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2017/01/21(土) 17:21

女性輝けないトイレ 「利用しない」公園90%、駅38%、職場30% 国交省アンケート

投稿者:  牧田司

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「女性が輝く社会づくりにつながるトイレ等の環境整備・利用の在り方に関する協議会」(総合庁舎2号館)

 第2回「女性が輝く社会づくりにつながるトイレ等の環境整備・利用の在り方に関する協議会」(座長:大森宣暁・宇都宮大教授)が1月20日、国土交通省内で行われた。

 協議会は、平成26年10月に「すべての女性が輝く政策パッケージ」が決定され、女性活躍担当大臣から国交大臣に同省所管分野のトイレの整備を進めることが要請されたことを受けて論議されているもの。平成27年6月、第1回協議会が開催された。その後、2度のWGとアンケート調査が行われている。

 今回は、大森座長のほか学識経験者の長谷川万由美・宇都宮大教授、仲綾子・東洋大准教授、小林純子・設計事務所ゴンドラ代表や、子育て関連団体、施設設置管理者団体、地方公共団体、関係行政機関など39名が参加。取りまとめ骨子案などについて論議された。

 取りまとめ骨子案には、女性トイレの行列解消、清潔性・快適性の向上、安心・安全の確保、情報発信、マナーの啓発などが盛り込まれた。3月に会合を開き、取りまとめ案を論議する。

 論議では全参加者のうち約10名の少数派の女性が圧倒。様々な問題点を指摘した。「清潔感がない」などと指摘された公共、交通機関団体の男性側は「コスト」など〝言い訳〟が目立った。

◇       ◆     ◇

 第1回目の協議会でトイレに関するエビデンスが少ないという意見が多かったのを受けて国交省が昨年末行った同省インターネットモニターアンケート(女性414名、男性470名)結果がなかなか面白い。男女による差異がかなり明らかにされた。

 外出先でトイレを利用する場合に重視することについては女性も男性も「清潔であること」がそれぞれ76.6%、68.1%を占めだが、洋式便器と和式便器のどちらを好んで使用するかの問いには、「和式」「どちらかといえば和式」が女性は19.3%なのに対し男性は7.3%。かなり差がでた。

 利用場所も微妙に異なる。利用場所について女性が「よく利用する」「時々利用する」場所ごとの比率を紹介する。( )内は男性。

 ①駅61.4%(76.9%)②交通施設77.6%(77.5%)③コンビニ53.2%(75.1%)④大規模商業施設93.3%(90.2%)⑤公園など9.7%(32.1%)⑥職場68.4%(86.2%)。

 この逆、女性が「ほとんど利用しない」「利用しない」場所ごとの比率を見てみよう。( )内は男性。

 ①駅38.4%(23.2%)②交通施設22.0%(12.2%)③コンビニ45.1%(24.3%)④大規模商業施設6.0%(8.7%)⑤公園89.9%(66.8%)⑥職場30.5%(12.4%)になっている。

 この差異から読み取れるのは、トイレに求める清潔度合いや使用目的が男女間で異なることだ。男性はどの場所でも比率が一定しているが、「用足し以外はしない」つまり用足しの目的が達せられれば場所を選ばないことがうかがわれる。

 一方、女性は目的を達するために場所を選び、我慢をし、耐え忍ぶ意志の強さがあることが見て取れる。駅のトイレは、「清潔感がない」(64.3%)「清掃が行き届いていない」(40.1%)「行列に並ばなければならない」(44.0%)などの「不便・不満・不安」が寄せられた。

 男女とも総じて満足度が高い大規模商業施設だが、女性の「不便・不満・不安」の第1位は「並ばなければならない」で47.6%(男性15.5%)もあった。公園では「並ばなければならない」は2.4%だが、「安心して利用できない」女性は51.4%(男性31.9%)にのぼった。

 用足し以外にトイレを利用する人が多いことも分かった。男女とも駅や交通施設、大規模商業施設では「身だしなみを整える」目的が多く、女性はさらに「化粧」が加わる。

 このほか着替え、おむつ替え、ゴミ捨て、携帯やタブレットの操作、荷物の整理などが一定数あり、少数だが睡眠、休憩・休息、読書、食事もある。職場トイレでの睡眠は女性2.0%、男性1.2%、休憩・休息は女性4.8%、男性3.4%の回答があった。

◇       ◆     ◇

 協議会を傍聴しようと思ったのは昨年末、全国低層住宅労務安全協議会(全国低住協)の「じゅうたく小町部会」を取材したとき、「女性活躍」を阻む労働環境の改善を進めないと「一億総活躍社会」の実現など絵空事に過ぎないと感じたからだ。「建築現場のトイレは利用しない」という女性現場監督の声を聞いたのは相当ショックを受けた。

 今回の会合でも、トイレの機能だけでなくベビーカーの置き場や授乳・調乳スペースがないこともストレスの原因となり、女性の社会進出を妨げる要因となっていることがよく理解できた。

 残念だったのは、授乳・調乳場所がどうしてトイレなのか、職場でもトイレを利用しない女性が多いことなどの原因、背景について突っ込んだ論議がされなかったことだ。

 この点について、長谷川教授は「子どもを産んだらおっぱいをあげる、このことを〝ジカボ〟(直母)と呼ぶんですが、これは基本的人権の問題。それが保障されないのは差別、マタハラと同じ」と語った。

 同感だ。われわれの世代は、女性が人前であろうが公共施設内であろうが、母親が堂々と胸をはだけ赤ん坊に乳をやるシーンを見ている。授乳がはしたない行為とされ、乳房を恥部のように隠さなければならなくなったのはなぜか。そうした歴史や文化、さらにはバリアフリー、ジェンダーの視点からもトイレ、授乳を考えてほしい。

 私事だが、これも小さいころ。男性はもちろん、老婆などが田んぼの畔で立小便を行うのは日常茶飯事だった。寒い朝、ケツをまくり放尿すると、湯気を立てキラキラと弧を描きながら田んぼの肥やしになる様は感動的でもあった。

 そんな経験がある記者は、東日本震災で新浦安を取材したとき、住宅街では公園で用足しした。住民からは、若い女性などは歩いて10数分の駅まで行くという話も聞いた(仮設トイレの利用のしづらさを考えると、うべなるかなと思った)。

 かつて、どうして明治大学は人気が高くなったのか明大理事長に聞いたことがあるが、理事長は立地がいいことと教育環境が整っていること、とくに女性のトイレをよくしたことを冗談交じりに話した。

労働環境改善活動にエール 全国低住協「じゅうたく小町部会」(2016/11/26)

 

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