「マンションの豊かな未来への提言」(日比谷コンベンションホールで)
マンションコミュニティ研究会(廣田信子代表)が11月14日、設立5周年記念のフォーラム「マンションの豊かな未来への提言」を開いた。
同研究会は、「人の生死に関わる場面、大きな災害時に機能するコミュニティのセーフティネットをマンションに築いていくための活動をする」のが目的で、今回は千葉大学大学院教授で日本マンション学会前会長の小林秀樹氏、全国マンション管理組合連合会(全管連)会長・山本育三氏、弁護士・篠原みち子氏、有明マンション連合自治会会長でブリリアマーレ有明理事長・星川大輔氏らがそれぞれの立場からマンションの未来について提言をおこなった。
小林氏は、マンション管理を①テリトリアリティ②ガバナンス③軽い相互扶助-の3つの観点から持続的管理とは何かを解き明かした。
山本氏は、全管連が提唱する「マンション再生法(仮称)」の概要を紹介。マンション建替え円滑化法では欠けている長寿命化の視点から持続可能な社会の構築を目指そうと訴えた。
篠原氏は、これまでのマンションの歴史と課題について触れ、マンション管理会社が管理組合のよきパートナーとして提案力を持つ重要性を説いた。
星川氏は、ほとんど住民のいなかった有明地区で初代の管理組合理事長を務めながら近隣のマンション管理組合と連携しながら地域の自治会を設立。〝日本一住みたいマンション〟にするべく活動していることを報告した。
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ここでは各氏の講話を一つひとつ紹介しないが、いずれも興味深い話ばかりだった。この4氏とコーディネーターとしてパネルディスカッションに参加した廣田氏の話題は当然マンション標準管理規約の改正にも及んだ。それぞれパネリストの声を紹介する。
小林氏 管理組合と自治会の混同を避けるべきというのは当然。役割のちがいをよく認識して客観的に説明できることが肝要。基本的には管理に必要なコミュニティ活動はやっていい。問題が生じたら篠原さんのところに駆け込めばいい(爆笑)
山本氏 あれ(改正案)をそのまま論議なしにコミュニティ条項を削除するところはないのではないか。改正案は経済合理性だけを念頭に置いており、広く合意形成を図るための十分条件ではない。区分所有法の改正も考えていい。再生法をおおいに広めていただきたい
篠原氏 改正されても今まで通りでいい。〝共有は紛争の母〟という言葉があるが、きちんと問題を整理してコミュニティも淡々とやればいい。マンションの価値は交換価値だけで計れない
星川氏 多くの管理組合はコミュニティ条項のことなど知らない。われわれはわれわれの方法でコミュニティ活動を行っていく。楽しくやろうということです(一連の活動でブリリアマーレ有明は中古市場で地域ナンバー1の評価だとか)
小林氏 千葉市は、自治会に加入したくない人を名簿から外して届け出れば管理組合を自治会として認めている
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記者は、マンションコミュニティ研究会の趣旨に賛同してこれまで何回か勉強会にも参加してきた。研究会のホームページの紹介には次のような文章がある。
「『村八分』という言葉があります。村の約束事を守らなかった家との付き合いをやめ孤立させるという、農村社会における濃いコミュニティの残酷な一面を表すものです。と同時に、どんなに仲間はずれの状況でも、二分は例外で助けるという決まりだったのです。その二分とは、お葬式と火事の時です。
現在は、周りと共同しなくても生活できる便利な社会ですが、しかし、どんなにがんばっても人は一人では生きられないし、最後の後始末も自分ではできません。
核家族が当たり前、単身者も増加し、高齢化、高齢独居も今後ますます増える状況で、マンションにも、二分のお付き合いは絶対に必要です。
現代の二分は、『孤独死を防ぐ』『大災害時の助け合い』ではないでしょうか」
誤解を恐れないで書く。「村八分」は権力者が住民を統治する手段として利用してきた側面が大きいのだろうが、住民もまたそれで自治(コミュニティ)を学んだ。地域それぞれの冠婚葬祭が独自の文化も育んできた。みんなが決めたことを守らなければ、その組織からはじき出されるのは当然だ。
その地域の住民がよしとした社会規範は住民の自決権として認めるべきで、国が関与すべきでないと考える。
マンション標準管理規約からコミュニティ条項の削除に対してどのようなパブリックコメントが寄せられるかものすごく興味がある。国交省はパブコメを「聞きおく(参考にさせていただく)」にとどめるのだろうか。