伊藤忠都市開発が6月下旬に販売開始する「クレヴィア田端」を見学した。同社がオージス総研、インブルーム、タカラスタンダード、東京ガスと協働で開発した新「モット・キッチン」を導入した物件で、同社のオリジナルキッチン「モット・キッチン」の改善活動で新たに実施した「行動観察」により〝お客様も気づいていなかった声無き潜在ニーズ〟を盛り込んだというのがセールスポイントだ。
物件は、JR山手線・京浜東北線田端駅から徒歩9分、北区田端新町3丁目に位置する14階建て全33戸。専有面積は65.35〜75.52㎡、予定価格は4,700万円台〜7,000万円台(最多価格帯5,400万円台)、坪単価は280万円の予定。竣工予定は平成29年3月下旬。施工はイチケン。設計・監理は三輪設計。売主は同社のほか三信住建。
現地は、明治通りから一歩入った近隣商業エリアの一角で、3方道路の敷地。住戸は全戸南西向きで角住戸比率が78%。二重床・二重天井で食洗機、ミストサウナが標準装備。
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同社が2009年に開発した「モット・キッチン」が優れているのは理解しているつもりだが、正直に言えば、どこが「新」なのか、同業他社と比較してどこが優れているのかさっぱりわからなかった。自分でも愕然とした。
種を明かせば、記者はかつて約10年間〝主夫〟を完璧とまではいかないかもしれないが、とにかくこなした。マンションの水回りに関しては〝主婦〟に負けないぐらいの知見があった。
過去形になったのは、最近はまったく家事労働をしなくなり、そのために収納やら動線やらについてまったくわからなくなった。ダイコン1本の値段もわからなくなった。完全に記者の知識はさび付いてしまった。
なので、読者の皆さんは同社のニュースリリースを読むか、モデルルームを訪ねてコンセプトブックをもらって読んで、実際にそのキッチンを見るしかない。記者は何の役にも立たない。
そのニュースリリースを要約すると、開発経緯は、2014年の調査で「収納量」と「作業スペースの広さ」の好不評が大きく割れたため、その原因究明と解決の糸口をつかむべく、行動観察調査の実績豊富なオージス総研と協働し「行動観察」を実施したとある。
「行動観察」では、モット・キッチン利用者4名に自宅で普段通りの調理準備から片付けまで約3時間録画。全12時間の映像を分析し、「無意識行動」や「思い込み・諦め」の中にストレスの原因となる問題が潜んでいることを明らかにした。
そして、「収納・動線」「設備機能」「セレクト・カスタマイズ」「フォローサービス」の4つの面から改善を図り、新「モット・キッチン」の開発につなげたという。
試作品の検証結果では、調理時間が20%、移動歩数が25%、屈伸回数が70%それぞれ軽減されたという。
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検証結果で調理時間が20%、移動歩数が25%、屈伸回数が70%それぞれ削減されたというのはすごいデータだ。リリースによると、同一人物がイタリアン4品4人分を一般的なシステムキッチンと試作品をそれぞれ使用して比較した場合、一般品より試作品のほうが調理時間が約55分から約44分へ20%、移動歩数は509歩から383歩へ25%、屈伸回数は13回から4回へ70%削減された。
この結果から、仮に朝昼晩だと調理時間、移動回数、屈伸回数は2倍かかるとすると、調理時間は20分、移動回数は150歩、屈伸回数は18回削減される。1年にすると…。この〝価値〟は大きい。家事労働をやったことがある人は分かるはずだ。後片付けもラクになるはずだから、新「モット・キッチン」は革命的な開発かもしれない。
新「モット・キッチン」のよさは分からないが、坪単価予想はドンピシャリだった。販売担当者は坪単価について最初は口をつぐんでいたが、「わたしの予想では280万円」という質問に「280万円くらいで考えています」とのことだった。山手線沿線の徒歩9分というのはインパクト、割安感がある。早期に完売するとみた。ライフステージの変化に対応したプラン提案もよかった。