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2016/10/13(木) 00:00

〝千葉市に住もう〟 UR都市機構と千葉市が連携「近居」を支援

投稿者:  牧田司

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「千葉市における『近居』に関する記者説明会」(幕張テクノガーデンで)

 親子「近居」支援に都市再生機構(UR都市機構)と千葉市が連携-UR都市機構と千葉市は10月12日、千葉市における「近居」に関する記者説明会を開き、UR都市機構が賃貸住宅「近居割ワイド」拡充策を、千葉市が「三世代同居等支援事業」をそれぞれ説明、連携して推進していくと発表した。

 UR都市機構は平成25年、同一のUR賃貸住宅で近居、あるいは半径2㎞以内のUR賃貸住宅間で近居する場合、新しくUR賃貸住宅に入居する世帯の家賃を5年間5%ないし20%減額(20%減額は世帯所得合計が月25.9万円以下)し、2世帯が同時にUR賃貸住宅に入居した場合、両世帯を減額する「近居割」を開始。現在、全国約1,100団地で利用が可能になっている。

 また、平成27年9月からは、UR賃貸住宅以外の住宅と、UR賃貸住宅とで近居を始める場合、新しくUR賃貸住宅に入居する世帯の家賃を5年間5%ないし20%減額する「近居割ワイド」を導入。全国454団地を含む95エリアで可能にした。

 千葉市内では今年9月、千葉市との連携によって市内5区の大半の団地(24団地)に「近居割ワイド」を拡充した。

 この結果、「近居割」は開始初年度の平成25年度は平均月6件の利用だったのが26年度は平均月8件に増加。「近居割ワイド」は開始初年度の平成27年度は平均月3件だったのが、今年度は平均月11件に増加。4~7月の4カ月間の契約件数は64件で、前年同期比1.7倍に増加した。

 一方、「千葉市三世代同居等支援事業」は平成24年に開始した事業で、高齢者の孤立防止と家族の絆の再生を目的に、「親と子と孫」が市内に同居または近居(直線で1㎞)に居住する場合、税金を滞納していないことや公的住宅扶助を受けていないことなど一定の条件を満たせば、住宅の新築、改築、購入、賃借に要する費用を3年間にわたって助成するもの。

 最初の1年目は要した費用のうち最高50万円の助成をし、2年目、3年目は15万円を限度に持家の場合は固定資産税・都市計画税相当額を、借家の場合は年間家賃相当額を助成する。持家の場合、市内業者と契約して施工を行った場合は、助成限度額を100万円に増額する。

 平成24年度の実績は55件で、25年度が57件、26年度が69件、27年度が63件。27年度の内訳は新築が15件、購入が9件、改築が12件、増築が2件、賃貸が8件、転居が17件。

◇       ◆     ◇

 UR都市機構の取材は10数年ぶりだ。九段に本社機能があったころはしょっちゅう取材し、広報担当者などとの懇親会(飲み会)にも必ず顔を出した。当時、学生にもっとも人気がある就職先の一つだった。「民業圧迫」を理由に分譲事業から撤退することが決まった平成9年前後、記者は「撤退反対」の論陣を張った。その後の行政改革の中で市街地整備や賃貸の管理中心の独立行政法人となった。2兆円を超える事業規模と優秀な人材を抱えていたUR都市機構を乱暴な手法-ありていに言えば、もっとも大変な開墾・種まき・水やり・施肥をやらせ、もっともおいしい果実を引きはがす-しかも官僚体質だけは温存させながら〝解体〟するのでなく、民営化していたら日本一のデベロッパーになっていたはずだ。

 そんなことはともかく、「近居」を千葉市と連携して推進していくのは結構なことだ。〝千葉市に住もう〟というキャンペーンを張りたいくらいだ。

 しかし、いくらURと千葉市が頑張っても飛躍的に伸びる事業とは思えない。UR都市機構が示した「近居割ワイド」が対象となる約3万戸の団地は「幕張ベイタウン」など一部を除いて管理開始が昭和40年代や50年代の郊外賃貸団地ばかりだ。耐震診断は行っているようだが、間取りや設備機器の陳腐化が進み、それなりに家賃は安いが、民間との競争力に欠ける。

