積水ハウスグループは9月25日、横浜市の「公民連携による課題解決型公募」で選定されたサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)「グランドマスト横浜浅間町」が竣工したのに伴い関係者に公開した。居住面積を最低でも約45㎡確保し〝自立型〟高齢者のニーズに応えるとともに、地域コミュニティ・多世代交流施設を併設しているのが特徴だ。
物件は、相鉄線天王町駅から徒歩9分、横浜市西区浅間町5丁目に位置する10階建て全76戸。専用面積は45.15~77.29㎡、月額賃料は147,000~244,000円。管理費は20,000円。生活支援サービス費は1名につき30,000円(2人以上は15,000円)。設計・施工は積水ハウス。貸主は積和グランドマスト。
現地は、古くから地域住民に利用されてきた「横浜市総合福祉センター」の跡地。市は平成25年、高齢者向け住宅を含む施設とすることや、交流スペース、コミュニティハウス、地域防災・地球温暖化対策に供することなどを条件に「公民連携による課題解決型公募」を実施。応募8社グループの中から交流スペース(約484㎡)、コミュニティハウス(約306㎡)の提案が特に優れていた積和不動産が選定された。売却価格は約3億6,000万円(約27万円/坪、容積率400%)。
サ高住は、45.15㎡の1LDK~77.29㎡の2LDKまで6タイプ。各住戸に床暖房、人感センサー、緊急通報ボタンなどが標準装備。もっとも人気があるタイプは48㎡のBタイプで9戸すべてが予約済みだという。
1階の交流スペースには入居者も地域住民も利用できるコミュニティカフェやアクティブスペース、2階のコミュニティハウス内には蔵書約2.8万冊の図書館が併設される。
記者説明見学会で積和グランドマスト・小山健社長は「今後5年間に東京、大阪、名古屋圏で5,000戸を目指す」と積極展開していくことを明らかにした。
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これまで記者が見学してきたサ高住は、いかにも高齢者を隔離する〝施設〟のようなものも少なくなかったが、今回は間違いなくレベルが高い。居住面積だけでなく、共用廊下・エレベータホールが広く、災害時には地域住民が避難できるよう防災倉庫やかまどベンチも設置されていた。地域の交流センターや図書室が利用できるのもいい。
PPPの手法がもっともよく効果的に発揮された好例だろう。各自治体は、今回のようなコミュニティ施設などを併設したものについては容積の割り増しなどインセンティブを与えるなどの優遇策を取り、質の高いサ高住やマンションを誘導してほしい。
とはいえ、サ高住が普通の高齢者が無理なく利用できるようにするためには課題も多い。分譲マンションもそうだが、賃貸マンションの家賃は総体的に高すぎるような気がしてならない。東京圏では郊外でも5坪で5万円くらいする。年金生活者にとってこの額の負担は大きい。
また、対象が60歳以上で、居住面積が原則25㎡以上(共用の食堂、浴室などがある場合は18㎡以上)、バリアフリーであること、専門家が常駐し入居者の安否確認をすることなどの条件は厳しいようで曖昧であることから、〝玉石混交〟の市場が形成されている。わかりやすい格付けも必要かもしれない。