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2015/10/26(月) 00:00

異なる意見を封殺していいのか マンション標準管理規約改正へ

投稿者:  牧田司

 国土交通省は、「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」の報告書がとりまとめられたのを受けて、「マンションの管理の適正化に関する指針」及び「マンション標準管理規約」の改正(案)をとりまとめ、パブリックコメント(意見公募)を開始した。

 ここでは、「マンション標準管理規約(単棟型)及び同コメントの改正案」の管理費に含まれるものを定義した第27条と、管理組合の業務を定めた第32条について、記者の考えを紹介する。

 改正案では次のように記載されている。やや長いが引用する。

 ② 従来、本条第10号に掲げる管理費の使途及び第32条の管理組合の業務として、「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成(に要する費用)」が掲げられていた。これは、日常的なトラブルの未然防止や大規模修繕工事等の円滑な実施などに資するコミュニティ形成について、マンションの管理という管理組合の目的の範囲内で行われることを前提に規定していたものである。しかしながら、「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成」との表現には、定義のあいまいさから拡大解釈の懸念があり、とりわけ、管理組合と自治会、町内会等とを混同することにより、自治会費を管理費として一体で徴収し自治会費を払っている事例や、自治会的な活動への管理費の支出をめぐる意見対立やトラブル等が生じている実態もあった。一方、管理組合による従来の活動の中でいわゆるコミュニティ活動と称して行われていたもののうち、例えば、マンションやその周辺における美化や清掃、景観形成、防災・防犯活動、生活ルールの調整等で、その経費に見合ったマンションの資産価値の向上がもたらされる活動は、それが区分所有法第3条に定める管理組合の目的である「建物並びにその敷地及び附属施設の管理」の範囲内で行われる限りにおいて可能である。

 以上を明確にするため、第27条第10号及び第32条第15号を削除するとともに、第32 条第12号を「マンション及び周辺の風紀、秩序及び安全の維持、防災並びに居住環境の維持及び向上に関する業務」と改めることとした。

 (略)

 ③ 管理組合は、区分所有法第3条に基づき、区分所有者全員で構成される強制加入の団体であり、居住者が任意加入する地縁団体である自治会、町内会等とは異なる性格の団体であることから、管理組合と自治会、町内会等との活動を混同することのないよう注意する必要がある。

◇      ◆     ◇

 改正案は「『地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成』との表現には、定義のあいまいさから拡大解釈の懸念」があるとし、「管理組合と自治会、町内会等とを混同」していることから、混同を避ける意味で、第27条10号及び第32条第15号(その他組合員の共同の利益を増進し、良好な住環境を確保するために必要な業務)を削除するとともに、第32条第12号を「マンション及び周辺の風紀、秩序及び安全の維持、防災並びに居住環境の維持及び向上に関する業務」と改めるとしている。

 その一方で、「マンションやその周辺における美化や清掃、景観形成、防災・防犯活動、生活ルールの調整等で、その経費に見合ったマンションの資産価値の向上がもたらされる活動は、それが区分所有法第3条に定める管理組合の目的である『建物並びにその敷地及び附属施設の管理』の範囲内で行われる限りにおいて可能である」ともしている。

 前段の部分は是非はともかくとして分かりいい。問題は後段の部分だ。極めてわかりづらい。

 例えば街の美観・清掃活動を行い、慰労・懇親会に1万円の経費で酒食を提供するとしよう。この場合、その経費に見合ったマンションの資産価値の向上が実現したかどうかと問われれば、どれだけの人がそれを客観的に証明できるだろうか。結局は、管理費の目的外使用と指摘されるのを恐れてやらなくなってしまうのではないか。「親睦を目的とする飲食の経費などは、マンションの管理業務の範囲を超える」と言われたら、様々な行事はお茶か水だけの(これもただではないが)実に味気ないものになり、すぐに解散ということになりかねない。管理組合は前段と後段の解釈を巡ってジレンマに陥るのは必至だ。役員のなり手不足どころか、やる気をそぐ動きを助長しないか心配だ。

 コミュニティとは何かという根本的な問題もあるし、国が管理組合という集合住宅居住者のコミュニティ活動に足かせをはめていいかどうかも疑問だ。

 多くの管理組合が実施している餅つき、夏祭りはもちろん、わが国では古くから七夕祭り、お月見、クリスマス(最近はハローウィンも加わったようだが)などが年中行事として行われている。これは文化だ。文化がすたれば地域コミュニティは間違いなく崩壊する。

 マンション居住者(管理組合)が、地域のコミュニティにどうかかわるかは居住者(管理組合)の主体的な判断に委ねるべきだ。主体者が自主的に判断する、これが自治だ。多様な管理形態があってしかるべきだし、それぞれの管理組合の創意工夫がそのマンションの市場での価値を高めることにつながると思う。国が細かな点まで関与する問題ではない。

 マンションの資産価値はどうしたら向上できるのかという難問も横たわる。

 ユーザーがマンションを購入する際の選考ポイントとなるのはもちろんそのマンションの基本性能、居住性能だが、それだけではない。周辺の居住環境、地域の防災・防犯意識、そのたあらゆる要素を総合的に判断して決断する。街のポテンシャルが低下すれば、その街に存在するすべてのマンションの資産評価は下がる。

 そうならないよう、街のポテンシャルを向上させるためにも、管理組合は町内会や商店街、PTAなどと共に主体者として行政とも連携を図り、コミュニティ活動に積極的にかかわっていくべきだと考える。マンション単体では資産の維持・向上を図るのは限界がある。

◇       ◆     ◇

 そもそも、今回の「検討会」は多くの現場の多様な声を無視、封殺し、一部の委員のみの意見を反映させたもので、審議は極めて非民主的に行われてきた。

 このことについてはその都度記事にしてきた。オブザーバーの反対意見に対して、「しどろもどろなそんな意見では、わたしの(講義)では不可(単位はやらないという意味か)」と恫喝した委員もいた。 「検討会」は、多くの異なった意見・考えを持つ有識者から意見を聞き、どう調整してとりまとめを行うかが本来の姿だと考えるが、これでは単に「意見を聞き置く」セレモニーに過ぎない。なのに、どうして論議に3年も(2年半の中断あり)時間をかけるのか。

 この2年半の間に何があったのか、記者は知る由もないが、この検討会を主導した人たちは、管理が困難なマンションについては、欧米で採用されている「第三者管理方式」を積極的に導入すべきという論陣も張った。議決権についても専有持分比率だけでは不十分で、価格価値で判断してはどうかという意見も飛び出した。

 仲間意識とか思いやり、絆などは一顧だにせず、ものごとを合理的か否かしか考えない、こういう人たちのことを新自由主義者、ネオリベラリストと呼ぶのだろうかといま考えている。

 

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