アキュラホームは7月22日、埼玉県熊谷市に完成させた同社埼玉北支店オフィス棟「住まいと暮らしサロン」の竣工お披露目発表会を行った。中規模木造建築の普及を目指すため、一般住宅用流通材と加工技術を用いた最先端の3階建て建物で、最大無柱空間16m×6m、最高高さ9.4mを実現した。
構造は、東京大学大学院木質材料学研究室教授・稲山正弘氏、意匠設計・監理監修は河野泰治アトリエ主宰・河野泰治氏が担当。広さ16m×6m、天井高最高9mの大空間を作り出す「シザーストラスアーチ」の3階建てと2階建てオフィス棟からなる延べ床面積約431.34㎡。2階部分を間口方向に1.5m、奥行き方向に3m、2方向に跳ね出させる(オーバーハング)高度な技術が採用されているのも特徴。柱は地元・西川材、その他は北欧材。建築コストはおおよそ坪100万円。
建物は、同社の埼玉北支店オフィスとして使用されるほか、地域住民の各種講座やサークル活動の場として提供していく。
同社社長・宮沢俊哉氏は発表会で「現在の中大規模木造は補助金頼り。鉄骨でつくって内装に木を使うと坪180万から200万円にもなる。これではなかなか普及しない。今回は稲山先生や河野先生から学ばせていただいて、木造建築物の新たな時代の幕開けとなるワクワクするような素晴らしい空間ができた。これをプロトタイプにして、さらに研究を加えユニット化し坪80万円くらいでできるようにしたい」と語った。
構造を担当した稲山氏は「この建物は精度が高く、加工技術も難しく高度なテクニックが必要だが、試行錯誤を重ねながら普及版を開発したい」と話した。河野氏は「オフィスで働く人も、ここに訪れる地域の人も木のにおい、温かみを実感でき、誰でも楽しめる建物に仕上がった」と語った。
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稲山先生と河野先生の姿を見たとたん、記者は「なるほど」と思った。稲山先生とは2007年だからもう9年前だ。初めて「耐力壁ジャパンカップ」を取材したときから、毎年のように楽しく、かつちんぷんかんぷんの難しい話を聞いてきた。河野先生もそうだ。
4年前にアキュラホームが優勝したとき、宮沢社長は商品化も明言している。稲山先生と組んで今回の建物が完成したのは当然の成り行きだと思う。
難しい技術的なことは分からないので、とにかく美しい木の表情を写真で見ていただきたい。稲山先生が「1フロアの高さは2.7mで、高さ2mの耐力壁の上下に開口部を設けることができたのは画期的」と語ったように、オフィスの足元と上部に風が通る窓が設置されているのもよく見ていただきたい。
建築物は「美しくないといけない」のが記者の持論であり、丹下健三は「美しい建築物のみが機能的」とも語った。お三方の表情も輝いているように見えるではないか。
ポラス 4年振り7度目の耐力壁トーナメント優勝 総合は滋賀職能大が4連覇(2015/8/14)