RBA OFFICIAL
 
2015/10/28(水) 00:00

流通業界を変えるか 東急リバブル「女性活躍」で劇的に数値向上 野中氏に聞く

投稿者:  牧田司

東急リバブル人事部ダイバーシティ推進課長・野中絵理子氏に聞く

IMG_2908.JPG
野中氏

 「そもそもダイバーシティ推進P.T.を2013年4月に立ち上げたのは、中島(美博氏、現同社会長)が社長時代に『変わり続けることが成長への唯一の道』であることを徹底的に社内浸透させ、女性活躍が経営戦略の一つであることを宣言したからです。P.T.はダイバーシティ推進課となり、この2年半の短期間でできることは全てやりました」-東急リバブル人事部ダイバーシティ推進課長・野中絵理子氏の「できることは全てやった」この言葉に同社の「女性活躍」の取り組みが集約されている。

 その成果は、仕事と子育ての両立支援、キャリア支援、職域拡大など様々な面で数値が伸び、劇的に変化している。

◇       ◆     ◇

 同社の取り組みが社会的にも評価されたことは、先に厚生労働省の平成27年度「均等・両立推進企業表彰」の均等推進企業部門で不動産流通企業としては初めて「東京労働局長優良賞」を受賞したことで証明された。

 同賞は、地域(東京都)において女性の能力発揮を促進するために、他の模範ともいうべき取組を推進している企業を表彰するものだ。

 同社はこの表彰より前の2014年4月に厚生労働省の「子育てサポート企業」としての認定マーク「くるみん」を取得している。制度そのものが異なるので単純な比較はできないが、格から言えば「均等・両立」のほうが高く、応募のハードルも高い。

 受賞企業は、表彰制度が始まった平成19年の15社から27年度は30社(応募は54社)と倍増はしているが、これは各企業の認識が高まったからとみられている。東京都は応募が8社で、受賞したのは同社と協和発酵キリンの2社のみだ。19年度からトータルしても東京都は26社しか選ばれていない。

 受賞理由は、女性活躍を会社の長期戦略の一つとして位置づけ、2013年4月に業界初の専門部署(ダイバーシティ推進P.T.)を設置し、計画的できめ細かな取組みにより成果を上げていることだ。

 具体的には、育児休暇制度の期間延長、産休育休前復職前後の面談フロー、育休中社員の情報交換会、休日事業所内保育(たまプラーザのリバブルキッズルーム)、休日保育費用支援手当、ベビーシッター育児支援、時短制度の不使用期間の繰り越し、産休復帰後の営業職から一般職への職掌転換などにより採用拡大が進んだことが評価された。

 さらに、キャリア支援として女性社員のメンター制、部長メンター制、コース転換した女性社員によるパネルディスカッションなどを積極的に推進してきたこと、また、職域拡大の取り組みとして公募制・ポストチャレンジ・コース転換制度導入(2012年)、東急ハンズ、東急スポーツオアシスとの異業種交流会などによるネットワークづくりの支援も行ってきたことなどが受賞の理由とされている。

 これらの取り組みの成果が劇的に上がっていることも、具体的な数値によって裏付けられている。

 例えば女性総合職採用の拡大。2014年4月は15.9%だったのが、2015年4月は23.6%と10ポイント近く上昇した。

 育児休暇取得・復帰者は2012年が57名だったのが、2014年には107名へとほぼ倍増。売買仲介営業職に占める女性割合は2012年が2.2%だったのが2014年には3.3%へ伸び、男女の退職率格差は2012年の2.6%から2014年は1.3%へと縮まった。チャレンジ・コース転換制度導入も効果をあげており、2013年の女性応募者は3名だったのが、2014年には17名へと5倍以上に増加した。

IMG_2902.JPG

◇       ◆     ◇

 ダイバーシティや「女性活躍」の取り組みは企業トップの役割が大きいということはよく知られていることだが、同社もその例外ではないことが野中氏の言葉でも裏付けられた。

 〝やる気〟が中途半端でないことの例を一つ紹介する。

 「全管理職約500人を対象にダイバーシティマネジメントセミナーを今年の2月から3月にかけて実施しました。セミナーに参加した管理職からは『女性社員も男性と同様に仕事で魂が震えるような成功体験をさせることが上司の仕事』だという講師の言葉に『自分の固定観念に気付いた』、『遠慮や配慮から女性社員には一定の距離を置いていたが、優しさの勘違いだった』など、女性活躍に関して意識が変わったという答えが80.2%、『マネジメントの参考になった』というのが92%にも上りました」と、野中氏は話した。

 今年度は、全女性社員約560名を対象にしたポジティブアクションセミナーを開催しているという。

◇       ◆     ◇

 「女性活躍」は、男性の働き方、意識を変えないと成功しないと記者は考えているのだが、同社はまさにそれを実践しようとしている。

 流通業界の営業マンは夜遅くまで働くというのが通説だ。夜の10時、11時などは序の口、終電まで働くという営業マンをこれまでたくさん取材してきた。夜遅くまで働くのが優秀な営業マンという評価が業界全体に蔓延しているという印象を強く受けてきた。

 現在、同社は会社をあげて長時間労働削減の対策中で、営業マンを含めた全社での20時30分のパソコンシャットダウンを実施しているが、更にスタッフ部門では12月から一時間前倒しでの19:30分となる。

 これだけではない。テレワーク(在宅勤務)のトライアルもすでに終え、制度導入するかどうかの経営層への提案を11月に行うという。さらに「時差出勤、フレキシブルも制度化できるように進めており、来年度以降に運用開始したい」と野中氏はいう。

 「目的は生産性をあげること。会社全体での『働き方改革』によって男性も女性も一人ひとりが自己の成長が図れる会社にしようということです」-野中氏はきっぱりと語った。

 同社が不動産流通業を劇的に変えるかもしれない。

◇       ◆     ◇

 「わたしが入社したのは昭和61年。宅建は翌年取得しましたが、仕事は営業所の庶務業務でお客さまへのお茶出しや給料計算など。3年半やりました。

 その後、賃貸営業や管理のセクションを経て、現職に就くまでは約50人の賃貸部門ブロック長を務めていました。家族は、認知症の84歳の母と夫の3人ですが、仕事を終え真っ先に考えるのは『今日の夕ご飯何にしようかしら』です。それでも子どもはいないので、育児両立社員に比べれば楽ですよ。」

 厚労省のデータによると、6歳未満の子を持つ夫婦と子どもの世帯の妻と夫の生活時間のうち、家事関連と仕事などの時間の長さは、共働き世帯の妻の家事関連時間は5時間37分(うち育児時間2時間8分)、仕事などの時間は4時間19分で、夫の家事関連時間は59分(うち育児時間30分)、仕事などの時間は8時間43分となっている。

 このデータに照らし合わせると、野中氏は子どもがいないが、1日の半分近くを仕事と家事労働に費やす。これに通勤時間などの移動、外出する時の身支度などを差し引くと睡眠時間と余暇に当てられる自分の時間はどれくらいあるのか。

IMG_2910.JPG

 

rbay_ayumi.gif

 

ログイン

アカウントでログイン

ユーザ名 *
パスワード *
自動ログイン