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2016/01/27(水) 00:00

「里山でシゴトする!」 キックオフ・イベントに約140名 NORA

投稿者:  牧田司

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「まちの近くで里山をいかすシゴトづくり」(横浜市市民活動支援センターで)

 「里山」をキーワードに様々な活動を展開している特定非営利活動法人よこはま里山研究所(通称称:NORA、理事長:松村正治・恵泉女学園大学准教授)が主催したワークショップ「まちの近くで里山をいかすシゴトづくり」を見学・取材した。

 「都市近郊の里山生態系を保全しつつ、里山資源を有効に活用することで、持続可能な共生社会の構築を試みるプロジェクトのキックオフ」として位置づけられたこのイベントは1月13日(水)と1月20日(水)、2週連続で行われ、延べ参加者は約140名にのぼった。

 記者が取材したのは20日のみだったが、会場の横浜市市民活動支援センターは60~70名の参加者であふれかえっていた。年代は20代から60代まで幅広い層にわたり、男女比は半々。記者のようなネクタイ、スーツ姿の人は皆無だった。「里山でシゴトする!」ことは、結果をすぐ求める、コストを最優先するサラリーマン的発想ではできないからだと理解した。

 さて、「里山」は、記者は勝手に人間界と獣界の共存界、分水嶺のようなところで、わくわくするような宝の山でもあると理解しているのだが、最近は「里山」が獣類に侵され、人間は檻の中でしか生きられなくなってきたのに絶望もしている。しかし、ここでは「里山」の定義だとか、林野庁がいつも使う「里山林」とどう違うのかはさておく。藻谷浩介氏の『里山資本主義』(角川新書)が大ヒットし、「里山」が一部の人たちのものでなくなったことは歓迎すべきことだと思う。

 とても面白かったのは、参加者が「里山で農福連携」「地域とつながる」「環境教育」「薪・木質バイオマス」「畑」などをテーマにグループに分かれて話し合う「グループワーク」だった。記者は聞き眺めていただけだが、考えるヒントをたくさん提供してくれた。例えば「木材」がテーマのグループワーク。「広葉樹が不足している」ことが話題になった。

 記者が生まれ育った田舎の川は水量が激減し、面白いように獲れたアユもモクズカニもほとんど姿を消した。川と山の関係はよくわからないが、戦後、わが国は雑木林をスギやヒノキの山に変えたことと無関係ではないのではないか。

 スギやヒノキの山はしっかり管理すればきれいではあるが、かん養機能、渇水・洪水防止機能を著しく低下させていることは容易に想像できる(針葉樹より広葉樹のほうが保水力が高いということに対しては異論もある)。棚田がなくなったのも関係しているはずだ。そういえば、昔は地元で採れたケヤキ、サクラなどの広葉樹が家具や住宅に当たり前のように用いられていたが、今はすっかりなくなってしまった。

 そのスギやヒノキは伐採期を迎えているにも関わらず、様々な理由で放置されている。打ち捨てられた間伐材が洪水時に街を襲うことがしばしばある。

 さらに驚いたのは、参加者が意欲満々だったことだ。「里山」に興味・関心のある人がほとんどというのは当然だろうが、「里山をシゴトにしたい」人が20人くらいいて、「里山が専業」の人が10数人もいたことだ。「副業」の人も4~5人いた。

 「里山」が仕事になるはずがないと記者は思っているのだが、そうではない可能性を秘めていることも報告された。

 一般社団法人まちやま代表理事の塚原宏城氏もそうだ。塚原氏は1979年生まれで、北大を卒業後、札幌市役所に7年間勤務したあと、国際自然大学校へ転身。そして2015年に独立して、まちやまを設立した。

 〝売り手・買い手・里山よく〟の「三方良し」を掲げる塚原氏は、笹が生い茂り荒れ放題となったままの町田市郊外の「里山」の所有者に話を付け、「笹でつくる!ティピー&ミニバウムクーヘン」の体験イベントを行った。刈り取ったササでインディアンが使っていたテント型住居「ティピー」と、ミニバウムクーヘンを作るイベントだ。親子一組3,000円、定員20名で参加者を募ったところ、8組19人が集まったという。先日の1月17日だ。

 笹やぶをきれいにする作業はやったことがないが、お金をもらってもやりたくない。大きくなったササはしぶとく、刈り取るのは容易でない。真冬にわざわざ3,000円も払って参加する人がいるのが信じられない。塚原氏はそのようなニーズがあることを活動の中から発掘したのだろう。

 このほか、NPO法人ナチュラルリングトラスト副代表・小出仁志氏、認定NPO法人自然環境復元協会・伊藤博隆氏、多摩市グリーンボランティア森木会・高澤愛氏、株式会社FIO代表取締役・舩木翔平氏がそれぞれ里山資源をいかすシゴトについて事例紹介した。

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グループワーク

◇       ◆     ◇

 取材を申し込んだのは、NORAがどのような活動を行っているのかこの目で確かめたかったのと、松村氏が年初のNORAのメルマガで〝里山でシゴトする!〟を宣言し、並々ならぬ決意を込められていたのに興味をそそらされたからだ。

 松村氏はコラムで次のように述べている。

 「NORAは、約15年前にNPOを立ち上げたときから、『里山でシゴトする!』ことをキャッチフレーズとして掲げ、これを実現しようとしていた。…しかし、十分に戦略を練る余裕もないままに、『シゴトする』こと自体が次第に目的化してしまった。その結果、設立後7年目には、NPOとしての目的を果たすことができず、軌道修正を図ることになった。…この方針転換から、さらに約7年の月日が流れた。…都市近郊の里山に目を向ければ、特に若手を中心に、人と里山をつなぎ、新たな仕事を創出しようとする動きが広がっているように見受けられる。

 NORAとしては、こうした動きの輪に加わり、あらためて『里山でシゴトする!』ことにチャレンジしたいと思っている。…ここには、(里山を)『いかす』(生かす・活かす)ということを深く考えたいという気持ちが働いている。
 (都市近郊の)人びとに向けたレクリエーション・教育・医療・福祉などのサービスを、総合的に提供できるとしたら、このエリアの里山の価値は非常に高まるはずだ。…まちの近くの里山をいかし、持続可能で共生社会をつくるために、まず私たちが立ち上がりましょう」

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松村氏

◇       ◆     ◇

 松村氏について一言。数年前、多摩ニュータウン学会の会合で松村氏と初めてお会いしたとき、話される言葉一つひとつに「強靭さ」「重さ」があるのに驚いた。座学だけでは得られない実践によるしっかりした裏付けがあるからだろうと気づかされた。

 「実践」とは、NORAの活動だ。実に多彩でユニークな活動をされている。毎月送られるメルマガは量が多く読み切れないが、松村氏のコラムは読むことにしている。リンクを貼ったのでぜひ見ていただきたい。

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特定非営利活動法人よこはま里山研究所(NORA)

雨の日も里山三昧(松村氏のコラム)

 

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