RBA OFFICIAL
 
2015/09/04(金) 00:00

なぜ伸びない品確法性能表示&長期優良住宅 どうなる中古住宅評価

投稿者:  牧田司

 日本木造住宅産業協会は先に「平成26年度自主統計および着工統計の分析」報告会を行なったが、記者は品確法による性能評価住宅と長期優良住宅認定戸数が増えてこないことに注目した。

 品確法は、「住宅性能表示制度」「瑕疵担保責任の10年間の義務付け」「住宅に関する紛争処理体制の三つの柱からなる消費者を保護する法律で、平成12年に施行された。

 長期優良住宅は、平成21年に施行された「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」により住宅を長持ちさせ、環境への負荷を減らす認定制度のことをいう。

 詳細は省くが、双方とも似たような制度で、耐震性、劣化対策、維持・管理、省エネ性などの評価項目など半分くらいは重なっている。長期優良は居住環境も評価項目に入っており、税制面でも品確法よりやや優遇されているのが異なる点だ。

◇     ◆   ◇

 考えなければならないのは、品確法も長期優良も〝ビンキリ〟で、最下級にランクされるものは建築基準法に定める「最低基準」とたいして変わらないにも関わらず、戸数が増えないことだ。どちらの制度も受けていない6割以上の戸建ては中古市場でどう評価されていくのかということだ。

 品確法が施行されてからしばらくは順調に戸数を伸ばした。「設計評価」と「建設評価」の合計戸数は平成12年度が約1.1万戸だったのが、19年度には約42.2万戸まで増加した。ところが、「長期優良住宅」制度が始まった21年度以降は頭打ちとなり、消費増税前の駆け込みがあった24年度は約41.3万戸になったものの、26年度は約36.8万戸に落ち込んだ。

 一方、「長期優良」は21年度が一戸建てと共同住宅をあわせた戸数が約5.6万戸で、その後戸数を伸ばし、25年度は約11.8万戸、26年度も10.1万戸と10万戸台を維持している。

 戸数だけでなく、品確法も長期優良も全体の住宅着工戸数に占める割合がここ数年一向に増えないことも問題だ。全国の戸建て住宅に占める品確法の設計評価住宅シェアは22年度の18.2%から26年度は17.1%へ1.1ポイント減少しており、建設評価住宅のシェアも22年度の14.7%から26年度の14.7%へと横ばいとなっている。木住協の会員によるシェアは全国平均と比べやや高く、26年度の設計評価住宅シェアは25.3%、建設評価住宅シェアは15.9%となっている。

 長期優良はどうか。全国の戸建て戸数に占める割合は22年度の19.9%から26年度は18.9%へ1.0ポイント減少している。長期優良に占める木住協シェアは高く、26年度は29.5%になっており、長期優良の3戸に1戸が木住協会員によるものだ。

 数字からは、品確法から長期優良へ切り替えるメーカーが増えているのではないかということがうかがわれるが、関係者によると長期優良のほうが申請の手間などを考えると使い勝手がいいとのことだ。

 ◇           ◆    ◇

 いま、国交省は中古戸建て住宅の流通時の評価方法について検討を進めている。築後20~25年で建物価値をゼロとみなす慣行を改め、基本性能などの客観的な指標を用い、また、リフォームやリノベーションによる使用価値の向上を評価して、建物についても適正に価格として評価しようというものだ。建物を評価する際のインスペクションに関するガイドラインも作成した。

 ここで問題となるのは、インスペクションを行なう際、先に書いた品確法の性能評価住宅や長期優良住宅はともかくとして、評価指標が少ない圧倒的多数の一般の住宅はどのように評価されるかだ。

◇          ◆    ◇

 ついでながら、もう一つ問題を指摘したい。国土交通省は今年7月、不動産鑑定士が既存戸建住宅の評価を行うに際の「既存戸建住宅の評価に関する留意点」を策定し、発表した。建物の性能、維持管理の実態調査、リフォームの価格への反映などを盛り込んでいる。

 これに異存はない。しかし、不動産鑑定士がどうして既存戸建ての性能や維持管理に関する履歴、リフォームなどの価値を判断ができるのか。新たに建築士の資格を取得するのであればともかく、これは絶対に無理だろう。中古流通への不動産鑑定士業の参入は、問題をより複雑化するのではないかという不安もある。

 

rbay_ayumi.gif

 

ログイン

アカウントでログイン

ユーザ名 *
パスワード *
自動ログイン