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2016/10/20(木) 00:00

デザインが企業・経営者、住宅を変える 三井デザインテックが第2回セミナー

投稿者:  牧田司

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パネルディスカッション(三井倶楽部で)

 三井デザインテックが10月19日、昨年に引き続く第2回目のプレスセミナー&懇親会を三井倶楽部で行った。5mはありそうな天井には豪華なシャンデリアが輝き、壁も床も無垢材が採用されている会場にうっとりしながらも、同社デザインラボラトリー所長・見月伸一氏の報告や、伊藤忠ファッションシステム取締役ifs未来研究所・川島蓉子氏と見月氏などとのパネルディスカッションに夢中で聞き入った。

 「コト」「空間エクスペリエンス」などの魅惑的な言葉の意味を必死で考え、デザインが新しい空間価値を創造し、働き方、住まい方、生き方を変え、さらには日本を変える力になると確信した。ライスは食べなかったが、ビーフカレーは特別だった。ワインもおいしかった。

 セミナーでもっとも心に響いたのは、川島氏が「経営者もデザイナーもいつも未来を見つめている。両者がタッグを組めば素晴らしい未来が開ける」という趣旨のことを話された「コト」だった。

 記者もその「コト」を強く感じる。職場環境が社員同士のコミュニケーションをスムーズにし、生産性を上げることはこれまでもたくさん紹介されている。

 しかし、その動きはあまりにも小さく遅い。なぜか。企業・経営者は労働環境を変えることに後ろむきで、デザイナーもまた真剣にタッグを組もうとしていないのではないかと考えている。

 一例を示す。電通の女性新入社員が過労で自殺したのに衝撃を受けた。〝事件〟が報じられたその日(10月7日)、厚労省は過労死等防止対策推進法が施行されたのを受けて「過労死等防止対策白書」を初めて公表した。

 全体として労働時間(パート含む)は年々短くなっているが、長時間労働はまだまだ高い水準にあり、年次有給休暇の取得率は5割を割る水準で推移したままで、仕事の量や質にストレスを抱える労働者が多く、精神障害に係る労災申請が増加していることなどが報告されている。

 記者が驚いたのは、厚労省が労働時間、労働条件などについて企業1万社と労働者2万人にそれぞれアンケートを行ったのだが、回答は企業が1,743件で、労働者は19,583件だったことだ。回答が件数になっているので単純比較はできないが、仮に回答をそれぞれ社、人とすれば企業は17.4%で、労働者は97.9%となる。法律が施行され、安倍内閣が働き方を改革しようと必死になっているのにこれはどういうことか。

 川島氏が「経営者とデザイナーがタッグを組んだら…」と話したのはこのことだろう。デザイナーは毎日、労働・職場環境を見ており、未来も思考しているはずだ。その知見を生かし、企業・経営者に提案していくことが求められている。劣悪な環境を劇的に変えられるはずだ。

 もう一つ、デザイナーに期待したいのは、戸建てやマンションなどの住宅に対する提案力のアップだ。

 セミナーではユーザーの本物志向、素材へのこだわりが強まっていると報告された。その通りだ。しかし、このところの価格上昇で、設備仕様はケミカル製品だらけになってきた。専有圧縮も甚だしい。この悪い流れを変えてほしい。デザイナーの仕事は単なる意匠デザインだけでないはずだ。商品力を高めるのもデザイナーの役割だ。

 これは余談だが、参考になりそうなマンションのプランについて。三井不動産レジデンシャルが先日、「パークコート青山ザ タワー」のモデルルームをメディアに公開した。巨匠と呼ばれるブルーノ・モワナー氏がデザインを担当している115㎡のプランは、何と玄関がなくリビングインタイプだった。

 記者は欧米のマンションのプランがどうなっているか知らないが、リビングインタイプは少なくないそうだ。わが国で受け入れられるか疑問だが、提案してみる価値はありそうだ。これもまたマンションの間取りを劇的に変えるかもしれない。

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◇       ◆     ◇

 ついでに三井倶楽部で発見した「コト」を一つ。三井倶楽部には「内外美術の粋を集め、とりわけロダンの彫塑、ターナー、サー・ト一マス・ローレンス、ドービニー、ニコラス・マースの油絵等の逸品があり、各室に配備の家具、什器、その他の調度品等もそれぞれ他に比類を見ない豪華なものです」(三井倶楽部ホームページ)とある。

 昨年は見過ごしたのか気が付かなかったが、はっとする絵を帰るとき見つけた。クロークの前に飾られた年代も画家名も不詳の50号はありそうな大作だ。裸婦がベッドに横たわっていた。絵の傷み方、陶器のような肌から判断して、描かれたのはルネサンス時代だろうと見当をつけた。

 しかし、その絵は単に裸婦が横たわっているだけではなく、丸裸の女性の前に黒い衣服を着た男が不義をなじるのか、これから犯そうとするかのような形相で見つめているではないか。

 これに似たような絵は、ルーベンス「レウキッポスの娘たちの略奪」を筆頭にいくつか見たし、レンブラント「ダナエ」、マネ「オランピア」、アングル「トルコ風呂」、マネ「草上昼餐」、ジャン・レオン・ジェロームの一連の「奴隷市場」などスキャンダラスな絵もたくさんある。(女性はどう見るかわからないが)率直に美しいと思う。

 ところが、三井倶楽部に飾られている絵には何とその背後のカーテン越しにその場面を覗く、明らかに男と思われる黒い影が描かれている。これには酔いがいっぺんに醒めた(と思っただけかも)。

 この黒い影は画家そのものであり、画家にそのような絵を描かせた王侯貴族だと理解した。年代も画家名も不詳なのは、名前が明らかになればそれこそ袋叩きにあうのを恐れたためだ。王侯貴族は卑猥な絵を描かせ私蔵した。

 この絵も、描いたのは世に伏せなければならないほど著名な画家であり、描かせたのも著名な貴族だったに違いない。鑑定に出せばとてつもない値段がつくかもしれない。そんな絵がさりげなくクロークの前に飾られている。

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懇親会

コンドルが設計した「綱町三井倶楽部」を観た 三井デザインテックがセミナー(2015/10/22)

 

 

 

 

 

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