青木茂建築工房は12月21日、事業主のレーサムの協力により、三鷹市にある築44年の寄宿舎をリファイニング手法によって賃貸住宅に用途変更する「(仮称)井の頭ビルリファイニング工事」の現場解体見学会を行った。100名を超える見学者が集まった。
建物は、JR三鷹駅から徒歩15分、三鷹市下連雀2丁目の紫橋通りに面した近隣商業地域(建蔽率80%、容積率200%)と第一種低層住居専用地域(建蔽率40%、容積率80%)にまたがる敷地面積約459㎡、建築面積約296㎡、延床面積約2,478㎡の鉄骨鉄筋コンクリート造9階建て。確認申請は昭和47年。設計監理は青木茂建築工房。施工は日本建設。建築主はレーサム。
建物は検査済証がないため、国土交通省のガイドラインに基づいて既存不適格建築物の証明を得て、さらに現行法の高さ規制(25m)、日影規制、容積率などの集団規定、構造耐力や階段などの単体規定の法規には適合しないが、建設当時の法規は満足していることの証明を行い、特定行政庁との協議を重ねて実現したもので、現行法による新たな確認済証を取得する。
具体的には、既存階段を撤去し、新たに特別避難階段を設置。寄宿舎部分を共同住宅に用途変更し、耐震補強も行い、耐震評定所を取得する。
また、一連の工事と合わせ内外装、設備の一新し、現在の市場にマッチした共同住宅にプラン更新する。
見学会で挨拶した同工房・青木茂代表は「リファイニングを知ってもらうには工事途中の現場を見てもらうのが一番。不適格部分を残しながら、商品性を高めたのが特徴」と述べた。
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建築のプロの方なら、前段の記事を読まれてよく理解できるかもしれないが、そうでない方はまったく何のことだかわからないのではないか。
かく言う記者も解体工事を見ても何もわからない。むき出しのコンクリを見るだけだ。なので、早々に退却した。
しかし、このリファイニング工事がどのようなものであるかは容易に想像がつく。つまり、この敷地を更地にして、用途が何であれ建物を建てたら、建蔽率、容積率、高さ規制、日影規制などから判断して現在の建物の半分も建たないのではないか。
また、現在の建物の高層階の平面図を見ると、1フロアは25㎡くらいの10室と2室分相当の待合室、洗面室、便所、浴室を備えた共用部分があるが、現在では社員寮としても使用にたえないものであることがわかる。
それをリファイニング手法によってエレベータを付け替え、1室分を特別避難階段にする一方で、居室は1フロア11室を確保。各部屋(25㎡くらいか)にはバス・トイレ・洗面・キッチンを設置する。
どうだろう。従前はまったく商品価値のない建物だ。〝たこ部屋〟(記者はしらないがおそらくこんなものだろう)同然だったものを、市場性のあるものに一新する。仮に分譲マンションにすれば、最低でも坪単価は250万円で、グロスでは2,000万円を突破する。賃貸でも利回りは4%くらい確保できるはずだ。
それにしても、この日はそんなに寒くはなかったが、暮れの忙しい日に完成お披露目ではなく解体工事に100人も見学者を集めるとは。〝建築の魔術師〟青木氏の人気度をまざまざと見せつけた。
これまで書いた青木茂氏の記事は、「千駄ヶ谷」「笹塚」「竹本邸」「再生建築学」などの語句と「RBA」で検索していただくと5つ6つはヒットするはずだ。