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2016/06/30(木) 00:00

大和ハウス 賃貸新商品 「市場は縮むが当社は伸びる。1兆円は近い」堀専務

投稿者:  牧田司

【大和ハウス工業】「セジュール New ルピナ」.jpg
「セジュールNewルピナ」完成予想図

 大和ハウス工業は6月30日、賃貸住宅業界で初めてリチウムイオン蓄電池を標準装備した賃貸住宅商品「セジュールNewルピナ」を7月1日から発売すると発表した。

 同社が2002年3月に発売した北欧風の外観を採用した2階建て商品「セジュールルピナ」のトラディショナルなデザインをペースとし、木目調外壁と白色の窓枠・破風のアクセントが際立つ7色のカラーバリエーションとすることで、北欧デザインを好む入居者ニーズに応える。

 また、今後飛躍的に伸びると予測されている家庭用リチウムイオン蓄電池を業界に先駆けて導入することで、入居者の「安心・安全」に配慮する。

 搭載するのは、エリーパワー社の2.5kWh家庭用リチウムイオン蓄電池で、幅32㎝、奥行き58.8㎝、高さ51.4㎝のコンパクトなため、収納やデッドスペースに設置でき、鉛蓄電池や水素蓄電池と比べ高効率で長寿命、事故も少ないのが特徴。

 地震や落雷などの停電時に自動的に放電モードに切り替わり、非常時電源として家電製品などに電力を供給する。満充電の場合、連続8時間使用できる。

 販売地域は全国で、販売本体価格は45万円/坪から(税別)。販売目標は年間500棟。

 商品発表会に臨んだ同社取締役専務執行役員 集合住宅事業推進部長(東日本担当) 集合住宅事業担当・堀福次郎氏は、「従来商品と比べカラーバリエーションを増やし、2階建てから3階建てにも対応し、6~19人の小規模保育所やコンビニ、高齢者施設など非住宅を併設する提案を積極的に提案していく。中長期的には賃貸のマーケットは縮むが、入居者目線の商品づくりを進めていけば、現在、10%の当社のシェアは15%から20%には伸ばせる。前期売上高は8,800億円で今期は9,450億円だが、1兆円に迫るはずだ」などと、強気な姿勢を見せた。

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堀専務

◇       ◆     ◇

 堀専務の独演会を拝聴しながら、記者はずっと別のことを考えていた。断っておくが、新商品については細大漏らさずメモを取った。ほぼ完ぺきに取材できた。

 堀専務の話は、本人か「地声が大きいので、マイクを使うとうるさいと怒られますので」と前置きし、マイクなしで話されたのだが、やはり声は大きく明瞭で要領を得ていたからだ。

  一つだけ聞き漏らし、気になったのは冒頭の前置きの部分で、堀専務が「株主総会も無事に終わり、イギリスのEU離脱による株価の下落も止まり戻し基調なのと、2人目(と聞こえた)の…ため、今日は気分が浮き浮きしている」と話したことだ。

 株価の下落が止まったのは記者も嬉しいが、堀専務の「2人目」の発言には、66歳の専務の子どもが生まれる訳はないし、孫の一人や二人生まれたからといって、そんなに気分が浮き立つものではなかろうとずっと考えていたのだ。

 そこで、発表会後にその理由を聞いた。堀専務によると「直径が20㎝、わずか3日間しか咲かない大賀ハスが咲いたのです。もう15年前にお客さまにもらって大事に育てている」「えっ、専務の家には池があるんですか」「いや、大きな火鉢を3,000円で買ってきて、水を張って育てている。ところが、水を張ると蚊がわくので、女房が怒るんですよ。そこで、金魚を入れたら(大きな自分の腹を突き出して)こんなになっちゃった」と、これまた独演会の続きをやり始めた。

 別の記者が「わたしにも仕事の話をさせてください」と遮らなければ、二人で延々とハスの話やらジャパネットたかたの名物会長・高田明氏のことなどに花を咲かせるところだった。

 なぜ高田氏を持ち出したかというと、堀専務は声質と体形、それとタレント向きでない顔(写真参照)は高田氏と全く異なるけれども、分かりやすく人を引きつける語りがそっくりだからだ。

 例えば、「8時間持ちます」「テレビも冷蔵庫も携帯の充電ももちろん大丈夫」「蓄電池の値段は90万円。でも賃料は上げません。そのエリアの最も高い相場に抑えます」「マーケットは縮みます。しかし、当社は伸びます」「高齢者施設や小規模保育所などの併設することをどんどん提案していきます」「賃貸住宅事業部の今期目標は9,450億円ですが、1兆円に迫ります」「当社の10%のシェアを15%まで伸ばすのは容易」…などだ。

 このような立て板に水の話を聞きながら、記者は同社がCSテレビの枠を買い取って、堀専務が話せば営業マンにして100人分くらいの働きをするのではないか、空気だってその気になれば〝ダイワの水はおいしいですよ〟と売りかねないと考えた。

 バカなことをずらずらと書いたが、堀専務の話の中で一番重要なのは「オーナー目線ではなく、お客さま目線」という言葉だ。

 多くのハウスメーカーはこれを忘れているのではとずっと思ってきた。居住性能より利回りを最優先する商法がこの業界ではまかり通ってきたのではないか。記者は分譲が主な取材グラウンドだからそれがよけいにわかる。賃貸より持ち家重視の政策も後押ししているのだが、賃貸がプアだからみんな賃貸脱出を図ろうとし、分譲が売れるのだ。賃貸オーナーは建てたその日から空き室におびえる日々を過ごすことになる。

 その流れをダイワハウスは変えようとしている。記者の身内からも「ダイワの賃貸マンションはいいわよ」という声を聞いている。堀専務は入居者の声に耳を傾けているはずだ。だからこそ、これまで6年間の実績が約2,100戸だった数字を1年間(500棟は戸数にすると約3,000戸)で軽くクリアすると話せるのだ。

 来年の今頃はどのような話が飛び出すか。大賀ハスはまた咲くのだろうか。プレゼントしたお客さんも15年間も育ててくれた堀専務に感謝しているはずだ。顧客主義とはそのようなものに違いない。記者はもらったカサブランカを10年くらいで枯らしてしまった。

大賀ハス(堀撮影).jpg
堀専務が咲かせた大賀ハスの大輪(堀専務提供)

 

 

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