ポラスグループの中央住宅は2月25・26日、越谷市の「日光街道越ヶ谷宿 春の宿場まつり」に合わせ、同社が所有している築120年の旧日光街道に面した「旧大野家住宅」でイベント「はかり屋クリエイターズ ヴィレッジ」を開催。版画、木工、家具、漆器、和菓子、カフェなど13のブースにものづくりクリエイターが集結、街ゆく人を楽しませた。
施設は今年の秋から冬にかけて多目的複合施設として利活用することになっている。
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同社からイベント案内が届いたとき、かちりと知恵の輪が解けたような気がした。同社は別掲の「蔵のある街づくりプロジェクト~ことのは 越ケ谷~」を数年がかりで完成させた。
用地を取得したのは平成25年だった。わざわざメディアを呼びプロジェクト説明会を開いた。蔵や古民家などの歴史的建造物を残したいという熱意がひしひしと伝わってきた。その後、紆余曲折があり4戸の分譲住宅を引き渡すまでに3年かけている。記者はこの間、5度くらい現地取材を行っている。
わずか4戸の分譲住宅を売るだけなら同社は数カ月もかからない。メディアを呼びもしない。
なぜ、これほどまでに時間とお金をつぎ込み、メディア向けに情報を発信するのか。その理由がはっきりした。越谷市の意向に呼応するためだ。
市は平成25年、越谷駅東口の約78haを対象とした「越谷市中心市街地活性化基本計画」を策定した。計画の中には蔵や古民家などの利活用も盛り込まれている。平成32年までに商業活性化、福祉施設の整備、街なか居住促進事業などを進めていく。
そして今年2月13日、高橋努市長と品川典久社長も出席して市と同社は「まちづくりについての連携・協力に関する基本協定」を結んだ。蔵、古民家などを活用した地域の賑わい創出や地域の街づくり・景観向上などに関して定期的に協議し、地域活性化に取り組むという内容だ。
今後、中心市街地活性化法に基づき具体的な施策が打ち出されるはずだ。地区計画などで私権を制限する一方で固定資産税、都市計画税の減免措置も講じ、あらゆる補助金・助成金制度を駆使すればどこにも負けない街になるのではないか。
同社はこの事業にどこまで貢献できるか。主力事業の戸建て商品企画は大手に負けない。足りないのは再開発など複合的な街づくり事業だ。しっかり腰を据えて取り組んでほしい。
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息子さん、娘さんと5人の孫とで訪れた草加市に住む女性(53)は、「初めて建物を見たが、街ぐるみ賑わっているのがいい」と満足そうだった。「旧大野家住宅」は材木商だったそうで、黒檀、花梨など銘木や一枚板の廊下、微細な組子細工などが用いられているのが目を引いた。
対面には同じように古い商店「会田金物店」があった。店頭に誰が買うのか昔懐かしい1,380円のブリキの湯たんぽが無造作に掲げられていたので、ご主人に声を掛けた。
ご主人は「家は江戸時代に建てたものそのまま。わたしは昭和15年生まれ。戦争? もちろん、東京方面が真っ赤になったのをよく覚えている。ジュラルミンのB29がきらきら光り、わが日本の高射砲は全然届かない。アメリカがまいたビラ(降伏を進める内容か)も残っているかも。跡継ぎ? どうなるか」と話した。店の中には年代物の手斧の柄や昔の秤など〝お宝〟が埋もれていた。
明治32年の大火のあとに建てられたという「木下半助商店」も訪ねた。「空襲? 当時は仙台に住んでいましたが、よく覚えていますよ」と、昭和5年生まれの経営者の女性は語った。店のスタッフは「登録有形文化財に指定されましたが、補助金などはなし。税制で少し優遇されているだけ」と不満そうだった。
旧日光街道には15もの蔵・古民家が現存している。
「木下半助商店」(間口はそれほどでもないが、表の店から土蔵、石蔵、釘蔵、奥蔵、母屋、お稲荷さんがあり、奥行きは60mくらいあった)
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