 一例をあげる。昭和41年に管理開始した西千葉駅からバス12分の全2,094戸の「千草台」の家賃は29,600円~51,600円で、専用面積は27~52㎡だ。1坪当たり賃料は約3,300円~3,600円だ。賃貸住宅の相場はよく知らないが、東京の民間賃貸の3分の1くらいではないか。

 これほど安ければ立地、間取り・設備機器が劣っていようと入居する人がいるのではないかと思い、募集状況を検索してみた。4.5畳二間と6畳一間の3K(45~48㎡)で46件がヒットした。家賃は3万円台だ。驚いたというより当然だと思うが、この46件の「空き家」のうち2階が1戸で、3階が14個、そのほかは全て4階、5階だ。UR都市機構が管理開始した昭和40年代、50年代の賃貸住宅の多くは5階建てまででエレベータは設置されていない。

 この「千草台」のようにエレベータなしの団地では4、5階の住宅に大量の「空き家」が発生しているのはよういに想像がつく。市内3万戸のうち2万戸くらいがエレベータのない3~5階に該当するのではないかと思う。

 それでは、エレベータを設置してバリアフリー化を図り、間取りも一新すればいいではないかという声もあるが、UR都市機構は慈善団体ではない。独立行政法人として「自立」が求められている。大幅な改修に伴うリスクは取れない。

 何の解決策も見いだせない現状を考えると暗澹たる気持ちになるのだが、UR賃貸には「U35割」制度もある。契約者が35歳以下の学生、または35歳以下の親族と同居する場合、3年間の定期借家契約により割引料金で入居できるというものだ。これらを利用すれば、住居費を安く抑えられるのではないか。

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 千葉市の「三世代同居」を支援する制度もいい。新築や分譲に対する支援策は多くの自治体が実施しているが、賃貸に対しても助成するのは大歓迎だ。

 しかし、これもまた問題がないわけではない。助成資格要件に、すでに同居または近隣(直線で1㎞)に居住している場合は対象外とある。これまで苦労して親、または子、孫の世話をしてきた人が対象外というのは明らかに不公平だ。

 また、市内業者による施工・分譲については100万円に増額するというのは分かりやすいようで分かりづらい。ユーザーの立場からすれば、施工・分譲業者がどこであろうと関係ない。地場の業者を支援するのはほかの方法だってあるはずだ。

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 UR都市機構と千葉市の担当者の話を聞きながら、〝千葉市に住もう〟という記事を書こうと考えたのだが、関係者は千葉市に移り住みたくなるような街づくり・政策を進めるのが先決ではないかとも思う。

 卑近な例だが、人口が100万人近い政令都市の千葉市は、他の市と比較してマンションの相場は圧倒的な差をつけられている。東京23区はともかく、横浜市では横浜駅の中心市街地なら坪400万円を超える。川崎市も川崎駅周辺の1等地なら坪400万円近くになるはずだし、埼玉県さいたま市の浦和駅、大宮駅は坪300万円をはるかに突破する。

 千葉駅はどうか。近々分譲されるマンションがあるが、坪250万円くらいではないか。なぜこんなに差があるのか。一言でいえばそれだけ民力が低いからだ。市の財政事情も悪く、市民一人当たりの所得も同じ千葉県の船橋市や柏市などより上回るが、浦安市、市川市、習志野市、流山市などに負ける。

 その理由として管理開始が昭和40年代、50年代のUR都市機構の賃貸が多いのもその一因だと記者は推測するのだが、どうだろう。

◇       ◆     ◇

 この日、UR都市機構が配布した報道用基礎資料「UR賃貸住宅が提唱する『近居』というライフスタイル~近居割を軸としたUR賃貸住宅の取り組み~」は非常によくできている。17ページにわたるもので、民間の大和ハウス工業、三井不動産レジデンシャル、野村不動産アーバンネット、住友商事・住商建物の取り組みも紹介されている。

 その割に出席した記者は10数人しかいなかった。会場が遠いからか、呼び掛けたURや千葉市に問題があるのか、「近居」に反応する記者がいないためなのか…。

 

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