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2015/11/16(月) 00:00

マンション杭打ちデータ流用問題 闇の多重下請け構造浮き彫りに

投稿者:  牧田司

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13日に行われた旭化成の会見(200人近くの報道陣が詰めかけた)

 横浜傾斜マンション問題で旭化成は11月13日、国土交通省に現時点での調査結果を報告。過去10年の3,040物件のうち調査が完了したのは2,376件で、このうち266件でデータ流用などが行われたことを明らかにした。流用に関わった「現場代理人」は50人以上で、すべてが下請け会社からの出向であり、このうちヒアリングが完了しているのは16人であることが分かった。

 高い専門的技術とコンプライアンスが求められる現場責任者が下請け業者に任せられ、工事を監督すべき建築士による監理がずさんなことが浮き彫りになった。

 この日、杭打ち大手のジャパンパイルが18件のデータ流用が行われていたと発表した。

◇       ◆     ◇

 旭化成は国交省に報告書を提出した13日の夕、記者会見を行った。過去10年に施工を行った3,040件のうち当日までに調査を終えたのは2,376件で、このうち266件にデータの流用などが行われたという。データ流用に関わったのは50人以上の同社の下請け会社からの出向社員だった。施工データが存在しない不明物件は118件だった。

 国交省から要請され、優先的に調査した学校、医療・福祉施設の602件は63件でデータの流用などが行われていたことが分かった。

 データ流用が行われた物件については、今後、元請や事業主による建物の安全確認に協力していく。

 今後はデータ流用の有無を確認中の546件については11月24日までに国交省へ報告し、不明の118件についても引き続き調査を継続していく。

 データの流用が行われた背景、動機などについては社内の調査委員会が外部調査委員会の指導や助言に基づいて徹底究明していく。

 データ流用が行われた266件の都道府県別の内訳は東京都51件、神奈川県30件、埼玉県と北海道26件、千葉県23件、愛知県21件。用途別では集合住宅がもっとも多く61件で、都道府県別の内訳は東京都16件、神奈川県12件、埼玉県10件、愛知県8件など。

データ流用に関わった50人以上の「現場代理人」

全て下請けからの出向社員

 会見に臨んだ平居正仁・同社調査委員長は「真相を解明すべく調査中なので、外部調査委員会などへの予見を与えたくない」とデータ流用が行われた背景、原因などについて核心に触れる発言はしなかったが、建設業界の多重下請け構造の暗部が浮き彫りになった会見だった。

 10年間で確認ができた2,376件のうちデータ流用があったのは11.2%に当たる266件だ。これが多いか少ないか判断材料はないが、建物の「安心・安全」に関わる工事で10件に1件以上の割合で〝不正〟があったというのは衝撃的だ。

 同社の報告に対して、石井啓一・国交相は「これほど多くのデータ流用が行われていたことは、極めて遺憾」とコメントした。

 「現場代理人」というのも不可解な存在だ。現場の最高責任者である人が、どうして下請けからの出向社員でいいのか。

 この現場代理人は、国家資格である施工管理技士と思われるが、施工管理技士は建築士や宅建士と異なり、業務上過失・規定違反を行っても法的な罰則規定がない。これも不思議だ。

 また、データ流用に関わった現場代理人からヒアリングが済んでいるのは50人以上のうち16人という数字にも驚いた。30人以上の人が所在不明などでヒアリングができていないという。

 ヒアリングは任意で法的な強制力はないにしろ、現場代理人には自ら進んで調査に応じるという倫理観はないのか。コンプライアンスの意識はないのか。職場を転々と渡り歩いている人なのか。深くかかわっていたのはごく少数のようだが、この人たちがいまも同じ仕事についていると思うと怖い。

 杭打ちデータを流用した理由は、データを計る機器のスイッチを入れ忘れた、雨に濡れてデータが消えてしまった、どこかに紛失したなどという。これまた信じられないお粗末なものだ。そんなミスを犯しても、きちんと報告・連絡・相談されていなかったことも明らかになった。

 このような実態は業界全体で常態化していることもうかがわせた。不具合を未然に防止する重要な任務を課されている設計・施工監理者がきちんとチェックしていない実態が浮かび上がった。

 この点について、平居委員長は「(今回の)監理は元請が行っている。この監理責任についてわれわれはコメントする立場にない」と明言を避けたが、国交省や横浜市からの要請を受けて資料を提出していることを明らかにした。

 横浜傾斜マンションについては、三井住友建設との不協和音も伝わっってきた。

 横浜の傾斜マンションでは、施工会社の三井住友建設が監理も担当しているが、三井住友は先の会見で自らの監理責任を否定した。

 今回の件では6本の基礎ぐいが支持層に未達とされているが、旭化成は「現場担当者は支持層に届いていると思っていると言っている。実際はどうなのか、施主の三井不動産レジデンシャルさんや三井住友建設さんに引き続きボーリング調査をお願いしていく」などと話した。

 なぜ、なぜ、なぜ-約2時間の記者会見で感じたのは「なぜ」ばかりだった。平居氏は何度も真相解明を口にした。闇の多重下請け構造にメスが入れられることを祈るばかりだ。

横浜傾斜マンション問題 どこも〝安全宣言〟を出せないのはなぜか(2015/11/16)

 

 

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