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2015/10/17(土) 00:00

後を絶たないマンション施工不良「設計監理」機能は働いているのか

投稿者:  牧田司

姉歯に懲りたはずなのに 建設業界を侵す宿痾か 

 三井不動産レジデンシャルが分譲した「パークシティLaLa横浜」が築10年にして傾いていることが判明し、大騒ぎになっているのにショックを受けた。

 というのも、このマンションが着工されたのは2005年11月下旬。あの構造計算書偽装問題(姉歯事件)が浮上した2005年11月の直後だ。姉歯事件は2007年の建築基準法改正にまで発展した。業界をあげて再発防止に取り組んだはずだ。なのに、その間に手抜き工事をしていたことになる。信じられない。人間の良心とかモラルなどが通用しない、底なしの根深い宿痾が建築業界を侵していると思わざるを得ない。

 そう思わざるをえない事件、施工不良問題が構造計算偽造問題以降もあとを絶たない。振り返りたくもないのだが、姉歯以降に発覚したマンションの施工不良をざっと紹介する。

 2008年年8月に発覚した「六会コンクリート事件」が記憶に新しい。幸い、構造問題には発展しなかったが、販売中断、工事中断を余儀なくされたマンションは10件くらいあったのではないか。

 大京は2011年8月、東亜建設工業が施工を担当した1997年竣工の「ライオンズマンション京町」で鉄筋不足などが判明して、建て替えることを発表している。

 住宅・都市整備公団(現・UR都市再生機構)がバブル期に分譲して人気になった多摩ニュータウンの「ベルコリーヌ南大沢5-6団地」(5棟146戸)でも施工不良がみつかり、2111年から2014年にかけて建て替えられている。

 この2つの事例は姉歯以前の問題だが、最近では、三菱地所レジデンスが2013年に分譲した「ザ・パークハウス グラン南青山高樹町」の工事不具合が2014年2月に発覚した。

 同社のフラッグシップマンションで、しかも施工が鹿島建設、設計・監理が三菱地所設計であったことから、天と地がひっくり返るような衝撃を受けた。マスコミも大騒ぎした。

 これだけでは収まらない。「南青山」の問題の直後、今度は清水建設などが施工した「I-linkタウンいちかわ ザタワーズ ウエストプレミアレジデンス」(売主は同社のほか三井不動産レジデンシャル、野村不動産、監理は日建設計)に鉄筋不足が見つかり、工事が中断された。

 時をおかずして、大成建設が設計・施工・監理を担当した積水ハウス「グランドメゾン白金の杜ザ・タワー」でも鉄筋不足が見つかり、工事をやり直した。

 まだある。12年8月に清水建設によって着工された三井不動産レジデンシャル「パークタワー新川崎」(設計・監理は松田平田設計)で工事の不具合がみつかった。

 デベロッパーは三井、三菱、野村、ゼネコンは鹿島に清水に大成、設計や監理は日建設計、三菱地所設計、松田平田-わが国を代表する大手ばかりがとうしてこんな不始末をするのか不思議に思っていたら、住友不動産も名がのぼった。

 2003年に分譲した熊谷組施工の「パークスクエア三ツ沢公園」が、建物を支える杭が支持基盤に到達していないことから傾き、建て替えることが昨年10月に報道された。

 これらの不祥事に追い討ちをかけるように今年3月、東洋ゴムによるマンションなどの建物の免震装置で不正が発覚した。「安心・安全」が売りのマンションも「安全」ではないことが分かって「暗然」としたのはしゃれにもならない。

◇     ◆   ◇

 記者は建築業界のことは全く分からない。信じられない事故がどうして起きるのか、その背景、理由について書くことはできない。

 一つ不思議に思うのは、「施工監理」についてだ。施工が設計図通りに進められているかどうかをチェックする重要な仕事だ。だから、単に「管理」ではなく、「見張る。取り締まる」意味を持つ「監理」が用いられているはずだ。

 どこが監理を担当するかは物件選考の重要ポイントだ。記者もマンションの記事を書く際、ニュースリリースに監理会社が記載されているときは極力盛り込むようにしている。「南青山高樹町」「市川」「白金」「新川崎」も全て書いた。

 この4物件については不幸中の幸いか、完成前に不具合が見つかり、是正措置が取られたという意味では「監理」機能は働いていたと理解できる。「LaLa横浜」について記者は記載していないが、リリースにも記載していなかったのではないか。不動産公取協の規約でも広告に監理会社を記載しなければならないという規定はないはずだ。

 不動産の広告に記載しなくてもいいということは、それだけ軽んじられているということにはならないか。昔から建築士業界の側からゼネコンが主張する設計・施工・監理一貫方式に対して、設計・施工・監理を分離すべきという主張がなされているが、流れとしては一貫方式にあるように思う。

 施工不良が後を絶たず、消費者の不安を増大させるようであれば、一定規模以上については分離方式を義務付けることが必要かもしれない。今回の「LaLa横浜」では監理会社の責任も問われるはずだ。旭化成建材と同罪といっては言いすぎか。

 

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