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2016/09/22(木) 00:00

ポラスグループが準優勝と審査員特別賞 第19回木造耐力壁ジャパンカップ 

投稿者:  牧田司

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準々決勝戦で対決したポラス暮し科学研究所「軌条(きじょう)」(左)とポラス建築技術訓練校「ジャパドゥビ」

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稲山教授

 実物大の木造耐力壁を油圧ジャッキで〝綱引き〟をし、どこが一番強いかをトーナメント方式で競う「第19回木造耐力壁ジャパンカップ」が9月17~19日、静岡県富士宮市の日本建築専門学校で行われ、ポラスグループのポラス暮し科学研究所の「軌条(きじょう)」が準優勝した。また、ポラス建築技術訓練校の「ジャパドゥビ」が審査員特別賞を受賞した。コスト、デザイン、環境負荷など総合的評価を争う総合優勝は四国産業能力開発大学校の「壁SANUKI」が、トーナメント戦はkiba勝timbers(東京木場建材・東日本パワーファスニング・東大木質材料学研究室)の「HAMEX」がそれぞれ獲得した。

 「木造耐力壁ジャパンカップ」は、NPO法人・木の建築フォラムが主催して行なわれているもので、今回は10体が参加。17、18日の予選を勝ち抜いた8体が19日の準々決勝-準決勝-決勝戦を行った。試合は、耐力壁の土台を固定し、それぞれの桁同士の間にジャッキを装着し引き合って行い、破壊されたほうが負けとなる。破壊されない場合は、お互いの壁頂部の水平変位の合計が450mmに達した場合の水平変位の大きいほうが負けとなる。

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試合後の壁の状態を食い入るように見つめる参加者

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 トーナメント決勝戦で「軌条」を30キロニートン当たりで破壊した「HAMEX」の設計を担当した東大木質材料学研究所博士課程・落合陽氏と同修士課程・佐々木賢太氏は、「土台にカラマツのLVLを採用し、ホゾの部分を浅くする一方で、長いビスを使って補強したのが勝因」と語った。

 耐力壁を紹介するパンフレットには「白鵬がツッパリを全力でかましてもビクともしない某ハウスメーカーのような堅固なストラクチャーを兼ね備えた銀河系最強の耐力壁」と自画自賛していた。試合後の強度検証では50キロニュートンだった(過去の記録は62キロニュートン)。

 大会の進行役を務めている東京大学木質材科学研究室・稲山正弘教授は、「今回の作品には私は関与していない。LVLを普及させるためにはコストと防腐・防蟻処理をどうするかが課題」と話した。

 LVL(LaminatedVeneerLumber)は、切削機械でスライスされた単板(Veneer)を平行に積層・接着して造られる木材加工製品。CLTより強度が高いとされるが、コスト面などで住宅の構造材に使われることはないという。

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優勝したkiba勝timbers(東京木場建材・東日本パワーファスニング・東大木質材料学研究室)「HAMEX」(左)と「軌条」

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カラマツのLVLを土台に用いた「HAMEX」

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「HAMEX」のメンバー

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落合氏(左)佐々木氏

 「HAMEX」に完敗した「軌条」のポラス暮し科学研究所・上廣太主席研究員は、「決勝戦までの戦いで弟分の『ジャパドゥビ』にダメージを受けていた」と敗因を語り、訓練校の健闘を称えた。

 「軌条」には補強材として湿ると強度が高くなるというグラスファイバーテープを土台部分に使用しており、地元の川の水を「聖水」としてスプレーでテープに欠けるなどのパフォーマンスを行った。

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 「軌条」に使用されている金輪(左)とグラスファイバーテープ

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 「軌条」のメンバー

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 20歳前後のメンバー8人で構成されているポラス建築技術訓練校の「ジャパドゥビ」が、金物を使用せず兄貴分の「軌条」に善戦したことなどが評価されて審査員特別賞を受賞した。稲山教授も「非常にいい」と褒めた。

メンバーは「本当は施工部門で1位を取りたかった。来年は1位になれるよう頑張る」と話した。

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上段左からポラスグループの小暮涼太、冨田力也、澤田渓史、工藤嵩大、下段左から落合敦哉、林竜樹、甲斐優輝、田川樹の各氏

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 素人の記者が注目したのは、東京理科大高橋研究室の「富士の鬼蜘蛛」だった。壁のほぼ中央に奇怪でしかも稚拙な(失礼)、とても耐力と関係があるとは思えない白い〝蜘蛛の巣〟が貼られていた。

 記者は固唾をのんで四国産業能力開発大学校の「壁SANUKI」との戦いを眺めたが、あっさり敗退した。蜘蛛の巣は全く反応せず、肝心の主(蜘蛛)も出現しなかった。審査員も「効果? ないですね。単なるデザイン」といま一つの評価だった。

 しかし、当事者は真剣そのもの。メンバーを指導した東京理科大工学部建築学科・高橋治教授は、「初めて大会に参加した。蜘蛛の巣に使用した材料は鉄よりも強い新素材の『テクノーラ』で、様々な製品に採用されている。木との接合が課題だが、来年は改良して再挑戦したい」と敗戦にも屈しなかった。高橋氏は「大会はちょっとレギュレーションが細かすぎるのではないか」と注文もつけた。

 新素材といえば、木の繊維でできている「セルロースナノファイバー」もあるではないか。新素材で構造材に新風を送ってほしい。

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四国産業能力開発大学校「壁SANUKI」(左)に敗れた東京理科大高橋研究室の「富士の鬼蜘蛛」

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〝鬼蜘蛛〟

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東京理科大高橋研究室「富士の鬼蜘蛛」メンバー

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 予選で敗退し、作品を見ることができなかった初参加の日本工学院専門学校の「竹筋壁」も面白いと思った。貫(ぬき)の部分に竹を用いているのが特徴で、メンバーは「学校では座学ばっかり。木にも用具にも触るのが初めて」と語った。担任の同校建築学科・井口純先生は「竹を構造材に採用するのは珍しいのではないか。いい経験になった。来年も挑戦したい」と意欲を見せた。

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日本工学院専門学校の「竹筋壁」メンバー

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解体作業(作業をする人数、男女差、時間、一定の枠から部材などが飛び出した場合のペナルティ、掃除などもきめ細かに評価される)

ポラス 4年振り7度目の耐力壁トーナメント優勝 総合は滋賀職能大が4連覇(2015/8/14)

 

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