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2015/12/17(木) 00:00

新国立競技場 隈氏のA案か伊東氏のB案か 木造ファンの記者はもちろんA案

投稿者:  牧田司

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A案(技術提案書よりJSC提供)

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B案(技術提案書よりJSC提供)

 新国立競技場の技術提案書が日本スポーツ振興センター(JSC)から発表された。応募したのは2つのグループで、A案は隈研吾氏・大成建設・梓設計、B案は伊東豊雄氏・竹中工務店・清水建設・大林組・日本設計によるものと報道されている。

 案が公表されてから、様々な形で報道されているので詳細は省くが、双方とも素晴らしい。わが国を代表する建築家とスーパーゼネコンの競演となるわけで、これ以上の舞台はない。

 個人的には国産材のスギやカラマツがふんだんに用いられているA案に賛成だが、デザイン的には1辺が1.3~1.5mもある四角のカラマツの集成材72本を列柱として配したB案も捨てがたい。双方のいいと取りをしてほしいのだが、そのようにはならないのが残念だ。

 さて、どちらが採用されるか。以下は木造ファンの記者の独断と偏見の予想記事だ。

 われわれ素人は公表されたデザイン(完成予想図)で判断するが、JSCは①業務の実施方針(20点)②事業費の縮減(30点)③工期短縮(30点)④維持管理抑制(10点)⑤ユニバーサルデザインの計画(10点)⑥日本らしさに配慮した計画(10点)⑦環境計画(10点)⑧構造計画(10点)⑨建築計画(10点)-の9項目(満点は140点)に係数をかけて採点する。外観デザインや「日本らしさ」などは配点が少ないので、これがどう影響するか。そもそも「日本らしさ」とは何ぞやと問われて明快に答えられる人などいないはずだ。

 とはいえAかBか、JSCは決着をつけなければならない。選ぶのは次の7名からなるJSCの技術提案等審査委員会だ。

審査委員
秋山哲一・東洋大学教授
工藤和美・建築家/東洋大学教授
久保哲夫・東京大学名誉教授
香山壽夫・建築家/東京大学名誉教授
深尾精一・首都大学東京名誉教授
村上周三・東京大学名誉教授(審査委員長)
涌井史郎・東京都市大学教授
           (50音順)

 この委員のうちA案を熱烈に支持するのは涌井氏だ。他の先生方は建築が専門であるのに対し、涌井氏の専門はランドスケープデザイン。森林・林業の荒廃を憂慮されており、国産材が多用されているA案に肩入れするのは間違いない。最近はテレビのコメンテーターとしても活躍されており、話術も巧みだ。正攻法でもからめ手でも相手を説き伏せる。

 他の方はわからない。香山氏や工藤氏も木を用いた作品をたくさん造られているが、選択に迷うのではないか。涌井氏に丸め込まれるような人でもなさそうだ。

 秋山氏は構造が、久保氏は耐震がそれぞれ専門だ。シンプルで施工がしやすいと思われるB案を選ぶかもしれない。総工費は双方とも1,500億円弱だが、A案の工期は36カ月で、B案は34カ月。B案のほうが2カ月短い。これは明らかにB案が勝る。A案支持者はこれをどう反駁するか。森林の効用を涌井氏はぶつはずだ。

 深尾氏はニュートラルの立場を貫くのではないか。あの杭打ちデータ流用問題では、国交省・対策委員会委員長としてわずか2カ月で対応策をまとめ挙げたように、うまく収めようとするのではないか。

 こうしてみると、A案もB案も甲乙つけがたく、がっぷり四つに組んだまま勝敗が決まらない場面も十分予想される。

 となると、審査委員長を務める村上氏がキャスティングボートを握る。村上氏は現在、建築環境・省エネルギー機構の理事長を務めており、ことあるごとに省エネ、サステナブルを口にされる。やはり鉄やコンクリより木を愛されているはずで、Aに軍配を上げると見た。よって評決は4:3でA案の採用が決まる。

 森喜朗会長のコメントに左右される委員ではないだろうが、少なくとも国民は逆にA案支持に回るはずだ。「森さんは(自分が嫌われるのを承知のうえ)A案に支持が集まるように発言したのでは」とうがった見方をする人もいるが…。

 明日(18日)は、隈研吾氏がデザイン監修した三井不動産レジデンシャルの「パークコート 赤坂檜町ザ タワー」を見学する。素晴らしいマンションだろうから、きちんとレポートする。

◇       ◆     ◇

 JSCから新国立競技場の技術提案書が公表された翌日12月15日夕、農林水産省は林業関係9団体の長らと意見交換を行った。農水省側からは森山農林水産大臣をはじめ伊東副大臣、齋藤副大臣、加藤政務官、農林水産事務次官、農林水産審議官、大臣官房長、総括審議官、林野庁長官、林野庁林政課長が出席した。会議は非公開で行われた。

 記者はてっきり「和の大家」隈研吾氏らのA案が選ばれるための決起集会だと判断した。

 この年末の忙しい時期に9団体の長と大臣や事務次官などが会合を持たなければならない緊急の事案はほかにないはずで、A案の採用を突破口に森林・林業の再生・活性化の動きを加速させようという狙いだろうと読んだ。

 ところが、会議に同席した林野庁の担当者は、「たまたま時期が重なっただけ。会議の冒頭、大臣が『木の案が出されてよかった』というようなことをおっしゃったが、A案が採用されることを企図した会議では全くなかった」と否定した。

 

 

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