記者は、三井不動産レジデンシャル、大和ハウス工業、近鉄不動産、三菱地所レジデンス、長谷工コーポレーションの5社連合による北区・東十条が最寄り駅の「ザ・ガーデンズ東京王子」(864戸)と、野村不動産の大田区・雑色が最寄り駅の「プラウドシティ大田六郷」(632戸)をともに大型で、しかも子育て世帯がメインターゲットであり、また東十条から東京駅まで約24分、雑色から東京駅は約30分だが品川駅までは約16分と交通便は互角であることから「南北戦争」として位置づけている。かつてないユーザーの争奪戦が展開されるのは間違いない。
勝敗の分かれ目はやはり価格だ。このところのマンション適地と建設費の上昇で東京23区では一般サラリーマンの取得限界だと記者が考えている坪250万円(24坪で6,000万円)以下は足立区や葛飾区の一部しかなくなってきた。悲劇的なことだと思う。
「東京王子」も「大田六郷」も富裕層が見向きもしない、どちらかといえばマイナーな地域だから、ここで坪250万円を超えてきたら、その規模からしてかなり苦戦ずるのではないかと思っている。ともに疲弊して引き分けに終わる可能性もある。
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前置きが長くなってしまった。本日(5月24日)、「南」の「プラウドシティ大田六郷」を見学した。この物件については昨年、モリモトの雑色のマンションを見学した際に存在を知り、坪単価はひょっとしたら270万円くらいになるのではと予想した。
今回の取材をセットしてくれた同社コーポレートコミュニケーション部のO氏とモデルルームを見ながら、「Oさん、わたしはここで坪250万円だったらお客さんが殺到すると思うが、そうはならないでしょうね。三井さんの『東十条』も取材するが、『北』と『南』の激突は避けられない…」などと話した。
O氏は知ってか知らずか、単価について「あとで営業マンに確認しましょう」と言葉を濁した。
さて、そこで物件担当チーフの頼富龍介氏に「坪いくらですか」と単刀直入に聞いた。その答えに記者は驚嘆した。「坪250万円ちょっとです」
記者は絶句した。ありえない単価だ。
もう一度、どうして記者が坪250万円にこだわるのかについて補足する。皆さんは、リーマン・ショック直後の2010年に野村不動産が分譲した全785戸の「プラウドシティ池袋本町」の単価がいくらだったか覚えていらっしゃるだろうか。250万円の半ばだった。圧倒的な割安感があったため(それだけではないが)瞬く間に売れた。
あの時と今は状況が異なるが、いくら金利がただ同然になっても、坪250万円、グロスで6,000万円の壁は存在すると思う。坪250万円に設定した同社に「座布団3枚!」と叫びたい。
設備仕様は、昨日見た「府中」とは雲泥の差で、〝プラウド・オハナ〟とでも名付けたくなるようなレベルではあるが、共用施設の充実ぶり、ランドスケープデザインは間違いなく〝プラウド〟の域に達している。敷地内には認可保育所(予定)や子育て支援施設のほか、医療施設などを誘致する。
5月20日に第1期100戸を供給しており、約9割の契約がスムーズに進んでいるという。
言うまでもないことだが、記者は高みの見物を決め込んでおり、「北」が勝利することをほのめかしているわけではない。むしろ、先制攻撃で驚嘆すべき坪250万円の手を打った「南」の野村に軍配が上がるのではないかと思い始めた。
先制パンチを食らった「北」はどう対応するのか。ともに施工を担当している長谷工コーポレーションは「北」の売主にも名を連ねている。ニュートラルの立場を貫くことができるのかも気になるところだ。
「大田六郷」の物件は、京浜急行線雑色駅から徒歩12分、大田区西六郷三丁目に位置する14階・15階建て2棟全632戸。専有面積は64.62~86.87㎡、第1期2次(戸数未定)の予定価格は4,400万円台~6,900万円台(最多価格帯5,100万円台)、坪単価は250万円強。竣工予定は平成29年2月中旬・6月下旬。施工は長谷工コーポレーション。敷地はグリコの工場跡地。