自分で自慢するのは憚れるのだが、記者にも少しはマンション用地の目利き力があることを証明するマンションを紹介する。日本エスコンが11月下旬に分譲する「Grand Le JADE(グラン レ・ジェイド)若松町レジデンス」だ。駅から徒歩3分と近いだけでなく、閑静な住宅街の一角で、3カ所に吹き抜け(ライトコート)を設けたプランがいい。そして何よりもいいのが、長さ約100mのアプローチ空間が付くことだ。
物件は、都営大江戸線若松河田駅から徒歩3分、新宿区若松町に位置する6階建て全31戸。専有面積は57.33~84.13㎡、価格は未定。竣工予定は平成29年6月上旬。設計・監理はスタイレックス。施工はウラタ。売主は同社(事業比率95%)のほか三信住建(同5%)。販売代理は東急リバブル。
現地は、敷地は小笠原礼法の宗家と親戚関係にあった西脇健治邸跡地で、幅約4.5m、奥行き約100mの私道(旗竿状敷地)付き。隣接地は東京タワーや早稲田大学大隈講堂の設計を手掛け、わが国初の壁式工法による戸建て住宅を自宅として建て、その後、早大に寄贈された内藤多仲の屋敷跡地。道路に面した敷地は大願寺のお寺。
住戸プランは南向き中心に1フロア7戸が基本で、5階は4戸、6階は2戸の構成。吹き抜け(ライトコート)を3カ所に設置し、各住戸に光と風を取り込み、かつ廊下側に直接居室が面さないように工夫しているほか、多面採光、ワイドスパンを採用、角住戸比率(58%)を高めているのが特徴だ。
設備仕様では、ロートアイアン調の門扉がポーチに付き、ディスポーザー、食洗器、天然石キッチン・バックカウンター、グローエ水栓、ミストサウナ、リビングエアコンなどが標準装備。
11月からモデルルームをオープンし、これまで3週で予約を含め70件に達し、すべて満席。販売を担当する東急リバブルプロジェクトチーフ・葛籠山(クズカゴヤマではなくツヅラヤマ)直樹氏は「11月のこの短期間にこれほど集客できる物件はまずない。新宿区の万で駅近マンションは少なくないが、ほとんどが道路沿い。ここは車の音など聞こえないし、お客さんの評価も高い。間違いなく早期完売する」と話していた。
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正直に話そう。記者はもちろん日本エスコンの名前は知っていたし、物件も2、3見たことがあるような気がするが、記憶に残っていないくらいだから、大阪が本社の〝並み〟の中堅デベロッパーだと思っていた。今年6月、東証一部に上場して〝大きくなったものだ〟というくらいの認識しかなかった。
今回の物件も、マンションの用地担当者のように足を棒にして見つけたのではない。記者が糖尿病の治療のために定期的に通っている国立国際医療センター病院に行く途中に看板がかかっていたのを見たのに過ぎない。
その敷地は、業界では旗竿状敷地と呼ぶのだが、小路は寺の壁と同様、大谷石が敷かれ、まっすぐに伸びていた。隣接地には巨木が茂っていた。これを見たとたん、商品企画次第では間違いなく売れるマンションになると判断した。
その通りになるかどうか確認するために初めて同社に取材を申し込んだ。結果はその通り、商品企画に力が入っている。今どき、規模がそんなに大きくないのにライトコートを3カ所に設置するデベロッパーはまずいない。このライトコートの設置によって、寝室が直接廊下に面する住戸は一つもないようにしている。モデルルームタイプ(81.35㎡)にはインナーバルコニーもついていた。開口部は8カ所もあった。
同社に聞いたら物件名に〝Grand(グラン)〟を付けたのは首都圏では今回が初めてだそうだ。価格(坪単価)は「未定」とのことだが、極めてリーズナブルな価格設定になるはずだ。馬喰町、横山町などの問屋街が軒並み坪400万円を突破してきているが、それらとは立地が全く異なるとだけしておこう。
〝目利き力〟があると言ったのは、たまたま恵まれた土地を見つけただけであるということを白状する。それにしてもわずか31戸の物件に3つのライトコートを設け、ディスポーザーも設置するとは-日本エスコン(用地を取得したのは三信住建だが)のこれからのマンション事業に注目したい。
ついでだが、カフェ付きマンションとして話題となった祖師ヶ谷大蔵のマンションは、記者が見に行ったときは昼頃だったせいもあるのだろうが、50人くらいの客で店はごった返していた。