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2016/04/18(月) 00:00

安否確認47%⇒64%に伸ばす 「ザ・パークハウス 津田沼奏の杜」防災訓練

投稿者:  牧田司

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市のはしご車も出動して行われた防災訓練

 三菱地所レジデンスと三菱地所コミュニティは4月17日、千葉市習志野市の全721戸の大規模マンション「ザ・パークハウス 津田沼奏の杜」で管理組合と協同して防災訓練を実施した。昨年3月に続く第2回目で、昨年は安否確認率が約47%だったのが、今年は約64%まで飛躍的に伸ばすなど、取り組みが〝進化〟していることを示した。

 防災訓練は、防災ルールを定めた「防災計画書」に従い、館内放送や安否確認マグネットを使って全住戸の居住者の安否確認を行ったほか、①習志野市危機管理監による講演会②防災ゲーム③防災セミナー④トイレ組み立て・凝固剤の使い方⑤バルコニー避難・蹴破り訓練⑥防災ビデオ上映会-など様々なイベントを任意参加で行った。

 安否確認は、昨年は全721戸のうち338戸(47%)だったが、今年は目標に掲げた85%には及ばなかったが、64%に当たる458戸に伸ばした。イベント参加者は160組、約340名だった。マンションは2013年6月に竣工。

 管理組合防災担当理事の安部修氏は、「昨年12月に落雷があり、火災報知器が鳴り出したのをヒントに安否確認の数を増やすことを考えた。結果として大きく増やすことができた。防災態勢は本部長-副本部長の下に情報・消火・救助・避難・生活担当を置き万全を期しているが、男性は仕事で昼間留守のケースも多いので、女性活用や街の防災力の拡充など点から面の展開を考えたい」と感想を語った。

 また、防災訓練を見学した隣接する「ザ・レジデンス津田沼奏の杜」(全869戸、2015年9月竣工)の管理組合理事長・横井正文氏は、「理事10人のうち8人が自分で手を挙げた。わたしも公認会計士の資格があるのでお手伝いできることをしたい。防災組織は1年間くらい検討して独自のものを作り、ここのマンションやエリア全体で取り組みたい」と、共同で防災訓練を行う意向を示した。

 奏の杜のエリアマネジメントを推進する一般社団法人奏の杜パートナーズ理事長・織戸久雄氏(65)、同副理事長・五関清氏も顔を見せ、「一般社団は平成23年6月に設立した。居住者、事業者、地権者からなる組織で、会費は戸建てで月額800円、マンションは400円。会員は1,800戸で加入率は90%超。将来的には2,500戸、7,000~8,000人の街になる。街の価値を上げるべく、市や町内会などとも連携して街づくりを進めていく」と話した。

 防災訓練に参加した居住者は「昨年は欠席したが、防災の意識を高めたい」「3.11で経験したが、マンホールトイレは使いづらい」「凝固剤を買う気になった」などと話していた。

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午前9時30分 ブロックごとに避難場所に集合

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マンホールトイレ

◇       ◆     ◇

 収穫の多い取材だった。この防災訓練は昨年も取材しており、同じ内容だろうと思っていたが、はるかに進化を遂げていた。熊本地震のさ中だったこともあるのだろう。主催者も参加者も緊張感が漂っていた。

 嬉しかったのは安部氏が声を掛けてくれたことで、元気な様子が何よりだった。防災体制は政府顔負けだと思った。防災ゲームでは、5年生の女の子を安否確認の〝戦力〟にしていた女性がいた。「エレベータを使わず、ちゃんと確認した」とその女の子は話した。花丸をあげたくなった。

 エリアマネジメント組織「奏の杜パートナーズ」の存在にも驚いた。津田沼エリアにこのような組織があることを知らなかった。織戸氏は話しぶりから普通のサラリーマンに思えなかったので、「ひょっとしたら地権者? 」と聞いたらその通りだった。「わたしは地権者で居住者。マンション1棟では街の価値は上げられない」

