優良ストック住宅推進協議会(会長:和田勇積水ハウス会長兼CEO)は8月29日、記者会見を開き、活動状況を報告した。
冒頭、和田会長は「会が発足して9年目を迎えるが、最近ようやく活動が浸透してきた。しかし、まだまだ啓蒙が不足していると考え、この1年間はスムストック販売士を増やそうと試験を年2回から3回に増やし、年間で約1,200人、今年6月末で4,230人に増やした。スムストックをより有効に活用していただくよう専用のローンも三井住友信託銀行さんに作ってもらった。2~3年後には何とか成約件数を1万戸に引き上げたい。現在の既存住宅は20年で資産価値がゼロになり、投資累計では約500兆円が消滅している。一方で、スムストックはきちんと定期点検しており、50年後でも約500万円の建物価値がある。きちんと再生して若者に買ってもらえる環境を整えたい」などと語った。
また、「中古住宅」の呼称変更については、「横文字でなく何とか日本語で適切な表現がないか国土交通省にも働きかけ、『既存住宅』にしてもらった」と話した。
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和田会長が力説されるのはよくわかる。値段が高くても将来にわたって安心して住める住宅が評価されるようになってほしい。
しかし、悪貨は良貨を駆逐するとはよく言ったものだ。現実はどんどん逆方向に進んでいる。
これは建売住宅市場のことだが、世間を席巻しているのは圧倒的な価格の安さを売りにしているメーカーだ。どこのエリアでも出隅入隅はない積み木のような外観で、間取りはほとんど同じ、外構もなし。価格は3,000万円くらいだから大手などより1,000万円も安い。こうした住宅の市場占有率は30%を超える-これが現実だ。
〝売れるものがいい商品だ〟-これに反論できる人はどれだけいるだろうか。
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「中古住宅」「既存住宅」「既築住宅」…呼称は様々でどれがいいのか記者もよくわからない。昔から使われてきた、今も主流になっている「中古住宅」を変更するのはかなり難しいような気がする。
「既存住宅」についてだが、記者は「きぞん」と発音してきたが、世間的にはそうなっていないようで「きそん」と発音するようだ。NHKでも昭和16年に定めてから「きそん」となっている。NHK「放送研究と調査MARCH 2014」では「『既存』については,これまで『〜ゾン』を認めたことがない。国語辞典では『キゾン』の読みを参考として入れる場合もあるようだが,今回は調査も実施しておらず,現行どおり(『キソン』)とする」となっている。和田会長も「きそん」と発音されたように聞こえた。
「きそん」か「きぞん」かは、国立国語研究所などにも問い合わせたが、結局はよくわからなかった。用例として「既存」は明治時代にも使われていたようだが、「きそん」なのか「きぞん」なのかはわからない。「名誉毀損」の「毀損」は「きそん」とふり仮名がつけられていたようだ。「既存」は「きそん」と読んでも「きぞん」と読んでもコンフリクト(衝突)が起こらないのでどちらでもいいと解釈できそうだ。「存」は「そん」も「ぞん」も読み方がある。
しかし、「きそん」は「毀損」を連想させる。ここは「きぞん」と発音しようではないか。国土交通省でも「きぞん」だし、「既存不適格」も「きぞん…」と読んでいる。
「既築」は経産省の「既築住宅・ 建築物における高性能建材導入促進事業」などの制度があるが、記者などはすぐ「鬼畜米英」を連想する。これも改めてほしいが、国の機関でもそれぞれ異なるのだから難しい問題だ。
いっそ、一般に公募して決めたらどうか。いい呼び名が浮かぶかもしれない。