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2015/12/06(日) 00:00

コスモスイニシア オーナー、建築家、施工、入居者と五重奏の賃貸戸建て「新座」

投稿者:  牧田司

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建築中の「CUBE17~じゅうなな~(キューブジュウナナ)」

 コスモスイニシアは12月6日、コミュニティ形成支援付賃貸戸建住宅「CUBE17~じゅうなな~(キューブジュウナナ)」のメディア向け説明会・構造見学会を行なった。転貸する同社をはじめ事業主の環境開発研究所、設計の島﨑義治建築設計事務所、施工の藤島建設の思想とノウハウを結集した四重奏(カルテット)であり、入居者参加型という意味では五重奏(クインテット)のかつてない賃貸戸建てといえるかもしれない。

 物件は、JR武蔵野線新座駅から徒歩12分、新座市大和田に位置する開発面積約2,400㎡、全17区画。一戸当たり土地面積117.70~163.00㎡、建物面積75.89㎡。構造は在来工法2階建て。入居開始は平成28年3月。賃料は未定だが、13万~14万円/月で検討されている。

 プロジェクトは、事業主の環境開発研究所(埼玉県新座市)の「野原の中に家があるような、風通しの良い街を残したい」という思いに共感した島﨑義治建築設計事務所(東京都文京区)が基本・実施設計を行い、コーポラティブハウスとコモン付賃貸住宅などコミュニティがキーファクターの住宅を提供しているコプラス(東京都渋谷区)が監修。施工は藤島建設(埼玉県川口市)で、構造材や内外装材に国産材を採用する。

 敷地内の無電柱化を図り、敷地境界柵・塀を設置しないでゆるやかに住宅をつなぎ、一戸一戸の住宅の向きを変えることでプライバシーにも配慮し、住宅の構造材には100%国産材を採用、1階床はヒノキの無垢材、天井高は約2.8mのカラマツの現しを採用するなど環境にも配慮しているのが特徴。

 コスモスイニシアは8,900戸を超える賃貸運営事業の実績と、住宅分譲事業で行なっている入居者同士のコミュニティ形成支援で培ったノウハウを生かす。入居後もコミュニティサポートを行なっていく。

 現地で挨拶した同社賃貸事業部事業推進部部長・塩見良二氏は、「オーナーの〝囲いのない公園の中にあるような街を作りたい〟という思いに島﨑さんが共感され、私どももマンションなどて進めているコミュニティ支援の取り組みは賃貸でも同様に重要だと共感して実現したプロジェクト」と話した。

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イメージ図

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模型

◇    ◆   ◇

 これ以上ないレベルの高い賃貸住宅だろう。敷地のオーナーでもある環境開発研究所社長・奥田栄氏の〝こだわり〟がなければ、なにかにつけ(とくに心が)豊かでないと実現しないプランだ。

 配布された資料によると、奥田氏は1949年生まれで、地元で300年の歴史を持つ奥田家の後継者のようだ(農地解放でどれだけの土地が残っていたのか)。東京工大大学院から同大学助手-日立製作所研究員-人間環境大教授などを経て環境開発研究所代表取締役に就任している。

 基本・実施設計を担当する島﨑氏は1956年生まれ。京大大学院工学研究科を終了したあと内井昭蔵建築設計事務所勤務を経て、現在、人間環境大教授を務める。

 この二人の経歴でもわかるように同じ大学で教鞭をとっていることと、コスモスイニシアのサポートが加わったことがプロジェクトの実現につながったようだ。

 一つひとつは書かないが、わずか17棟しかないのに無電柱化し、敷地中央に6m幅の道路をつけ、敷地境界柵を取り払い、構造材に岩手県葛巻町の100%国産材を用い、外壁には防火下地処理を施した上でカラマツの下見板を張り、床はヒノキのフローリングとし、2.8mの天井を現しにする-こんな賃貸住宅を郊外に建てるオーナーなどいないはずだ。

 敷地境界の柵を取り払った分譲戸建てとしては、横浜市住宅供給公社の定期借地権付き「十日市場」や、タカラレーベンの「大泉学園」がある。

 奥田氏は配布資料にある島﨑氏との対談記事の中で次のように語っている。

 「高度成長期以降、家の周りをブロック塀で囲むことが流行りだして、いまや囲いを作ることが当たり前になっている。セキュリティの面で言えばそれも当然だとは思いますが、囲いを作って守ることがむしろ犯罪の目隠しにもなりかねない。一見無防備のように感じられる囲いのない家のほうが、住民の目が届く可能性が高いですし、それが最大のセキュリティにもなるように思います」

 これに対して島﨑氏は次のように述べている。

 「(奥田さんの)考えは自分の考えに近かったので、深く共感しました。国木田独歩の小説『武蔵野』…その風景の面影はどこかに残したいと、新座の地に降り立った瞬間に思いました」「作り手がしっかりとした意思を持って住まう場所を創造しないと、住まい継がれるような名作は生まれない。このコミュニティを設計するにあたり、私はそんな想いを込めてイメージを具現化していきました」

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奥田氏(左)と島﨑氏

◇    ◆   ◇

 施工を担当する藤島建設は、島﨑氏によると「施工会社を選定するにあたり募集をかけたところ、手を挙げてくださったのが、国産材での住宅建設を得意とする藤島建設でした」とある。

 この藤島建設については分譲戸建てを見学して改めて紹介する。

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工事中の建物(天井の現し部分がよくわかる)

 

 

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