埼玉県住まいづくり協議会は2月6日、設立20周年記念式典を開催、関係者ら約120名が集まった。
同協議会は平成8年10月、「埼玉で、がんばる! 埼玉を、創る!」を スローガンに、県内の住宅関連企業と行政・公益団体とが一体となり、優良な住宅供給やまちづくりを行うことで、県民の生活基盤の安定とその住環境の向上を図ることを目的に設立された。現在、会員は153に上っている。
式典では、風間健会長(高砂建設社長)が挨拶を述べたあと、上田清司・埼玉県知事が来賓として登壇、挨拶するとともに、県の住宅政策に対する貢献を称える感謝状を同協議会に贈った。
また、東京大学名誉教授・有馬孝禮氏が「大きなうねりの中の木材利用について」と題する講演を行った。
以下、上田知事の挨拶を紹介する。
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20周年を迎えられた埼玉県住まいづくり協議会が、県の住宅政策にこれまで多大な貢献を頂いたことに改めて厚くお礼申し上げます。
住宅メーカーの宣伝ではありませんが、気持ちのいい家に住んでいれば家に戻っても気持ちいいというのは間違いのないことであります。住宅は仕事を終え、次の英気を養う大変重要な空間であります。その空間をもっとよくできないかと、大手だけでなく新進気鋭の若い社長さんたちが集まってできたのがこの協議会であります。
協議会メンバーが供給される住宅は、いつ訪ねても〝なるほど〟というコンセプトが盛り込まれております。環境や教育などに配慮した特色のあるものを提供されておられる。
玄関にはベビーカーが置け、お父さんのゴルフバッグも置けるように工夫されている。屋根裏はミニシアターとか子どもが遊べるような空間にしておられる。様々な制約のある中でよく見せる工夫・方法を考え、ぎりぎりの線でちゃんとつくっておられる。
県はそうした皆さんの住宅づくりに応えなければならないと常に意識しております。
埼玉県には海はありませんが、河川面積は日本一であります。しかし、ヘドロの川であっては何にもならない。平成20年から『水辺再生100プラン』に取り組んでおります。県の政策の中でもっとも成果をあげているのがこの川の再生であります。
アユが棲める河川の割合はわたしが知事に就任した平成15年は52%でしたが、最近は89%にまで改善しました。ヘドロの川は清流になりつつあります。
東京都にもっとも近い朝霞市に黒目川(荒川の源流)が流れています。この川にアユが遡上するようになりました。
わたしはこのような顔をしておりますが、意外と虚弱体質でして変なものは食べられない。嫌だったんです、黒目川のアユなどを食べるのが。しかし一昨年〝大丈夫だ〟と勧められて塩焼きを食べたら、これがおいしい。何ともなかった。
このような環境改善の政策に協議会の皆さんが呼応され、質の向上に取り組んでおられるのはありがたい限りであります。
残念ながら、時として価格に見合わない質の低い住宅が提供されているのも事実です。しかし、少なくとも協議会メンバーが供給される住宅は、中古住宅市場で高い評価を受け、リフォームなどを経て生き延びることができると信じております。空き家も増えておりますが、健康長寿人生が全うできる、いろんな住み替えができる住宅であってほしいと思っております。
皆さんがこれからも質の高いコンセプトの優れた住宅を供給され、その先進事例が埼玉に根づき、全国に展開できるよう願っております。
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上田知事の挨拶は約10分間で、文章にすればこの倍くらいはあるのだが、要点を紹介した。記者は県の職員が書いた原稿をそのまま読み上げるのではないかと思っていたが、すぐに〝これは知事の自らの言葉〟ではないかと判断した。
紹介した記事を読めばオリジナルであることがすぐわかるはずだ。積水ハウスのCMの〝紹介〟から始まり、玄関や屋根裏部屋の工夫に言及され、驚いたことに「価格に見合わない(実際は「価格以下」と知事は話した)住宅が供給されている」と語ったのだ。県の職員は「価格以下の住宅…」は口が裂けても言えないはずだ。記者だって面と向かって言えないし書けない。
協議会のメンバーの皆さん、風間会長、住宅業界全体に対して鋭い指摘をされたが、これほどうれしい温かい言葉はないはずだ。知事の言葉に応えないといけない。
記者も同協議会の先進の活動(「住まい協モデル浦和美園」がまさにそう)が全国に広がるよう期待したい。