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2015/10/15(木) 00:00

マンション有効率 じわじわと上昇 間口も狭まる一方 建築費上昇の影響か

投稿者:  牧田司

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 図1は、不動産経済研究所が毎月発表するマンションの市場動向調査をもとに2010年から最近までの首都圏マンションの分譲有効率の推移を見たものだ。有効率とは、マンションの総建築延床面積に占める専有総面積の比率を示すもので、賃貸物件などはレンタブル比率と呼ばれるものだ。有効率(レンダブル比率)が高くなればなるほど投資効率が高くなる。

 どうしてこのような有効率の話を持ち出したか。それは、ここ最近、規模的に見て当たり前の施設だったゲストルーム、キッズルーム、フィットネスルームなどが削減されているのではないかと思うようになったからだ。建築費の上昇を表面化させないためにそのような手段が講じられているのではないかという仮説をたてたのが調べることにしたきっかけだ。

 一般的にマンションの有効率は80~85%とされており、不動産経済研究所のテータが70%台で推移している理由がよく分からないのだが、延べ床面積のうち容積率に算入されない共用廊下、エレベータホール、機械室などもあるいは含まれているからかもしれない。

 仮にそうだとしても、図からわかるようにじわじわと有効率が高くなっていることが分かる。2010年には75%前後で推移していたものが、昨年からは80%台になった月があり、この5年間で2ポイントくらい上昇していることが読み取れる。

 これは明らかにゲストルール、キッズルーム、その他コミュニティなどの施設を設けないことで、その分を分譲に回していることをうかがわせる。仮説は正しいことを裏付けるデータではないかと思う。

 一方で、2011年9月と2015年7月はそれぞれ67.6%、68.9%と極端に有効率が下がっている。これは、2011年9月には野村不動産の「相模大野」「武蔵浦和」合わせ455戸の大規模駅前再開発マンションが、そして2015年7月には東京建物の「目黒」第1期603戸が分譲されており、いずれも共用施設が充実しているために数字を引き下げた要因と考えられる。

 共用施設も当然に分譲価格に転嫁されるのだが、大規模になればなるほど1戸当たりの分譲単価の上げ幅は小さくなる。

 有効率を高めることは、一方では一戸当たりの価格や分譲単価を抑制する役割を果たす。その意味で有効率は調整弁的な働きもするが、当然、共用スペースの圧縮による居住性能の低下をもたらす。この先どうなるか。

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 図2は、首都圏マンションの分譲坪単価の推移をやはり不動産経済通信のデータをもとに示したものだ。

 これも明らかに上昇していることがわかる。2010年ころは平均200万円くらいで推移していた単価は2012年あたりから上昇が顕著になり、今年に入って都心の高額マンションが大量に供給されたこともあり、平均で270~280万円へと2010年比で3割から4割も上昇している。

 普通のサラリーマン世帯が無理なくマンションを取得できる坪単価のアッパーは250万円、グロスで言えば20坪(66㎡)で5,000万円、23坪(76㎡)で5,750万円くらいだろうと記者は見ている。今後、単価がどのように推移するか不明の部分も多いが、都心部の富裕層・アッパーミドル層向けはともかく、郊外の第一次取得層向けは取得限界に近づいている。

 だからこそ、先に見たようにデベロッパーは有効率を高めていると見ている。このほか、建築費の高騰を見せかけ状顕在化させないための手段も講じられている。

 もっとも手っ取り早いのが専有面積を圧縮し、設備仕様レベルを下げることだし、これは数年前から顕著になっている。さらに2重床・2重天井を直床にするとか、階高を下げるとか、逆梁ハイサッシを順梁にするとか、間口を狭めるとかなどが頻繁に行われるようになっている。

 間口で言えば、かつては70㎡台の3LDKといえば間口は6200ミリとか6300ミリ確保するのが当たり前だったのが、いまでは6000ミリくらいが圧倒的に多くなっている。

 いうまでもなくこれらの価格圧縮策は居住水準の低下をもたらす。この傾向がどこまで進むのか見守りたい。

 

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