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2015/10/13(火) 00:00

「2020年に向かう、新たな森づくり」シンポ 涌井氏や網野氏が講演

投稿者:  牧田司

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「2020年に向かう、新たな森づくりシンポジウム」(全国都市会館)

 先日(10月6日)、美しい森林づくり全国推進会議と林業復活・地域創生を推進する国民会議が主催して「2020年に向かう、新たな森づくりシンポジウム」が行われた。 

 いま成熟期にある国内の木材を活用した建材・部材の技術開発が進み、都市部のオフィスや商業施設、福祉・コミュニティ施設などでも木材の使用や木材製品の開発の動きが強まっており、この動きを東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年を一つの区切りとして森づくりにつなげ、地域創生の方策を論議するのが趣旨だ。

 シンポジウムには今井敏・林野庁長官が来賓として挨拶し、涌井史郎・東京都市大学教授が「オリンピックレガシーとしての森と木を活かす持続的な社会」について、本郷浩二・林野庁森林整備部長が「森と木を活かす森林・林業施策の現状と今後」についてそれぞれ基調講演した。

 このほか、山本恵久・日経アーキテクチュア編集委員と網野禎昭・法政大学デザイン工学部教授がそれぞれの立場から木づかいの最前線について概要報告した。

 パネルディスカッションでは宮林茂幸・東京農大教授がモデレーターを務め、都市での木づかいをどうして地域創生につなげていくかを講演者・概要報告者が語り合った。

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涌井氏(左)と網野氏

◇       ◆     ◇

 記者が傍聴・取材したのは宮林氏が最後に「山が健康だからわれわれは元気でいることができる。このままでは日本列島がつぶれてしまう」語ったように、同じような危機感を抱いているからだ。

 シンポジウムの時間は3時間近く。一つひとつ紹介したいのだが、なにしろ最後尾に座ったので声が聞きづらく、加齢による書き取り力が加速度的に衰えてきたため正確にメモを取ることができなかった。なので、ここではエッセンスにとどめる。詳細は主催者の事務局から11月の半ばにはネットで公開されるので是非読んでいただきたい。

 深尾精一・首都大学東京名誉教授や村上周三・東大名誉教授らとともに新国立競技場整備事業の技術提案等審査委員を務める涌井氏は、オリンピックレガシーとは何かを先のイギリス・ロンドンオリンピックの成功例を引き合いにし、世界に例をみない超高齢社会をわが国がどのように乗り切るのか、災害リスクをどうやって克服するかなどポジティブな姿勢を発信することが重要と力説した。

 また、わが国の森林の公益的価値が70兆円にものぼり、巨大都市を支えているにもかかわらず危機的な状況にあるとし、「伐って、使って、植えるという分かりきったことを行うことが社会の疲弊から救う」「オリンピックに向けて木材利用の可能性を示し、自然と人が共生し、健康な森林を取り戻す絶好の機会」などと話した。

 網野氏は、オーストリアのスイス国境近くの「木造建築のメッカとしてヨーロッパで注目されている」山村をプロジェクター付きで紹介し、森の資源を大切にし、建物の長寿命化を図ることが極めて理にかなったことだと話した。

 さらに、「建築物の木質化を進めるには法規制などハードルが高いが、われわれは技術的なことに走りすぎて、なぜ木造が必要かという論議はされていない。木造と共生する人間社会にしないといけない」と語った。

 網野氏が話したオーストリアの山村については、別掲の記事を参照していただきたい。

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左から宮林氏、涌井氏、本郷氏、網野氏、丸川氏(林業復活・地域創生を推進する国民会議事務局)

◇       ◆     ◇

 涌井氏は講演の中で「育樹祭」について触れ、「今回は伐採を行う。画期的なこと」と話した。10月11日(日)に岐阜県で行われた「第39回全国育樹祭」のことで、臨席された皇太子さまがのこぎりを使って間伐材に切り込みを入れられたそうだ。

 植樹祭の模様はNHKで全国放映されるが、どうして育樹祭は放映されないのか。ラグビーワールドカップもプロ野球CSも観たいが、このような国家的国民的行事はきちんと報道すべきだ。

「RC、S、木造の垣根を越えよう」網野禎昭・法大教授 欧州の木造建築物を語る(2011/10/19)

 

 

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