、まちの活力と個性を支える多様な都市公園の運営のあり方を検討することで、これまでのステージだった量的ストックの拡大から、これからは人口減少、少子高齢化、地域経済の衰退などの社会的要請に応えるため、ストックの効果を高め、地域の特性を生かした賑わいのある街づくりや美しい景観、コミュニティ形成などに寄与する公園とは何かを論じることとしている。制度の柔軟な運用ができる人材の確保も重要課題とされている。

◇       ◆     ◇

 これまで数回、この検討会を傍聴してきた。記者は都市公園や造園については全くの素人だ。しかし、座長の進士五十八氏(東京農大名誉教授・元学長)をはじめとする造園や園芸、環境学が専門の先生方の話はとても面白いし、素人だからこそ考えさせられることも多い。以下、今回の検討会で論議されたことを紹介するとともに、素人の目線で課題も提起したい。

 まず、「公園等」の「等」について。進士座長は「この等が極めて重要だが、今回は都市公園にフォーカスを絞るということだから、都市公園そのものについて論議していただきたい」と話した。

 進士氏は、都市公園のほかにも豊かで美しい緑などの空間、環境をどうするかが大事だと仰っているのだと理解した。その通りだと思う。

 われわれは公園の緑も道路の附属物のようにしか扱われない緑も区別して考えているわけではない。都市公園法など読んだことがない人のほうが多いはずだ。公園のことをよく理解していないからこそ、行政に対して発言力がないし、一部のNPOとしか行政もパイプをつなげることができないのではないか。われわれも公園とは何かを考えないといけない。

 次に、進士氏のほか多くの委員か指摘した公園とは何かという哲学、専門的な知見を持つ人材確保・育成について。

 岸井隆幸委員(日大理工学部教授)は、「検討課題はそれぞれその通りかもしれないが、それ以前に街づくり全体の中で都市公園をどのように位置づけるかが重要なのに、それが欠けている」と問題提起した。

 これを受けて進士氏は、「街づくりの中心になるべき人材がいない。これでは全体をリードするものがいない」と指摘した。

 涌井史郎委員(東京都市大環境学部教授)も、「人材がいない。ランドスケープが崩壊しているのに、行政も事務的な手続きに走っている。予算も不足している。専門的にコーディネートする人材を育成するのは喫緊の課題」と話した。

 池邊このみ委員(千葉大大学院園芸学研究科教授)は、この点について「パークマネジメントとは何か考えるべき。何かやると収益、成果が求められるが、定量的にしか評価されない。美しくする、愛される街、景観として評価されるよう自治体-NPO-指定管理者が一緒になってやっていくべき。みんな内向き志向になっている」と評価制度などについても言及した。

 これらと関連することだが、地方が抱えている問題も明らかになった。

 小野敏正委員(東京都都市整備局都市づくり政策部緑地景観課課長)は、「都はいろいろなことをやっている。規制緩和がいいのか悪いのか、指定管理がいいのか悪いのか、自主管理がいいのか悪いのか、パークマネジメントは努力している」と話し、橋本健委員(横浜市環境創造局公園緑地部部長)は、「福祉や防災、共助の視点からいろいろプログラムをつくって裾野を広げる努力を行っている。人材については、いつでもだれでも判断できる基準をつくっている」などと自信を見せたが、石田尚昭委員(岡山市都市整備局審議監)は、地方都市の課題を次のように語った。

 「NPOに力がない。指定管理など無理。民間がやるとなっても、それをきちんとコントロールする人材がいない。運用することまで手が回らない」

 その一方で、国土交通省大臣官房審議官・舟引敏明氏は、「基本的には目的外に使う以外のことは管理者(首長)の判断で何でもできる。柔軟で自由度の高い成功事例を増やしていこうというのがわれわれの考え」と、自治体の創意工夫を求めた。

 また、梶木典子委員(神戸女子大家政学部教授)は、「公園は街づくりの中心にある。(以前はコミュニティ形成の核として機能していた)学校は閉鎖的になっている。いろいろなところと連携していつでも公園は自由に使えるという情報を発信していくことが必要」と、本来持つ公園の機能を引き出す力があるプロの育成を訴えた。

 自治体にプロがいないというのは記者も同感だ。これまで街路樹などについて取材してきたが、どのような樹種がどれくらい植わっているか知らない担当者がいたし、緑の質など全然考えていないような印象も受けた。自治体はランドスケープデザイン専攻の学生の採用などしていないのではないか。

なぜ農学、環境、家政学者の会合はおおらかなのか 国交省検討会(2015/3/17)

公園に保育所、マンション 岩盤規制を打ち破れるか 国交省 公園のあり方検討会(2015/2/2)

 

 

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