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2016/01/18(月) 00:00

空き家対策 喫緊の課題ではあるが難問も山積

投稿者:  牧田司

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ある首都圏の郊外団地

 空き家対策が喫緊の課題となっている。国土交通省は来年度の重点施策の一つとして、「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空き家法)に基づく地方自治体や民間が取り組む空き家対策を支援する空き家対策総合支援事業費として20億円の予算を計上する。

 現在、全国で820万戸(総務省データ)あるといわれる空き家は、野村総研のシナリオによれば、何も対策を講じなければ、2023年には総住宅数約6,640万戸のうち空き家数は約1,397万戸、空き家率は21.0%にまで増加する。そうならないための施策が空き家法だ。

 空き家法は、「雑草・悪臭など衛生環境悪化」「景観の悪化」「不法侵入などによる治安の悪化」「生命・身体への被害のおそれ」などを回避するため、緊急避難的に「特定空家」に指定し除却、修繕、立ち木などの伐採を行い、環境の保全を図るとともに、空き家の活用に結び付けようという法律だ。

 しかし、国や自治体、あるいは民間がどれだけ躍起になって空き家対策に力を入れようと、人口減少・世帯数減少、世帯の高齢化、地域経済・地域コミュニティの崩壊など現在進行形の厳しい環境を考えると、悲観的な考えにならざるを得ない。

 確かに緊急避難策として「特定空家」の指定は、予防策・抑止力として一定の効果を上げるかもしれない。「空き家バンク」制度の拡充も一つの処方箋ではある。

 とはいえ、①倒壊等著しく保安上危険となる恐れのある状態②著しく衛生上有害となる恐れのある状態③適切な管理が行われていないことにより、著しく景観を損なっている状態④その他周辺の生活環境の保全を図るために、放置することが不適切である状態-をどのように特定するのかの課題は残る。代執行も容易ではないと思う。除却費用の一部を自治体が補助するのも、税の公平性からいって住民の支持を得るのは難しい。

 各種の調査でも明らかになっているように、そもそも空き家が多く発生しているのは中心市街地では木密地域の狭小住宅であり、郊外部では通勤・通学に不便な立地や、生活利便施設に乏しい地域だ。狭小住宅では、接道義務違反の再建築不可の物件も相当数あるはずだ。

 仮に空き家を除却して更地にしても、固定資産税が最大で6倍になる可能性がある。これは空き家の解消、流通促進の本来の目的とは逆に作用しかねない。

 さらに言えば、相続放棄・遺棄の問題だ。空き家のままで放置している住宅のうち除却しなければならないほど深刻な状態になっているのは、所有者や相続人に除却費用や固定資産税などの負担が重荷になっている人が少なくないからだ。

 相続を放棄したからといって管理責任はまぬかれないが、管理義務を遺棄したらどうなるのか。空き家法では市町村長の命令に違反した場合は50万円の、立ち入り検査を拒んだ者には20万円のそれぞれ「過料」が科せられるが、「特定空家」のもたらす弊害と天秤にかけた場合、罰則は軽すぎないか。

 空き家問題の解決を阻む問題はまだある。空き家に残る家財道具・遺品の整理がつかないという問題だ。家財道具、骨とう品、書籍、車…これらの処理をワンストップで行う仕組み・ビジネスモデルが待たれる。遺品整理ビジネスは、空き家の処分・流通を含めれば100兆円、200兆円規模に上るのではないか。

 もう一つ気掛かりというか、これが一番大切だと考えているのだが、空き家法は「特定空家」などを除却することに力点が置かれていて、表層だけを取り繕うとしているようにしか見えない。空き家を生じさせないビジョンが著しく欠けているのではないかということだ。

 空き家が発生してもすぐに次の住まい手が現れるような、誰もが移り住みたくなるような街づくりを描くのが先決だ。街の再生・活性化の羅針盤ともいうべきタウンマネジメントの活用は必須要件だ。用途変更によるインセンティブ、あるいは逆に私権の制限も必要かもしれない。

 また、危機に瀕している地域コミュニティをどう再生するか、その旗振り役ともいうべき人材の育成が欠かせない。

◇       ◆     ◇

 「田舎暮らし」をバラ色に描き、喧伝する不動産業者とちょうちん持ちのマスコミがあるが、「都会の憂鬱」があるように「田園の憂鬱」もある。都会でまっとうな生活ができない団塊世代の落伍者が、都会より厳しい自然環境、人間関係が待ち構える田舎で再生できるとは思えない。

 田舎に移り住もうと考えている人は、もう一度立ち止まってよく考えてほしい。「田舎暮らし」を推奨する人たちには、田舎に移住して3年持たずにまた都会へ舞い戻る人がどれくらいいるかのデータも示してほしい。

セカンドライフは田舎暮らしより都会 三井不販のアンケート(2011/9/8)

限りなく限界集落に近い首都圏の郊外団地 人口4割減(2012/7/27)

 

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