議会で議決されたにも関わらず、住民や来街者の反対により工事が中断になったままの街路樹伐採問題について千代田区議会は10月3日、企画総務委員会を開き街路樹の伐採中止・保存を求める3つの陳情について一括で審査した。議会側は住民らが反対運動を起こすまで神田警察通りのイチョウの大木32本などが伐採されることを認識しておらず、行政側は「説明不足」を認めたものの「了解が得られた」を繰り返した。審査は3時間以上に及んだが、結局、「誰が、いつ、どこで」伐採を決めたかの事実関係は明らかにされなかった。17日に再び論議される。
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「誰が、いつ、どこで」の文言をここでも聞くとは思いもよらなかったが、陳情書の一つに共立女子学園出身のブライダルファッションデザイナー・桂由美氏を代表とする共立女子中学高等学校 卒業生有志の「神田警察通りの街路樹の保存保護を求める陳情書」が含まれており、問題になっている共立女子学園キャンパスに隣接する「街路樹は…人生の一部です」と述べられているのには心底驚いた。桂氏らは次のように述べている。
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「本陳情は、歴史ある街路樹をこれ以上一切伐採せず、街路樹を伝統的景観の一部として愛護し、未来まで健康に育成することを求めるものです」
「千代田区一ツ橋は近代日本の高等教育の揺籃の地です…日本学校史上特筆すべき場所です」
「わたしたち陳情者は、共立女子学園で中学高校大学時代を街路樹とともに過ごしました」
「ここで学ぶ者は樹齢の長い大木を見るたび、この地が如何に長く歴史的教育の場であったかを感じ、誇りを覚えます」
「街路樹は近代史の一部であり、学校の一部であり、学生生活の一部であり、人生の一部です。千代田区で得た学風と分かちがたく結びつき記憶しています。したがって街路樹は全体として学校史を具現化する風景を形成しており、これ以上1本たりとも傷つけるべきではありません」
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行政担当者や区議が、桂氏ら陳情者が街路樹に対して抱いている感情を少しでも理解しようという創造力を持ち合わせていれば、このような事態には絶対にならないはずだ。
いま「豊洲問題」が大きな関心事になっているが、誤解を恐れずに言えば、豊洲問題は単なる技術の問題だろうと思う。食の安心・安全の根本的な問題にまでは波及しないのではないかと考えている。そこまで関係者は堕落していないと信じたい。
しかし、今回の街路樹の問題は単なる技術的な問題で済まされない。桂氏らが「人生の一部」といみじくも言ったように、人々の心のありようを問う問題だと思う。
豊洲は問題があれば修復は可能だ。しかし、樹齢80年のイチョウを伐採してしまえば、桂氏らは心のよりどころを何に求めることができるのか。
今回の問題は「イチョウは年を取りすぎてヒトとクルマに悪さをする恐れがあるので安楽死(担当者は「更新」「整理」という文言を使ったが)させます」ということではないのか。「角を矯めて牛を殺す」といえば言い過ぎか。
※この日の委員会の模様については後日改めて記事にします。
またまた「街路樹が泣いている」 千代田区、街路樹伐採で賛否両論(2016/9/8)