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2016/03/15(火) 00:00

大山鳴動…コミュニティ条項は玉虫色決着 国交省が大岡裁き

投稿者:  牧田司

 玉虫色とはこのことを指すのだろう。国土交通省が示した「マンションの管理の適正化に関する指針」と「マンション標準管理規約」に関する「コミュニティ条項」がそれだ。右でも左でも、白でも黒でも、勝者でも敗者でもない、見方によってどちらとも解釈できるという意味だ。

 「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」(座長:福井秀夫政策研究大学院大学教授)がまとめた報告書では「マンションコミュニティ条項」は財産管理が目的の管理組合には相容れないとして排除することを求めていたのに対し、全国の管理組合や業界団体が「コミュニティ活動は車の両輪」として真っ向から反発。結局、国交省は双方の主張を取り込み、大岡裁きともいえそうな玉虫色の裁定を下した。

 ただ、マンション管理組合や管理会社の現場では解釈に迷いそうで、コミュニティ活動が委縮する可能性も否定できない。

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 検討会は平成24年1月に立ち上げられたが、その冒頭、委員がマンション管理会社をコピー機の納入業者に例え、安く納入してトナーの交換などで儲けるなどと揶揄して反発を買い、さらにはその後の会合で、委員の質問に答えられなかったオブザーバーを「落第生」呼ばわりするなど険悪な状態となる場面もあった。検討会は意見がまとまらず空中分解するかと思われたが、2年半の中断の末再開され、最終報告が昨年3月にまとめられた。

 パブリックコメントに対する質問が760件にも上ったことからも、問題の大きさ、関心の高さをうかがわせた。

 総務省の調査によると、平成20年度の行政手続法に基づく意見公募手続に対する1案件当たりの提出意見数は約24件で、内訳は「なし」が47.8%、「1~10」が36.5%、「11~20」が6.2%、「21~50」が4.7%、「51~100」が1.6%、「101~500」が1.7%、「501以上」が6件(0.6%)となっている。

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 「マンションの管理の適正化に関する指針」の告示では、コミュニティについて次の通り明快な指針を示した。

 「マンションにおけるコミュニティ形成は、日常的なトラブルの防止や防災減災、防犯などの観点から重要なものであり、管理組合においても、建物の区分所有等に関する法律(昭和三十七年法律第六十九号)に則り、良好なコミュニティの形成に積極的に取り組むことが望ましい」という文言が盛り込まれた。

 これを担保する法律として、「管理規約は、マンション管理の最高自治規範であることから、その作成にあたっては、管理組合は、建物の区分所有等に関する法律に則り、『マンション標準管理規約』を参考として、当該マンションの実態及びマンションの区分所有者等の意向を踏まえ、適切なものを作成し、必要に応じ、その改正を行うことが重要である」としている。

 さらに、「マンションにおけるコミュニティ形成については、自治会及び町内会等(以下「自治会」という。)は、管理組合と異なり、各居住者が各自の判断で加入するものであることに留意するとともに、特に管理費の使途については、マンションの管理と自治会活動の範囲・相互関係を整理し、管理費と自治会費の徴収、支出を分けて適切に運用することが必要である。なお、このように適切な峻別や、代行徴収に係る負担の整理が行われるのであれば、自治会費の徴収を代行することや、防災や美化などのマンションの管理業務を自治会が行う活動と連携して行うことも差し支えない」としている。

 この「指針」だけを読めば、コミュニティ形成は極めて重要であり、法律に違反しない限り、「最高自治規範」として「自治会費の徴収を代行することや、防災や美化などのマンションの管理業務を自治会が行う活動と連携して行うことも差し支えない」としており、これまでよりさらに踏み込んでいると解釈もできる。

 しかし、「マンション標準管理規約」の改正では、〝行過ぎた〟コミュニティに釘を刺し、具体的に次のように改正ポイントを示した。

 「『地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成』との表現には、定義のあいまいさから拡大解釈の懸念があり、とりわけ、管理組合と自治会、町内会等とを混同することにより、自治会費を管理費として一体で徴収し自治会費を払っている事例や、自治会的な活動への管理費の支出をめぐる意見対立やトラブル等が生じている実態もあった」とし、「自治会又は町内会等への加入を強制するものとならないようにすること」「自治会又は町内会等への加入を希望しない者から自治会費又は町内会費等の徴収を行わないこと」「自治会費又は町内会費等を管理費とは区分経理すること」「管理組合による自治会費又は町内会費等の代行徴収に係る負担について整理すること」などを求めている。

 このように、「指針」と「標準管理規約」はそれぞれが疑問を差し挟む余地がなくほぼ完ぺきである。しかし、組合活動と自治会活動を峻別するということは極めて難しく、どこで線引きしていいのかわからない。組合活動を経験すればだれでもわかることだ。

 その一方で、標準管理規約で行き過ぎにブレーキをかけている。これでは管理組合(居住者)が言葉は悪いがまた裂き状態に置かれる。正直に言えば罪作りな「指針」と「標準管理規約」だと思う。現場は混乱するのではという懸念が残る。

国土交通省 「マンション適正化指針」と「標準管理規約」改正を公表(2016/3/14)

 

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