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2016/03/16(水) 00:00

槇、藤本、宮脇、内井…「金沢シーサイドタウン」に感動 横浜市立大が見学会

投稿者:  牧田司

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「金沢シーサイドタウン」藤本昌也氏が担当した住宅

 横浜市立大学が3月12日行った「わが国の『すまい』と『まち』の関係を問い直す~横浜市金沢シーサイドタウン見学会&討論会~」を取材した。わが国を代表する建築家の槇文彦氏、藤本昌也氏、故・宮脇檀氏、故・内井昭蔵氏、故・神谷宏治氏などの斬新で意欲的な建築物に接し感動した。ランドスケープデザインも素晴らしく、こうした優れた街を次世代に継承する必要性を強く感じた。

 見学会&討論会では、同大学国際総合科学部国際都市学系まちづくりコース准教授・中西正彦氏がナビゲーターとなり、金沢シーサイドタウンの街づくりに関わった芝浦工大教授・中野恒明氏のほか、蓑原計画事務所・蓑原敬氏、東京大学准教授・中島直人氏が街の説明を行い、討論会でそれぞれ話し合った。

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左から中西氏、蓑原氏、中島氏、中野氏

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故・宮脇檀氏が担当した住宅

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故・内井昭蔵氏が担当した住宅

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岡本太郎の壁面アートがある「並木幼稚園」

◇       ◆     ◇

 「金沢シーサイドタウン」は横浜市金沢地先の埋め立て地約660haの一角約82haに神奈川県、横浜市、住宅公団などによって昭和50年代の前半に整備された約10,000戸の大規模ニュータウンで、建設後40年近く経過し居住者の高齢化・人口減少などか顕在化。需要ニーズの変化もあり、空き家の発生なども懸念されている。

 同大学は3年前に文科省の補助を受けてまちづくり拠点「並木ラボ」を設置。都市デザインの取り組みを振り返るとともに、地域のコミュニティ支援活動を行っている。

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タウンハウス内の歩道空間

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中野氏が担当した「4面開口のタウンハウス」

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 まず、写真を見ていただきたい。槇文彦氏が設計した「並木第一小学校」、岡本太郎の壁面アートがある「並木幼稚園」、中野氏が槇総合計画事務所時代に実施設計を担当した「4面開口のタウンハウス」、団地中央の塩水と淡水が交じりあうふなだまり、2戸1エレベータの高層住宅、建築家4氏の競演による低中層住宅など、いまよりはるかに優れたランドスケープデザイン、住宅ばかりだ。

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槇文彦氏が設計した「並木第一小学校」

◇       ◆     ◇

 これほど優れている団地(街)なのに、どうして人口が減り、高齢化が進み、街の活力が失われつつあるのか。「シーサイドラインは交通の便がよくないと思われており、実際に東京の都心に通うには少し遠い。また、そもそもこの街が地区外の方々に知られていない」(中西氏)のはなぜか。地先のある工場勤務者の「職住近接」団地になっていないのはなぜか。利用者減・人口減少を理由にバス路線が縮小されるのはなぜか。商売だからしようがないのだが、大型スーパーが撤退するのはなぜか。これほど景観が美しく、優れた住宅ばかりなのに人気が上がらないのか。仲介会社はちゃんと団地の価値を評価しているのか。記者にとっては謎だらけだ。

 中層にはエレベータがなく、コンビニなど商店が少ないのはマイナスだが、それらのマイナスを埋め、余りある特長があるこの団地は正当に評価されていい。見学会の途中、90㎡で2,380万円のオープンハウスの立て看板があった。金沢八景の新築マンションの3分の1くらいの評価だった。

 討論会では、中野氏が「環境価値をもっと評価すべき。こうした郊外住宅が若い人にどう評価されるのか、期待もしたい」と語り、蓑原氏が「中層にエレベータをつけよという話があるが、公的住宅ならいざ知らず、民間のマンションでは合意形成ができない。(わが国の絶対的な排他的な土地所有制度など)住宅・社会政策を変える時期ではないか」と話したのが心に残った。

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まちづくり拠点「並木ラボ」で団地について説明する中西氏

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ふなどまりと〝2戸1〟エレベータ(両面パルコニー)の高層マンション

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ふなだまりに集まっていた小鳥

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ランドスケープデザインもいい勤住協のマンション

 

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