柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)と三井不動産は11月22日、柏の葉スマートシティの次期開発エリア「柏の葉イノベーションキャンパス」の中核ゾーンとなる「アクアテラス」の一般供用を開始するとともに、米国のグリーンビルディング協会(USGBC)が運営する国際的な環境性能認証制度「LEED(リード)」の街づくり部門「ND(Neighborhood Development:近隣開発)」の計画認証で最高ランクとなる「プラチナ認証」を取得したと発表した。プラチナ認証取得は日本初で、42haに及ぶ規模は世界最大級となる。
「アクアテラス」の面積は約2.3ha。雨水流出抑制を目的に造られた「2号調整池」を大規模改修し、親水空間化したもの。「調整池」に新たに6 カ所の階段・スロープを設け、利用者は街のさまざまな方向から水辺近くまで降りることができ、各所にベンチやデッキ、「三角広場」、「親水テラス」など賑わいを創出するスペースも随所に設置。地域住民や周辺企業が主催するイベントや各種のアクティビティの開催も行っていく。
また、「交流空間」としての機能の強化を実現する複合商業施設「柏の葉T-SITE」を2017 年春にオープンする。同施設は、カルチュア・コンビニエンス・クラブが手掛けるライフスタイル提案型施設で、書店・カフェ・各種ショップなどで構成される。
UDCKが柏市と協定を結び、調整池を維持・管理していく。植栽や安全管理にかかる費用は、調整池に隣接する土地所有者が協議会を設立して負担する。
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「アクアテラス」のお披露目会に先立って行われた関係者によるプレゼンテーション・トークセションで、出席した秋山浩保・柏市長は、「市の中長期計画で『柏の葉』地区を将来にわたって千葉県全体をけん引するエリアの一つとして位置付けており、規制の強化と緩和を駆使して新たなチャレンジを行っている。今回の『アクアテラス』は難易度でいえば100%難しいのだが、皆さんの熱意に後押しされて実現した。街の大きな付加価値になる」と関係者を称えた。
北原義一・三井不動産専務は「『柏の葉』は300haに及ぶ規模。『環境共生都市』『新産業創造都市』『健康長寿都市』の3つのテーマを掲げ、日本から世界に発信する他に例を見ない壮大な実証実験プロジェクト。『2号調整池』の用途変更も極めて画期的なこと」と語った。
出口敦・UDCKセンター長(東大大学院教授)は、「一つの空間に一つの機能を持たせるのが従来の都市計画の手法。今回の計画は新たなモデルケースとなる」と話した。
「柏の葉T-SITE」を出店するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の武田宣副社長は「コンセプトは『代官山 蔦屋書店』などと同じ。日常をワクワクしていただく、『T-SITE』ができて変わったなという人が一人でも増えてくれたらうれしい」と話した。
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40年近く郊外の大規模開発を取材してきたが、調整池が〝主役〟の取材は初めてだった。調整池といえば、立派な水辺空間があるのに、コンクリとフェンスで囲まれ「立ち入り禁止」の看板が掲げられているのが普通だ。それを「アクアテラス」が覆した。秋山市長は「行政単独では費用負担も大きくまずできない」と話した。
「画期的」な親水空間の演出には違いないが、イベントに参加した地元居住者の女性は「子どもが水遊びできるようしてほしい」と話した。水辺にみんなを誘導しながら「水面への立ち入り禁止」は残酷だ。蛍を誘っておいて水を飲ませないのと一緒だ。
調整池の深さは30~80㎝だそうだ。水は流れており、魚も泳ぐぐらいの水質だ。メタンガスは発生しない。こどもの事故など起きるはずがないではないか。仮に起きても秋山市長の責任を問う住民はまずいない。
かつて調整池で子どもの事故はあったかと国交省にも聞いたが、国交省は把握していないということだった。