先日は千代田区や港区などで〝お金持ち〟が増えていることを書き、昨日は千代田区のマンションがよく売れていることを紹介した。なぜ、そんなに同区のマンションが人気になるのか、その理由・背景をデータから探ってみた。
まず、人口。昨年3月、国立社会保障・人口問題研究所から平成22年(2010年)に約1億2806万人だった総人口は平成52年(2040年)には1億728万人へと2000万人以上も減り、65歳以上人口が40%以上を占める自治体が半数近くになるというショッキングな予測が発表されたが、千代田区には全く無縁な話だ。
同区の人口は昭和30年の約12万人を境に減少を続け、平成7年には約3.5万人までに落ち込んだ。その後は減少傾向に歯止めがかかり、平成12年の国勢調査では実に45年ぶりに増加に転じた。
国勢調査によると、平成12年の人口は約3.6万人だったのが22年には約4.7万人に30%も増加し、住民基本台帳による直近のデータでは約5.8万人へ、この16年間で61%も増えている。区の予測によると増加傾向は今後も続き、ピークの平成67年(2055年)には約8.1万人になるという。
ただ一つ気ななる材料もある。人口とは夜間人口のことで、昼間人口は漸減傾向にあることだ。平成12年の昼間人口は約86万人だったのが、22年には約82万人へと4万人も減少している。平成27年度の国勢調査の結果がどうなるか気になるところだ。区でも昼間人口減の要因をつかみかねている。
昼間人口減はともかく、人口増の最大の要因はいうまでもなくマンションの建設増だ。この7年間でも「プラウドタワー千代田富士見」(414戸)、「ワテラス」(333戸)、「パークコート千代田富士見」(505戸)の大規模再開発マンションが竣工している。
マンション建設増を裏付けるデータとして住宅着工増がある。平成5年はゼロだったのが、平成16年には約1,800戸に増加。その後は減少していたが、ここ数年は再び増加に転じ、平成27年(暦年)では1,696戸と平成16年水準に近づいている。〝億ション〟のメッカでもある麹町エリアでのマンション供給ラッシュもこれから本格化する。業界関係者によると20棟近くあるそうだ。
特徴的なのは、区内に建設されているマンションは小規模なものが比較的少ないということだ。区のデータによると、マンションは25年までに432棟、約2.1万戸供給されており、1棟平均は50戸だ。20戸未満が半数を占める都平均と比べるとその差は歴然とする。
マンションの規模は資産性とも密接な関係がある。区内の旧耐震の建築物は確実に減少しており、平成15年から25年までに約3,000戸以上減少し、26年の耐震化率は89.7%に達している。
空き家率の改善も進んでいる。平成20年には25.8%だったのが、25年には13.3%へと都の平均値(11.1%)に近づきつつある。
高額マンションの供給増はアッパーミドル・富裕層の増加につながっている。所得割の課税標準額が1,000万円以上の「高所得者」は、平成24年度は約3.6千人で、全納税者に占める比率は12.6%だったのが、平成27年度は約4.4千人と3年間で約800人増加し、比率も13.4%へ0.8ポイント増加している。比率は港区の14.5%には及ばないが、23区平均の4.1%を大きく上回っている。
他のデータもなかなか興味深い。保育園・学童クラブの待機児童はゼロだし、生活保護率も特別区の平均より5~10ポイント低い。
喫煙者と非喫煙者の共生を図る取り組みにも力を入れている。区は平成26年度から民間ビルの空き店舗などを活用した屋内喫煙所の設置に対する助成事業を開始し、28年度も引き続き「喫煙所の設置を積極的に推進していく」としている。
このような人口増、マンション建設増を受けて区では、平成27年度から平成36年度までの10年間を期間とした「新たなちよだみらいプロジェクト」を作成。既存施設の更新や住環境の整備、子育て、高齢者支援施設の充実、コミュニティ支援などへ施策の重点を移していくとしている。「付置住宅」や「区営住宅」「区民住宅」の見直しも行われる。