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2015/12/13(日) 00:00

杭打ちデータ流用問題 「信頼回復」のカギは監理機能の厳格運用

投稿者:  牧田司

 先日、三井不動産の「ららぽーと立川立飛」のプレス内覧会が行なわれた日、「いなげや」の旗艦店「blooming bloomy by Inageya」で「紅化粧」という名の皮が赤い128円の大根を買ったことは書いた。かみさんは、それをいちょう切りにして酢漬けにしてくれた。これがおいしい。カブより歯ごたえがあって、なにより白と赤のコントラストが美しい。

 「紅化粧」はあきる野市の農家の産であることがラベルに記されていた。生鮮食品に産地や生産者の名前が表示されるのは常識になった。産地直送も消費者の間で定着した。

 消費者は生産者の〝顔〟が見えることに「安心・安全」が担保されているから多少値段が高くても買う。

 食の分野にとどまらずあらゆる企業にとって「CAT」、つまり「Compliance」(法令順守)「Accountability」(説明責任)「Traceability」(追跡可能性)がもっとも重要で、これと企業の理念「Vision」あるいは「Philosophy」を加えた「CATV」「CATP」がしっかりしていないと立ち行かなくなる。

 さて、杭打ちデータ流用問題。昨日も書いたように、問題が発覚してから2カ月で収束する見込みだ。記者も大事に至らなくて安堵している。国交省、対策委員会、業界団体、施主の迅速な対応は評価されるべきだろうし、この点では「CAT」はきちんと機能したと思う。

 しかし、消費者の信頼を回復する道のりは平坦ではない。深尾・対策委員長も語ったように、「安心・安全」に「信頼」を加えるのは正解だろう。

 杭打ちデータ流用は業界の多重下請け構造とは直接的に関係ないとはいえ、建築物の「安全・安心」は大きく揺らぎ、危うい橋を渡るような覚悟がいることを消費者に印象付けた。先の「CAT」と照らし合わせても、この業界は極めてずさんであることを露呈した。「雨に濡れた」「噴出した」「ボタンを押し忘れた」-このような理由で大事なデータを集められないという事態がそんな頻発するものなのか。

 農家は128円のダイコンにさえ1本1本自分の名前を書いたシールを貼る。建設業だって、設計図はミリ単位の精度が求められ、それをきちんと監理する制度があるにもかかわらず、形式が整っていればよしとする風潮があるというのはどういうことか。全く理解できない。「監理」がその程度のものならその程度のものであることを世間に公開するか、そうでないのなら厳格に運用すべきだし、監理者になれる要件や罰則を強化すべきだ。

 考えてみれば、マンションの広告・宣伝は、建設に関わる施工・監理・設備機器にかんする情報は実にそっけない。われわれはデベロッパー、施工会社、監理会社、使用されている機器のメーカーの名を聞けばその物件のレベルがある程度分かる。しかし、一般の消費者は物件概要やパンフレットに盛り込まれているこれらの情報を読んでその品質レベルまで理解することはできないだろう。

 物件概要に監理会社を表示しなくても、広告表示に関する業界の自主規制違反にはならないのだが、記者はもっともこの「監理」が重要だと考えている。オーケストラで言えば指揮者、コンダクターだ。指揮者が音楽に命を吹き込むように、マンション監理者もまた消費者の「信頼」を得る生命線だ。

 記者は今回の問題が起きたのは、この「監理機能」が働いていないことが根本原因ではないかと思っている。

杭打ちデータ流用問題 結局は大山鳴動…早々に幕引きへ 国交省・対策委(2015/12/12)

 

 

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