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2016/08/12(金) 00:00

「共働き中心のマンション市場に激変」 トータルブレイン久光社長

投稿者:  牧田司

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久光氏

 毎日2~3社、月間にして40数社のデベロッパートップとの情報交換を欠かさない業界のご意見番・トータルブレインの久光龍彦社長(76)が最近のマンション市場について「郊外が売れないのは、社会が共働き時代に入っているにも関わらず郊外の子育て環境などが整っていないから。城西、城南は価格が上がり過ぎ。これからは東京などにダイレクトで通勤できる、価格が手に届く城北、城東エリアに注目すべき」などと語った。

◇       ◆     ◇

 不動産経済研究所の調査によると、2016年上半期(1~6月)の首都圏マンション市場動向は、①供給量が前年同期比19.8%減の14,454戸となり、微増となった埼玉県以外の都県は二ケタ以上の大幅減②初月契約率は平均68.4%で、前年同期の76.1%より7.7ポイントダウン。上半期としては7年ぶりの70%割れ③1戸当たり価格は5,686万円で、430万円(8.2%)の上昇④3.3㎡(1坪)当たり単価は270万円で、前年同期より22.8万円(9.25)上昇⑤完成在庫は6,130戸で、前年同期より1,194戸増加――となり、下半期は供給減少に歯止めがかかるものの、年間供給は3万7,000戸前後になり、2009年以来の3万戸台に減少すると予測している。

 久光氏の以下の見解は、このような最近のマンション市場を念頭に置いて読んでいただきたい。

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 わたしが一番言いたいのは、郊外が全く売れなくなってきた原因は値段ではないということです。最近つくづく感じるんですが、社会構造の変化なんですね。アベノミクスの核心は、共働きを強烈に推進すること、女性の社会進出を促すこと、退職年齢を引き上げて年寄りにも働いてもらうという政策で生産労働人口を増やすことに尽きます。

 ところが、郊外は共働きのための仕事がないし、都心に通勤するには時間がかかるし、子どもを預ける保育所が不足しています。

 さらに、郊外は移動に車が欠かせません。市役所に行くのも買い物をするにも子どもの習いごとの送迎もみんな車が必要です。ところが、車を所有するコストは年間で100万円くらいかかります。

 この100万円を住宅ローンに換算すると、0.45の変動制だと3,200万円から3,300万円の住宅ローンが借りることができる、マンションの坪単価に置き換えると坪160万円アップしても買える計算になります。

 となると、車をやめて、都心の職場に近いマンションを買う動きに拍車がかかってくることになります。郊外なら、通勤の便利さを考えて急行停車駅という選択肢になってきます。このように大きく最近のマンション市場が変わってきました。

 2つ目ですが、このような社会構造の変化によって需要層も変わってきたということです。我々の世代は70~75%は専業主婦のいる世帯でしたが、いまは逆です。共働き世代や単身、DINKSが75%です。50歳代、60歳代の買い替え・買い増しも増加しています。

 3つ目はシングル層の増加です。わが国の50歳までの未婚率は男性が35%、女性が27%です。一方で離婚率も3組に1組くらいに増加しています。東京圏もあと3年くらいで人口が減少するといわれていますが、独身だけは増える。銀行も3年前くらいから単身向けのローンに力を入れるようになってきました。

 このようにマンション市場は働く人が中心になり、働く人は職住近接を最重要視するように激変しました。

 では、職住近接の「職」をどこに求めるかということですが、以前は新宿、渋谷、池袋などのターミナルから電車で30分、最寄駅から徒歩で5~8分くらいが主流でしたが、今は東京、大手町、新橋、銀座、日本橋などへダイレクトに通勤できるように志向が西から東へ変わってきています。

 新宿も渋谷も池袋も通過点になってしまっています。しかもこのターミナルは混むし、乗り換えに時間がかかる。京王線も小田急新宿線も田園都市線がいい例です。私鉄は沿線開発ばかり考えているから輸送力のキャパシティを超えています。その点、JRも東京メトロも輸送力だけ考えればいい。

 それでは、東京などへダイレクトにつながっているのはどこかといえば、実は、城東、城北なんですね。いま、このエリアのマンション、とくに1LDKや2LDKがものすごく売れています。

 なぜ人気なのか。それは価格が安いうえに、便利だということです。価格的には、これらのエリアの現在の相場は坪単価220~250万円。仕入れ値が安いから、伸びしろがあるんです。大手もこのエリアへシフトしつつあります。

 利便性では、地下鉄が縦横無尽に走っています。東京メトロと都営線を合わせると13本あるんですが、城東、城北を走っていないのは2~3本。意外と近くて便利ということが見直されています。

 他方で、城南、城西は価格が上がりすぎです。軒並み坪300万円を突破してきましたし、地位の高い世田谷、杉並などは意外と利便性が悪いんです。

 ただ、都心の千代田、港、中央、渋谷の4区は別格です。アッパーミドル・富裕層の実需に加え、約1,7000兆円ある個人資産の運用も期待できます。このエリアは値段があってないようなものです。都心部は堅調に売れるだろうと読んでいます。

 物件の特性についていえば、共働き世代は親の援助も受けていますから、親の意向も反映されるのが今の市場です。駅から遠いのと坂道は敬遠したいのは、わたしの下の娘も共働きで、孫が病気になると、わたしの妻が駆けつけざるを得ませんので、親の立場はよくわかります。

 わたし自身も真夏の朝、駅まで5分くらいだと汗をかかない、7分くらいだと汗をかくんです。10分を超えると下着を変えたくなるほど汗だくになります。坂道もダメですね。赤坂見附から事務所まで数分ですが、(なだらかな)この坂でも息が切れます。(これは冗談。76歳でも月に40数社を回り、昨年末には趣味のスキューバダイビングで1,000本を達成した久光氏の体力は相当なもの)

 共働き世代をサポートする政策が必要だとつくづく感じています。     

◇       ◆     ◇

 久光氏から京王、小田急、西武新宿、田園都市線などの沿線が売れなくなってきたと指摘されると、京王線に長く住み、ライオンズファンでもある記者は反論の一つや二つしたくなるのだが、何しろ久光氏は業界の水戸黄門か大久保彦左衛門のような存在だし、いろいろお世話にもなったので、ここは〝長いものには巻かれろ〟だ。

 城東の台東、墨田、江東、江戸川、葛飾、城北の練馬、板橋、北、足立、荒川の10区のマンションに注目するのもいいのかもしれない。

情報の十字路に立つ トータルブレイン・久光龍彦社長のアドバイス(2015/11/30)

 

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