東京建物は2月17日、代々木公園駅と代々木八幡駅からそれぞれ徒歩2分の免震タワーマンション「Brillia Tower代々木公園CLASSY」のモデルルームを2月18日にオープンすると発表。報道陣に事前に公開した。これまでの資料請求件数は約4,500件にのぼっており、来場予定組数も900件を突破するなど高い反響を呼んでいる。この日、気象庁は関東地方で春一番が吹いたと発表しが、ここにきて〝弱気〟一色のマンション業界に〝代々木旋風〟を巻き起こすことができるか。この春一番の注目物件だ。
物件は、東京メトロ千代田線代々木公園駅から徒歩2分、小田急小田原線代々木八幡駅から徒歩2分、渋谷区富ヶ谷1丁目に位置する19階建て全195戸。専有面積は50.36~142.79㎡、予定価格は6,000万円台~3億円台、坪単価は500万円台の予定。竣工予定は平成31年1月下旬。施工は清水建設。売主は同社のほか住友商事。分譲開始は5月の予定。
現地は、山手通りと井の頭通りの交差点に立地。代々木公園には徒歩5分、渋谷、原宿も歩こうと思えば20分圏。
建物は免震構造を採用。東京都の総合設計制度の適用により、エリアの高さ制限は40mから60mへ、容積率は400%から620%へそれぞれ緩和されている。空地率は約50%。東側が代々木公園方面で、西側は遠く富士山が眺望できる。基準階は1フロア11~12戸。最上階の7戸はプレミアム仕様。建物中央部に設備を集約し、屋上に蓋をすることで内廊下方式に近い仕様となる。
発表会に臨んだ同社執行役員住宅事業部長・菊池隆氏は、「渋谷、原宿も徒歩圏、代々木公園へ徒歩5分の都市と緑が融合した免震タワーマンション。3年前に用地を取得してから企画を練り、都の総合設計制度の適用も受けた。デザインには各専門家を起用した。当社のフラッグシップにする」と話した。
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いま業界は〝弱音〟一色。そんな中、都心の高額物件でよく売れているのは三井不動産レジデンシャルの「パークコート浜離宮 ザ タワー」と「パークコート一番町」だ。「浜離宮」は浜離宮恩賜庭園がすぐそばで、「一番町」は皇居に近接。単価は前者が約600万円、後者も意外と安そうで600万円台か(来週見学予定)。
この2物件に対抗できるかどうかがこの物件の見どころだ。皇居に近い「一番町」を超えるのは失礼だが、徳川将軍家の狩場だった「浜離宮」が相手なら、こちらは明治天皇を祀る明治神宮が徒歩圏だ。引けは取らない。
そればかりか、同社はここ数年「多摩ニュータウン」「池袋」「目黒」「東京八重洲」「上野池之端」などで業界をリードしてきた。とくに「目黒」では一挙にマンション相場を引き上げた。その貢献度は大きい。今回の「代々木公園」は低迷市場に活を入れられるかどうかが注目されている。
記者はとことん高値追及してほしいと思う。それだけの条件は揃っている。
ただ、「浜離宮」に勝てるか(単価が600万円という意味だが)となると、自信がない。相手は再開発計画が目白押しの浜松町が徒歩圏で、汐留に隣接している強みがある。
こちらも渋谷、原宿が徒歩圏で、表参道まで電車で数分という立地は負けないような気がするが、同社はそんな強気ではないような口ぶりだった。報道陣から当然のように単価がいくらかの質問が飛んだが、菊池氏は「何しろモデルルームオープンは明日から。お客さまの声を聞いてみないと…500万円台としかお答えできない」と言葉を濁した。
500万円台ということは510万円もそうだし590万円もそうだ。これでは記事の書きようがない。なので、以下は記者の独断と偏見であることを承知で読んでいただきたい。
ズバリ坪単価は550~580万円と読んだ。港区や中央区などでは軒並み坪400万円を突破しており、立地が恵まれているわけでないのに500万円を超えている物件も少なくない。並みの物件とは比べものにならないほどこちらのほうが価値は高い-これがその根拠だ。(「目黒」は大外れだった)
しかし、「浜離宮」の600万円に届くかどうかは自信が持てない。限りなく600万円に近付けるためには、物件の総合的な価値をきちんと伝えることが求められる。
その最大の価値、総合設計制度について少し触れたい。総合設計制度は、公開空地を確保し、住宅性能や環境性能が優れた建築物については高さ規制や容積率を緩和する制度だが、平成22年に大幅に改正されて以降の東京都の許可件数は激減している。
改正前の平成20年は改正を前にした駆け込みもあり30件に上ったが、平成22年には10件に減り、その後は23年8件、24年5件、25年4件、26年10件、27年7件、28年3件で推移。この5年間で許可された29件のうち用途が住宅なのは13件しかない。この13件のうち2件が同社の「上野池之端」と「代々木公園」だ。希少価値は高い。
もう一つデザイン・設備仕様レベルについて。ランドスケープデザインに塙ランドスケープデザイン、ファサードデザインに日建ハウジングシステム、アクアリウムアートに深田崇敬氏、共用部空間プロデュースに室賢治氏をそれぞれ起用しているように相当力が入っているのはよく理解できる。
しかし、モデルルームの設備仕様は-これは最近のマンションすべてにいえることではあるが-それほど高いとは言えない。最上階の100㎡超はフルオーダータイプで、天井高が約2.9m、水回り部分が約2.7mあり、ふんだんに自然石、天然木が使用されている億ション仕様はともかく、他の住戸は天井高が約2.5mで柱や梁型が住戸内に出ているものも少なくない。これをユーザーがどう評価するか…。緩和を受けているとはいえ、建築物の絶対高さを抑える地区計画の弊害がここにもある。