積水ハウスグループの積和建設は4月8日、マンションリノベーション事業強化・拡大の一環として、世界で活躍するプロダクトデザイナー・日本インテリアデザイナー協会理事長の喜多俊之氏がデザイン監修するマンションリノベーション「RENOVETTA(リノベッタ)」によるマンションリノベーション提案を行うと発表。tvkハウジングプラザ横浜展示場に設けた展示ブースを報道陣に公開した。
「リノベッタ」は、小さく仕切られた間仕切りを取り払い、スケルトン化して、キッチン、ダイニングを「集いの場」として中央に配置し、喜多氏オリジナルデザインの組立式和室「障子結界庵」や壁面収納家具なども提案。パッケージ商品として、70㎡で790万円・857万円・970万円(税込み)を用意している。首都圏・関西圏・東海圏が重点エリア。
発表会に臨んだ喜多氏は、「わが国の伝統の〝和の空間〟をもう一度甦らせ〝あきらめをあこがれ〟に変えていきたいと」と話した。
また、積水ハウス取締役専務執行役員・伊久哲夫氏は、「当社のリフォームは〝しかたなくからしたくなる〟を掲げているが、喜多氏のコンセプトに共感を覚えた。これを起爆剤に事業全体へ波及することを期待している。提案力、品質・資材調達力、施工力の2つの強みを生かしていく」と語った。
同社は、リフォームブランド「Re:QUEST(リ・クエスト)」として、一般の戸建住宅やマンションのリフォーム、リノベーション事業を展開しており、喜多氏とのコラボレーションを起爆剤に事業を拡大し、マンションストックの有効活用と流通促進につなげるのが狙い。現在、リフォームの売上高は積水ハウスグループ全体では業界トップの1,341億円で、積和単独では200億円となっている。
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リフォーム・リノベーション市場は玉石混交。大手ハウスメーカーやデベロッパーから地域の中小工務店まで1万とも2万ともいわれている業者がひしめきあっている。中古マンションのリフォーム・リノベーションの市場拡大も予想されている。
ここに積水ハウスが狙いを定めるのは当然だし、商談などを通じて注文住宅の受注にもつなげられるはずだ。
一つよくわからないのは、積和建設は積水ハウスの施工会社というイメージが強い。これに対して、リフォームやリノベーションを一般のお客さんから受注するのは、例えば積和不動産のほうが適当ではないのか最近の大手のデベロッパーは〝ワンストップ営業〟を志向しており、1カ所の対応であらゆるお客さんのニーズに応えようとしている。積水のブランド力をもってすれば、一網打尽とはいかないだろうが、カフェスタイルの常設モデルなど別の展開方法もあるのではないか。
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納得ができなかったことも一つあった。展示ブースは全体で150㎡と広いのだが、リノベーションスペースは間口が約7mの専有面積約87㎡を想定して提案していたことだ。築20年以上の中古マンションで間口が7m、面積が87m以上のものは3割もないはずだ。
やはり間口が6mの70㎡くらいの実大寸法で提案すべきだと思った。4年前、三井不動産リフォームが「スマートリノベーション」実験住宅を報道陣に公開したが、専有面積は74㎡で工事費は約1,200万円だった。
展示ブースの間取りが、ユーザーは自分が住んでいる、あるいは購入したいマンションとあまり変わらないから、リノベーションを考えたり購入を考えたりする動機となる。狭い住戸だからこそ提案力が生きる。広い住戸ならだれでも素晴らしい提案ができる。
この点について同社に注文もつけたし、喜多氏にも感想を聞いたら「わたしもそう思う。積和さんに伝えて」(伝えました)と返ってきた。
さらに言えば、組立式和室「障子結界庵」は約3畳大あった。87㎡なら3畳大の「和室」を提案することは可能かもしれないが、60~70㎡台で3畳大の「和室」は2LDKにしない限りまず無理だ。それなら収納もほしくなる。同社も喜多氏も「2畳」もできると語ったが、ならばどうして最初から提案しないのか。
この「和室」提案は、似たような空間「箱の間」を三菱地所レジデンスがマンションに提案しようとしている。ヒットするかもしれない。積和の提案は組み立てることができるのがみそだ。三菱地所のはライフサイクル・スタイルに応じで変えられるのが特徴だ。双方とも値段が問題だ。
三井不動産リフォーム、「スマートリノベーション」実験住宅オープン(2012/9/13)