住宅メーカー8社が共同運営・活動する住宅エクステリアガーデン研究会(JEG)は11月14日、第4回「JEG DESIGN CONTEST 2016」プレゼンテーション大会を開き、グランプリ賞に積和建設九州の尾崎孝也氏と安部美和子氏の「晴好雨奇」を選んだ。
応募総数は1,400作品で、二次審査を通過した5部門18作品が優秀賞として発表された。5部門とも積水ハウスグループが最優秀賞を受賞した。グランプリ賞は昨年も積水ハウスだった。
今回新たに設けられた「新人賞」は、下久保美咲氏(ナテックス)の「時間・空間・こころにゆとりの国立くらし」が選ばれた。
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記者は、樹齢80年のイチョウの伐採をめぐり問題となっている千代田区の取材が急きょ入ったため、JEGの会場に駆け付けたときは、プラントハンター そら植物園代表・西畠清順氏の基調講演が終わる間際だった。西畠氏は樹齢1000年のスペインのオリーブを小豆島に移植して成功させた話をされたようだ。
小豆島のオリーブの話は千代田区のイチョウと通じるものがあると思う。国立科学博物館名誉研究員・近田文弘氏によると「イチョウは1000年以上生きる。千代田区の街路樹はまだ若木。伐る必要など全然ない」と話した。
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優秀賞に選ばれたエクステリア大型、エクステリアベーシック、ガーデン、街づくり・集合住宅、リフォーム5部門の最優秀賞はいずれも積水ハウスと積和建設の社員の作品だった。主催者だったか受賞者だったか「この研究会の認知度が低い」と語ったが、それにしてもハウスメーカー8社も揃って、積水に総取りされるとは情けない。審査員の一人でE&Gアカデミー青山校校長・古橋宣昌氏は「今回は積水ハウスが総取り。来年は各社の気合が入るのでは」と話したが、他社の奮起に期待しよう。
古橋氏はまた、「皆さんのノウハウを若い人に伝え、働きやすい環境を整え、美しい日本の街並みを伝えていく業界にしましょう」と呼び掛けた。
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記者は聞いていないのだからその理由は知る由もないのだが、グランプリ賞に輝いた積和建設九州の尾崎孝也氏と安部美和子氏の受賞シーンが〝泣かせた〟。
受賞の感想を求められた尾崎氏は、関わった関係者にお礼の言葉を述べたあと「凸凹コンビの夫婦ですので、プレゼンの練習ではテレもあったり、微妙な空気も流れたりもした。受賞には言葉もない」と話し、奥さんの安部氏は「ありがとうございます」と涙ぐんだ。
これにはまだ続きがあり、審査委員のJAG会長・正木覚氏が「(審査で)初めて涙した。自分でも止められない内容を含んでいた」と語った。さらにまた、JEG審査委員長・粟井琢美氏(三井ホーム)も「ウルルっとした」と、二人の〝幸せガーデン〟提案を褒めた。
記者は、二人が侃々諤々、自らの意見を譲らず、またプレゼンの練習で相手に難癖をつけるうちに疲れ果て、やがて怪しい空気が流れ、2匹のフカのように深い海底に沈んだと理解する。デザイン提案に至る過程が〝泣かせる〟のであって、提案そのものが〝泣かせる〟のではないはずだ。