 エリアの地価が上昇し、「固定資産税が上がったが」と苦笑を浮かべたが、(「税金をたくさん払うのはいいこと」との記者の問いに)「その通り。税金を払うのは国民の義務」と話した。間違いなく街づくりの旗振り役として大きな力を発揮するに違いない。

 三菱地所レジデンスのスタッフの奮闘も光った。そのリーダー的な存在である同社商品企画部商品企画業務室業務グループ長・岡崎新太郎氏は先日も記事にした「箱の間」の開発者で、「これは管理会社の仕事かもしれないが、〝おひとり様〟が中心の小規模から今回のような大規模マンションまで双方が連携して取り組んでいる。満足度調査などしない。むしろ〝不安〟〝課題〟を発掘するような取り組みにしたい」と、頼もしいことを話した。

 マンホールトイレの設置・凝固剤の使い方などを説明した平澤龍一氏の本業は聞かなかったが、会社員より講釈師が似合っていた。「緊急時のテントは絶対足りなくなる。マンションも横管が外れる危険性がある。トイレを我慢しないほうがいい。水なしで用が足せる凝固剤は必需品。わたしはいつも持ち歩いているし、娘にも持たせている。お宝はわたしも経験していないが、消臭効果もあり、3カ月は(溶けないで)持つ。普通ごみとして捨てられる。100個入りで15,000円。普通の人で1日5~7回とすると、3人家族で15回。使用期限は10年。それと薬手帳。非常食も重要だが、いつも飲んでいる薬の名前などなかなか伝えられない。冷蔵庫の中にあるものは腐らいうち、自分が好きなものから食べたほうがいい」などと、1時間近く話し続けた。参加者を「わたしも買おうかしら。どこで売っているの? 」とその気にさせていた。

 平澤氏は、約10万人と言われる「防災士」の資格も取得している。1カ月くらい勉強し、講習を受けないと合格しないそうだ。

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「被災時にトイレは我慢できませんし、我慢しちゃいけない」平澤氏

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「凝固剤は1個150円。3人家族で1日15個。考えたら安いもんです。普通ごみとして捨てられる。わたしは持ち歩いています」(記者は浦安の液状化取材で躊躇なく公園の隅っこで用を足したが、若い女性が歩いて10数分の駅まで歩いたと聞いた)

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織戸氏(左)と五関氏

◇       ◆     ◇

 余談だが、記者も非常時は〝人助け〟が必要なことを学んだ。この日、現地は海風も手伝って猛烈な風が吹いた。取材を終え、駅に向かって歩道を歩いていたときだ。風速30mはあったはずだ。若い女性がよろよろと記者に向かってきたかと思うと、ぶつかるようにして何やら耳元で囁いた。

 ドキッ。この30年来、若い女性、しかも真っ昼間から言い寄られた経験などないから、恐怖を覚え、知らんぷりをして歩を進めた。5、6歩進んだとき〝待てよ、女性はメ・ガ・ネ…としゃべったような気がする。風でメガネが吹き飛ばされたのかも〟と考え直し、立ちすくんだままの女性のところに戻り、確かめたらその通りだった。目は宙を泳いでいた。相当視力の弱い人だ。

 しかし、この風だ。道路に転がったら車にひかれるか、はるか彼方に吹き飛ばされるはずだ。どうしよう? まごまごしていたら看板か何かが飛んできて憤死するかもしれないと新たな恐怖と闘い、絶望的な気分に陥りながら探した。そのとたん、何と目と鼻の先の敷石の隅に、いかにも女性ものらしい赤い縁付きの眼鏡が転がっているではないか。

 これほどうれしかったことはない。「これでしょ、よかったね」と一声かけて記者は近くのビルに駆け込んだ。

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防災セミナー(左)と防災ゲーム

初の防災訓練に350人 「ザ・パークハウス津田沼奏の杜」管理組合(2015/3/1)

 

 

 

 

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