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2015/09/09(水) 00:00

東急不動産 「品川勝島」完成 「シェア・デザイン」の価値をどう伝えるか

投稿者:  牧田司

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「ブランズ品川勝島」のエントランス付近のケヤキの植栽

 

 東急不動産は9月8日、国土交通省の平成25年度(第2回) 住宅・建築物省CO2先導事業に採択され、同社の新しい暮らし方提案「シェア・デザイン」の第一号事例「ブランズ品川勝島」が竣工したのに伴い、記者見学会を行った。

 物件は、京浜急行鮫洲駅から徒歩11分(東京モノレール大井競馬場前駅から徒歩8分)、品川区勝島1丁目に位置する18階建て全356戸。引き渡しは2015年9月29日の予定。分譲開始は昨年の7月。これまで総戸数の約75%が供給ずみだ。

 この物件については、同社が分譲前に記者発表したときの記事を参照していただきたいが、当時〝世界初〟と言われた東京ガスのマンション向け「エネファーム」を全戸に搭載しているのが大きな特徴だ。

 マンション向け「エネファーム」はその後、10数物件で採用されており、今後の普及が期待される。縦約400ミリ×横約400~560ミリ×高さ約1800ミリとややかさばるのが課題だ。

 「シェア・デザイン」は、エネルギー、環境、コミュニティの3つのテーマをそれぞれシェアすることで、省エネ・省CO2の暮らしを進めようというもので、同社と東急コミュニティー、東急住生活研究所が共同して提案した「東急グループで取り組む省CO2推進プロジェクト」が国交省の先導事業に採択された。プロジェクトには石勝エクステリア、東急ホームズ、東京都市大学、東急ストアなどの東急グループも参画している。

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エントランス付近のケヤキの植栽

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エネファーム

◇       ◆     ◇

 販売開始から1年ちょっとで全戸数の75%が供給できたということは、後発の大成有楽不動産 「オーベルグランディオ品川勝島」(452戸)との競合を考えればよく売れていると評価できる。都心部のマンション価格相場は強含みで推移しているので、完成してからコンスタントに売れていくのではないか。

 ただ、率直に言えば、同社が力を入れている割には販売スピードはそれほどでもないという印象を受けた。

 それはなぜか。分譲前の記者発表時にも感じたことだが、省エネ、環境、コミュニティはそれぞれ喫緊の課題で、当然デベロッパーもこれらを重要なテーマに掲げている。ユーザーの意識も高まっており、これらが購買動機の上位を占める物件もある。

 しかし、記者はまた別の見方をしている。省エネ、環境、コミュニティは欠かせないものではあるが、デベロッパーが期待するほどユーザーは反応を示していないのではないかということだ。

 その理由として、エネファームは一次エネルギー利用率が85.8%で、火力発電の37%よりはるかに高く、年間の光熱費が約4.8万円節約できるとか地球環境にやさしいなど〝見える化〟が理解されやすいのだが、環境をシェアしたりコミュニティをシェアしたりすれば具体的にどのようなメリットがあるのかが分かりづらいので、購買動機につながらないのではと思っている。

 いい例が植栽だ。完成した建物の公開空地には鹿児島から取り寄せたケヤキの大木が16本も植わっていた。最近のマンションの外構に多く植えられるのは値段の安いシラカシだが、ケヤキとどれくらい差があるか、記者が販売担当者なら来場者にきちんと伝えるが、デベロッパーの販売担当者は知らない人のほうが多いのではないか。

 また、都の「マンション環境性能表示」でも満点の星15個に一つ欠けるだけの14個を獲得しているのだが、この価値をユーザーにきちんと伝えられているのか。記者はこれもまた高く評価している。

 これは同社だけの問題ではない。とくに電鉄(系)会社は、良くも悪くも鷹揚なところがある。各社が知恵を絞って〝見せる化〟をより一層進める必要がある。「コミュニティの価値」を価格に換算したら250万円というデベロッパーのアンケート調査結果もあるが、これはそのまま鵜呑みにできない。実際の消費行動はまた別ではないか。

 それと、やはり基本的には住戸プランの差別化というか魅力づけをしないと、立地条件に難のある物件は消費者の需要を喚起・創造することはできないと思っている。その点で、同社のプランはどうだったのか。

 例えば食洗機。記者は共働き世帯で食洗機は必需品だと思っているが、同社の物件はオプションだが、大成有楽の物件は標準装備されている。

 〝世界初〟が強調された割には、〝世界初〟に見合うメリットを具体的にユーザーにアピールできていないのではと感じた。

 かなり批判的なことを書いたが、東急不動産はユーザーから見たら東急電鉄グループだ。電鉄(系)会社の総合力は普通のデベロッパーより高いと思う。東急電鉄も毎日数百万人の足になっている。大学まで持っているデベロッパーなどない。それだけに歯がゆさを感じるのだ。

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エントランス部分

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シェアラウンジ

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「リサイクルシェアスペース」(コンシェルジュの了解を得て不用品を交換したり売買できるのだという)

安さだけではない、巧みな需要喚起策 「オーベルグランディオ品川勝島」(2015/1/27)

東急不動産の省CO2推進プロジェクト第1弾 「ブランズシティ品川勝島」(2014/3/9)

 

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