ブルースタジオと湘南ユーミーまちづくりコンソーシアムは2月19日、地域価値の再生がテーマの共同プロジェクト「(仮称)街とともに生きる賃貸住宅」シリーズの第一弾、神奈川県大磯町のリノベーション賃貸住宅「稜文舘」が竣工したのに伴うお披露目会を行った。
物件は、JR東海道線大磯駅から徒歩13分、神奈川県中郡大磯町東町に位置する鉄筋コンクリート造陸屋根2階建て全9戸(3戸は入居中)。専用面積は97.33㎡(1戸)と75.21㎡(8戸)。賃料は12.2万~14.5万円。建物は1988年9月竣工済みで、2017年2月リノベーション工事を実施。建築設計監理はブルースタジオ。事業主・貸主は湘南ユーミーまちづくりコンソーシアム。
現地は、低層住宅が建ち並ぶ住宅街で、保存林を挟んで湘南の海がすぐそば。建物はオーナーが自ら住み、賃貸マンションとして利用されてきたが、6戸が空きのままで、湘南ユーミーまちづくりコンソーシアムが昨年購入。ブルースタジオがリノベーションを担当して、今回完成させたもの。
1階のエントランス部分に地域に開かれた約8畳大の「コモンライブラリ」を設置。ミニキッチンやTVを備えて入居者や地域の住民のコミュニケーションの場としているのが特徴。居室は、床材に岡山県の国産スギ材を採用し、1階にはデッキ付き専用庭を設けている。
「コモンライブラリ」の立ち上げには、大阪を中心に全国約420カ所で展開している「まちライブラリー」が参加。「まちライブラリー」は礒井純充氏が提唱し、一般社団法人まちライブラリーが主宰するコミュニティ型ライブラリー。
お披露目会でユーミーホールディングス常務・西山和成氏は「当社は設立から約40年。現在、湘南エリアを中心に約12,000戸の賃貸住宅を管理している。この物件はここしかない価値をつくり出すためブルースタジオさんと連携した。歴史・文化の香りがする立地を生かし、入居者と地域の方々が物語をつくる賃貸住宅にしたい」と語った。
また設計監理を担当したブルースタジオのマネージャー・平宅正人氏は「街と共に生きることをコミットするのが我々の役割。入居者の方が将来戸建てに移り住むことも想定した〝トライアルステイ〟の場としても利用できるようモノ・コト・時間をデザインした」と話した。
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わずか9戸の賃貸住宅だがコンセプトがいい。大磯町にはたくさんの政治家や財界人、文化人が居を構えていた。「コモンライブラリ」の趣旨に賛同する人は多いはずだ。稀覯本は難しいだろうが、ものすごく価値のある本が寄贈されるかもしれない。西山氏に聞いたらすでに300~400冊集まっているそうだ。
この日、本棚には児童向けのほか村上春樹、池澤夏樹、司馬遼太郎、塩野七生、大岡昇平などの小説も並べられていた。
湘南ユーミーグループのユーミーネットが管理する約12,000戸の賃貸住宅戸数は神奈川県トップで、全国でも30位にランクされているという。稼働率は平均95%に達するという。