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2015/11/17(火) 00:00

建築の魔術師・青木リファイニングの真髄を見た 「竹本邸」完成見学会

投稿者:  牧田司

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「竹本邸」

 青木茂建築工房は11月17日、同社が設計・監理し、このほど完成した多摩市一ノ宮の「竹本様邸リファイニング工事」完成見学会を行った。

 プロジェクトは、昭和44年に建てられた診療所併用住宅と、昭和50年に増築された建物を2世帯住宅へ用途変更・増築を行い、耐震補強をリファイニング手法で再生するもの。

 オーナーの意向を受け、既存2棟を一体化し、耐震・耐久性を確保したうえで、1階ピロティを室内化、2、3階のバルコニーの新設、内装外装の一新、床段差解消・エレベータ新設によるバリアフリー化、現行法令へ適合させるための各種工事などを行った。

 見学会で挨拶した青木茂・同社代表は、「オーナーご夫婦、オーナー長女ご夫妻とお子さん、そのご主人のお母さん、オーナーの次女の4家族が住む住宅で、建築費が上昇する中で予算が予定の約3割アップしているが、オーナーとの打ち合わせで予算を修正して再契約した。それからはほとんどオーバーすることなく完成してほっとしている。難しい法規制をクリアするようアクロバチックな手法をたくさん用いた」と話した。

 既存建物は検査済証が存在せず、建設時以降に施行された昭和50年の第二種高度地区指定による高度斜線制限、昭和52年の日影規制について既存不適格となっていたが、平成26年7月施行の「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」に従い、建築基準法適合状況報告、12条5項報告、許可申請、建築確認申請などを約7.5カ月かけてクリアした。

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青木氏

◇      ◆     ◇

 青木氏が「アクロバチック」と

割りいう言葉で表現したように、難しい法規制を魔術師のように突破したことがすごい。改めて青木リファイニング建築物の真髄の凄さをみた。

 一言で言えば、更地にして建て替えた場合、クリアできない既存不適格部分(建ぺい率・容積率、斜線制限など)をそのまま残し、建物は耐震性・耐久性を確保し、新築よりコストを大幅に削減したことにより、建物の価値を従前よりはるかに上昇させたということだ。

 見込み違いもあったようだ。当初、確認申請まで4カ月で済むという計算が狂い、7.5カ月も掛かったことだ。建築費がどんどん上昇しているときだったので、青木氏も心配したそうだが、「オーナーに事情を説明し納得していただいた。追加工事費は仕様レベルを上げたにも関わらず約30万円で済んだ」という。

 既存建物を一体化させた痕跡はほとんど見当たらない。唯一発見したのは階段だった。1階から2階へ、2階から3階への階段のステップは14段だったが、3階から4階は15段だった。これは、階高の差によるものだ。

 唯一の難点だと思ったのは廊下・階段幅が尺モジュールになっていたことか。青木氏は「幅は広げられなかった」と語った。

◇      ◆     ◇

 青木氏は見学会で、「住宅は赤字になるのでやりたくないが、頼まれると断れない。新しい本も出版したが、みんな研究費に消える。僕は原稿料ももらっていない。」とこぼし、見学者を笑わせた。注文が殺到し青木氏がお手上げ状態になれば、行政も動き、継承者もどんどん育つのではないか。

 もう一つ。青木氏は「(建築)主事によって解釈がみんな異なるが、肝心なのはすべて考えを聞いて、それに沿うことだ」と語った。杭打ちのデータ流用が社会問題となっているいま、ものすごく貴重な言葉だ。

◇      ◆     ◇

 日本建設業連合会の「第56回BCS賞」の授賞式が11月16日に行われた。青木茂建築工房がリファイニングした「北九州市立戸畑図書館」も受賞作の一つで、「あべのハルカス」「JPタワー」「資生堂銀座ビル」など14作品が表彰された。

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バリアフリーになっているエントランス

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2階キッチン

 

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